お土産依頼
「さて、明日の午後には帰国ですがその前にこちらを」
そう言いつつルーズリーフを手渡す
「えーっと、これは何かな?」
見事なまでの筆記体は簡単な英語しか話せない人間からするともはや暗号の方がまだ理解できる代物だろう、それがズラリと並ぶと見るだけで頭が痛くなるようで呪いの札か何かに思えてしまう。
「親父から頼まれた買い物メモですね、この辺りのシガーショップに、まぁ俺も通訳のフリして入るんで知り合いに頼まれたって顔で居てくれれば、後はお金は此方に、まぁソレ全部は無いと思いますけどね、ヴィンテージとかも数本混じってるんで」
「そうなのかい?」
「らしいです、まぁメインはパイプ用の刻みタバコだとか、因みに持ち込めるギリギリの量に絞ったとかなんとか、まぁ荷物にしても多くはないので他のお土産とか買っても余裕でしょう、そもそも追徴課税は有っても重量オーバーで別料金とかは無いですし」
「あぁ、そう言えばそうだったね、サイズとか関係なく持ち込めるのはありがたい、職場用にホームセンターでバカみたいな大きさのドリル買っちゃったし」
「バカみたいなって日本でも買えるような」
「いや安くてねぇ、同じ型のが日本だと倍はする、しかも替えのドリルとドライバーへの換装込みだ、試したらパワーも問題ないしバッテリーとかも問題ない、そりゃ買うよ」
「その辺りはちょっと専門外ですが、まぁ工業用品とか気になるのは解らなくも無いかなと、俺も最近アークとかガス溶接の機械入れようかなとか板金の資格取ろうかなとか、いっそしばらくバイク工場で働いてスキル磨こうかとか考えちゃいますし」
「生身でも飛べる貴方がバイクに乗っている理由がいまいち理解できないのですが、会長もそうですが面白いのですか?」
「そりゃあ面白いさ、書記ちゃんだって何もしないでも筋肉ムキムキ体質だけど鍛えんの楽しいでしょ? 結果だけ追い求めるんじゃロマンがない、ゲームで言えば防具なしノーダメ縛りでクリアとかマゾプレイだけど熱くなれるのと同じだよ」
「なるほど、ロマンか、良いねー若いって、それを追い求めるのは良い事だ、それを忘れちゃボディビルなんてやってられない」
「それに、生身でも飛べるが面倒なんだよな、障壁で気温やら気圧やら調整してってのがマジで、重さで消費カロリー変わらないし調整のリソースを他に回せるからもしもの時の対応が楽だ、ほら来る時に飛行機事故への対応とかしてただろ? 別に障壁でどうこうはならんが生身より負担は確実に減る、アレにしたって飛行速度に合わせてサイコキネシスで機体掴んで、その上で内部の人間保護して、エンジンをオフにしてもらいつつ減速、ダブルトリプルタスクだし、脳ミソのリソース無いとエナドリキメないとどうにもならん」
「エナドリでどうにかはなるんですね」
「まぁ異能なんてのは脳ミソで扱うからな、カフェインと糖分でブーストすると処理速度は上がる、興奮し過ぎると暴発するから痛し痒しだがな」
「暴発するとどうなるんだい?」
「地球くらいなら肉まんみたいにパックリ割れます、最悪だと宇宙の法則が乱れるでしょうね」