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異能部  作者: KAINE
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バイトの日常

 「あい、もしもし男鹿です」

 休みの日を寝て過ごすという高校生としてそれは良いのかと問いたくなる休暇だが、受験を控えていないから勉強の追い込みは必要ないし遊びに誘うにしても友人は皆進学を希望している、残念ながら一人で遊びに行く気にもならず、ならば寝て過ごしたいと昼を過ぎても惰眠を貪る中で電話のコールで叩き起こされる。

 「もしもし男鹿さん、島崎です、また仕事をお願いしたくて連絡させてもらいました」

 「ん、あぁ島崎さん、ちょっと待って、寝てたから頭回ってない、30分くらいしたらかけ直すけど良いですか?」

 「ええ、お休みのところ申し訳ない、お電話お待ちしてます」


 顔を洗い、昼飯として用意されていた昨日の夕飯の残りを温めて腹を満たしコーヒーとメモ帳を用意してからかけ直す。

 「もしもし男鹿です、先程は失礼しました、仕事ですね? 急ぎですか?」

 「そうですね、今月中には、お願いしたい、具体的な内容は大型のコンテナを二つ打ち上げ、ゴミ等を入れたコンテナの受け取り、使用を終えた衛星の回収、以上の三点ですね」

 「打ち上げは何時も通りとして受け取りのサイズは? 後衛星のサイズもお願いします」

 「受け取りは中型のコンテナ一つ分、衛星は小型の物、生体は無し、拘束時間は最低でも半日程度を予定してます」

 「なら打ち上げが300受け取りが200回収が500で1000、何時も通り前金で半分後金で半分、場所は何時もの場所で良いですか?」

 「ええ、何時も通りで」

 「では来週の土曜日、朝8時に」




 航空宇宙機構の研究開発所は何度来たのか解らないくらいのお得意様だ、前日に学業を終えると同時に前入りしてホテルで一泊、半日作業だと自宅からの移動だといろいろと面倒になる、飛べば早いが周囲の目を考えると限界もある、毎度毎度飛行機を繰り出す訳にも行かず電車移動を駆使して準備する。

 「おはようございます」

 「おはようございます」

 「とりあえず何時も通り契約書と前金の振り込み済ましましょうか」

 「えぇ、用意はできていますよ、此方へ」


 案内されたテーブルで機密だのなんだのと細かい如何にもお役所と思えるような書面に目を通し、そこに署名捺印、それも一枚や二枚ではない量を念のため精査してから行うためコレだけで1時間も使う、しかもそれらには機構側の責任者やら部長課長やらと数人の捺印がある、特に関係ないだろう人物でもソレを必要とするのは無駄の極みとも思えるがソレが社会と言うものなのだろう、特に係長だけで三人の認可が必要になるのは、一体なんの意味が有るのか不明だ。

 ダブルチェックにしてもそのための人員が居るのだし省けば良いが前例遵守、この書類の完成にどれだけ時間が掛かるのか想像するだけでゾッとしそうになるだろう。

カチャカチャとパソコンを弄り、ネットを利用して口座から口座へと振り込みを済ましそれを確認してようやく仕事だ、朝に入室して2時間も必要とするのはどうかとも思えるが仕事は仕事だ、そして仕事が仕事だ、機密やら何やらが複雑に絡み合い残念ながら省けない。


 目の前に有るのをなんと例えようか、物凄く乱暴に言うとガスを溜め置くためのバルクが近い、綺麗な筒状ではなくゴテゴテと色々な物が着いていたり飛び出ているが概ね筒に半円の蓋という形状だ。

 中に人が住めそうなそれが二つも鎮座していて中には資材機材に食料水と様々、それを動かすのが今回の依頼であり仕事となる。

タブレットに表示された目標を確認してユルリと二つの筒、コンテナが浮かび上がる、そのままドンドンと浮上していき成層圏を抜けて抜けて地上より約400キロ先、おおよそ東京と大阪間程度、新幹線なら3時間も有れば到着できる程度の距離、ただそれが東西ではなく上下というだけで本当に大変な仕事になる、実際には真上に飛ばしている訳ではないがだからと言って簡単なんて事は本来ならば無い。

本当なら大量の燃料を使い、資材を投じ、それでも数回に分けなければ運べない量が多少の資材だけでどうにかなるのだ、回収も容易く何より打ち上げの費用がバカみたいに安い、本人曰くソレなりの愛国心からコンテナ一つ300万円という格安で宇宙まで、それも爆発の危険性が皆無なのだ、H2Aロケット一発打ち上げるのに必要な費用の約4000分の1、それも今回の量だと五回は成功させる必要がある、格安も格安、その分が他に回せる。


 タブレット越しに目標の位置を確認しつつ然り気無く張った障壁の位置から計算して少しずつ目標に近付ける、ある程度近付けば向こうからアームで受け取り接続して終わるが何せ宇宙空間だ、コレがかなり長い、幸いにして接続事態は複数箇所で行えるため一つ繋げて搬入を待ってという事は無いがソレでも時間は掛かる。

 タブレットの映像にコンテナが映り込み、ゆっくりと近付けてようやく一つ目の受け取りが完了すると今度は別のカメラに切り替えてそちら側でも受け取りを完了させる必要がある、


 日本独自の宇宙ステーション、彼の異能が政府が知る所になってから秘密裏に進めて建造中のソレはそろそろ国際宇宙ステーションと同等程度の広さを確保しつつ、その中を完全に一国のみが自由にできる、残念ながら国内だと有人船の打ち上げが現実的ではないため人員の行き来こそ諸外国便りにはなるがそれでも今までより手広い実験や観測が行える。

 国際宇宙ステーションでも役割を果たすため人員を割いてはいるが今の主力はこの宇宙ステーション、名をヤタガラス、少しずつ建造してある程度形になってから世界的に発表、若干の批難は受けるがソレ以上の利点も多い、何より建造費用は本来の何万分の1。デメリットらしいデメリットは他国に撃ち落とされるとか、侵攻を受けて占拠されるくらいだが国際的な批難を受けてまで、確実に戦争に発展するだろう愚行は愚考な愚者でも命じないだろう、仮に実行に移せば秘密裏に建造した日本以上のバッシングを受けるし少なくとも日本と戦争になる、そしてソレを大義名分と仲が悪い国は間違いなく正義の名の元に武器を取る、そうまでして宇宙ステーションを奪ったとして、あるいは破壊したとして、後者はどうしようもないが前者ならば億万程度の資金を渡せばどうにかするのが居る。

少なくとも実行命令を下した奴はマトモな思考ではないだろう、あるいは祖国を灰塵に帰したいと心の底から願っているかだ。

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