異能部の日常その13
学生業において、突発的なイベントと言うと多数有って難しい、例えば校庭に野良犬、体育の授業中に襲来する蜂、朝礼で倒れる生徒等々、それらの中でも比較的大きいと言えるのは転校生の存在だろう。
何処から来たのか、何処のクラスか、男か女か、その噂が出ると誰ともなく噂が回り一両日中には来るらしいと言う事が次の日にはクラスが、そして場合によっては性別等が口伝に手紙にSNSで情報が共有されていく。
そうしてやって来たのは氷の様なとしか表現ができそうにない人物だった。冷たい目をしている、冷たい面持ちで冷たい声、髪の色から爪先まで、徹頭徹尾冷たい氷の様なとしか形容できない、それも物理的に、教室の中を氷の彫刻が動いていた。
「いや、失礼、ジョークが過ぎた、コレは僕の異能で作った氷像でね、夏場は重宝するがそろそろ秋も近いし寒々しいだけだな」
少し遅れてドッキリ大成功みたいな顔で現れたのは人好きのしそうなイケメンで通る男、流石にトップアイドルクラスではないが地方の美男子コンテストなら入賞できそうな美貌は持っている、残念ながら板田というトップには届かなくともモデルで通用しそうな美貌を持つイケメンを見慣れているためやや霞みはするが十分に学校のアイドルと呼んで問題はないだろう。
「ジミー、リリーちゃんが来たですよー」
「あぁ、いらっしゃいリリー、コーヒーで良い?」
「おー、よく来たな舶来、相変わらず喜怒哀楽の間二文字が無いようで何より」
「オーガも元気そうで何よりです、フーカはどーしましたか?」
「アイツなら補習中だ、アホだからな」
「おー、ツイてないですね、テストなんてテキトーにやれば50点は取れますのに」
「テストは真剣にやろうぜ、先生きっと泣いてるぞ」
「泣かしたい奴には泣かしとけが家訓ですね」
「何、その苛烈な家訓、私知らなかった」
「まぁ嘘ですけどねー、しかし居ませんねー、転入生ここに居ると思ったんですが」
「ん? あぁ、氷使いだっけか、今のところは来てねぇな、夏場は便利だろうしアイスコーヒーとか作り放題なんだろうが、まぁ来る者拒まずがここの流儀だからな、来たら来たでまたパターン入りそうだが」
「失礼します、異能部と言うのは此処で合ってますね」
「来ちゃったよ転入生、そしてこれはパターン入ったかね? どう思うよ」
「七割ってところじゃない? まだギリギリ興味本位が残ってるわ」
「Ohなんの事か解りませんが楽しー事なら大歓げーです」
「ようこそfreezer、ここにはニンジンはねぇぞ」
「いや、そんな愉快な名前はしてないよ、僕の名前は新田勝だ」
「そうかいfreezer、で? 何のようだ先に行っておくがそこの美人は俺の彼女だしそこのパツキンに手を出すなら容赦なくロリコン認定してやるよ」
「だから新田勝だって、それに女目当てじゃないし」
「おーっと、後輩が居なくて良かったな、その発言はガチホモ認定待ったなしだ、俺の尻が危うくなるぜ」
「よく解らないけど、マトモに返答する気は無いらしいね、少し君に用が有る」
「はいパターンいただきましたー、バトル編入ります」
「君に恨みは無いが悪いけど我が組織のために死んでくれ」
「Oh、しょーねん漫画のワンシーン」
これは何度目になるのか、彼らが中学の頃よりその名を冠してから片手では足りぬ異能者の転校生、そしてよく解らない組織とやら、要するに、道場破りがやってきた。