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異能部  作者: KAINE
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チョコの日常

2月の14日はどういう日かと言う問いかけに対して、返答は人によって変わるだろう。

 『2月の第二週』『何でもない平日又は土日』『菓子メーカーのダイレクトマーケティングによる結果』『チョコレートを渡す日』『偽告白の横行する日』『罰ゲームが横行する日』『チョコレート何ソレ美味しいの?』『バレンタイン? ソレって都市伝説だろ』『バレンタインデー』『リア充爆発しろ』賛否と嫉妬とソワソワと、男にも女にも老いも若きも日本という国に取っては浮き足立つ者の多くなる日である。

深井沈華からすると義理で安いチョコレートを配る日で中学時代はコッソリと友人に業務用の個包装されたチョコレートを買ってきて配り、残りは弟や両親とお茶請けにと言うのが例年で、高校に入ったからと言っても大差はない、せいぜいがこの約1年で主に勉学面で世話になった部長に少しだけ他より上等な物を渡すという程度だ。母親から少なくとも普段配る一袋に軽く二百は詰まって1500円程度、一つ辺りの単価は約8円、一人に三つくらい渡すため一人辺り30円程度では足りない、10倍程度の物は渡せとのお達しも受けている、何せ自慢では無いが基本的に赤点も赤点、合格ラインにトリプルスコアで足りないのが当たり前の彼女が赤点は赤点でも合格点まで10点とか20点圏内まで成績を上げる程に教えるのが上手く懇切丁寧なのだ、それもほぼ全教科で極めて低い結果だったのを倍以上の得点に結び付けている、元が本当に小さい点数とは言え中学時代から考えれば驚天動地晴天の霹靂、親からするとこのペースならば夢の補習再テスト無しなんて成績も望めるくらいに伸ばしてくれた大恩人だ、子供のお小遣いとしては割高でもその実は安いチョコレート等では感謝が伝えられない。


 普段の ならばこういう日は有頂天だ、雨も降っていないし爆弾低気圧が上空に鎮座している訳でもない、西高東低の典型的な冬型配置、低気圧に弱いとは言ってもある程度で慣れるらしいし数値にも左右されるらしいと約1年で知って、今日ならば問題なく何時もの様な飄々として軽薄な雰囲気だろう、そして今日という日ならばきっと輪を掛けてだ、だと言うのに、想像する半分どころか急な雨でも見ないくらいにテンションが低い。

 「先輩はいこれ、チョコレートです、お返しは普通で良いですよ」

とりあえず近所のケーキ屋で買った数個入り500円プラス税というお高めの生チョコを包装してもらった物を差し出すがやはりテンションは低い、予想していたのは飛び上がらんばかりに、と言うかマジで飛び上がって喜ぶ筈なのに『あー』とか『うー』とか唸り声を上げて受け取り椅子に体を預けてダレている。


 「えーっともしかしてバレンタインデーなのに義理チョコ余り貰えなかったとか、甘いのダメとかそういう感じですか?」

 「んー、いや甘いのは好きだよ、チョコとかバーボンに合わせると最高だし、それに俺ってほら、見てくれはかなり良いからなソレなりに戦果は有る、勿論お返しが憂鬱とかもないな、バイトで稼いでるし」

 「じゃあ何がそんなに嫌なんですか?」

 「本命が怖いんだよ、知ってる? 俺の彼女ってチョコに陰毛とか血とか爪とか媚薬とかそんな可愛いげの有るの入れてくれないんだぜ」

 「最初は河豚の卵巣、次は肝、その次はキノコに去年は青酸カリだったか、俺の異能が残機制の不死なら間違いなく一番削ってるのは菜慈美だよ、しかも拒否しようにも気付いたら口の中にチョコ入ってるし」

 「部長、なんでそんなに殺伐としてるんだとか、なんで付き合ってるのとか、いろいろと言いたいんですけど言葉が見付かりません」


 「その質問には私が答えるしかないわね、殺伐としてるのはソレが一応は私の彼氏で浮気公認とは言え気が多いからって事にしてる、付き合ってるのはね、毒とか爆弾とか研究にはお金が入るからよ、って事でついさっき精製してきた特製チョコ召し上がれ」

 何処から聞いていたのか少なくとも最後の質問の時には扉の前に居たらしい音矢がガラリと引き戸を開けて答えつつそのまま包装すらされていないチョコレートを差し出す、と言うかチョコレートを精製というのはかなりオカシイ。付け加えて が飲酒をしているのは公然の秘密に近く教師の前でこそ公言はしていないが友人間ではそこそこ有名だ、故に親しい後輩と彼女は気にも止めない。

 「来ちゃったよ、今年もとうとう来ちゃったよ、で今年は何? トリカブト? フグ? せめて味はマトモで頼むぜ」

そう言いつつ毒物を躊躇いもなく食べる、彼の言うように残機制ならば最悪人生からゲームオーバーだというのに逡巡すらない、結果は劇的で手早く死んで手早く復活、今年はシアン化ナトリウムだったらしい。

時事ネタ、クリスマスを取り逃したなと、しかもまだクリスマスネタが浮かばないという、と言うか普通のネタも減ってきているという。

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