裁判その2
「えー、当初の説明、及び現場検証、検察の詰問に対して死亡と答えていますが事実ですか?」
「はい、事実です、と言うか下顎から上を吹き飛ばされて生きてるのはあり得ないかと、鶏で一羽居ましたし左右の半分吹き飛ばされて生きてた人間も居ますが脳ミソ全部粉微塵で生きてるって生物止めてるかと」
「証人は聞かれた事にだけ答えるように、続いて部屋の傷に関しての証言を今一度お願いします」
「えー、私の異能の一つに障壁、バリアーを張る能力がありまして、今回の様なケースを何度も経験した結果対策として部屋や物品にちょっとやそっとじゃ破れない障壁を張っています」
「検察からの質問は以上です」
「えーまず一点、下顎から上を吹き飛ばされたというのに部屋に血痕等が無いのはオカシイですよね、それについてどう思うかお答えください」
「非常に答えるのが難しいので順序立てて、まず私の異能の一つである便宜的に肉体再生とされている物は皆さんの想像するソレでは無いです、私の場合怪我だとか火傷、病気の治癒には一切発動しません、死んだ場合のみオートで異能が発動するアクティブではなく条件起動のパッシブとなります、その上で肉体を単に治すのではなく直近の最善の状態に周囲、これは服装や部屋や地面ですが、それら含めて元に戻す、時間の巻き戻しをイメージしてもらえれば80点くらいは取れます、ですので血やらは復活した瞬間に消えます」
「なるほど、では次に質問ですが、貴方は警察の聴取において復活後に被告人ともう一人を異能で拘束したと答えています、間違いありませんか?」
「はい、間違いありません」
「ではお聞きします、その際、貴方が本気で異能を行使した場合、被告人を殺めていたのではありませんか? だというのに能力を使った」
「裁判長、これは本件には関係のない質問です」
「検察の意義を認めます、弁護人は質問を変えてください」
「あー、少し宜しいですか? 一点気になるんですが」
「証人は不用意な発言を慎むように、ですが一点気になるとは?」
「少なくとも弁護士さん、もしかしたら検察官も裁判官裁判長も異能に対する誤認が有るみたいでして、その辺りを明らかにしないとたぶんフェアじゃない」
裁判長が検察と弁護士に目線を向けて反応を待つが双方共に異論は無いらしい、少なくとも弁護士は先程の返答が得られるのだから否応なしにだろう。
「気になったのは本気にという点、どうにも勘違いされる事が多いんですが異能に本気も何もない、例えば1kgと10kg、筋肉で持ち上げるなら後者の方が力を入れる必要が有るでしょう、肉体的に未成熟な子供とかならそれこそ火事場の馬鹿力でもないと引き摺る事すら難しい」
「ですが、異能の場合はどちらも同じです、念動力で動かすならば1も10も100もそれを動かすのに必要な労力は全く変わらない、言わばその気にさえなれば動かせる訳です、ただし本人の力の限界は有ります、例えば5×5×5メートルの物を時速60キロで重量50kgまで、自身から10メートル圏内であれば動かせるサイコキノであれば今挙げた全てを越える事は不可能です、例え顔が真っ赤になるくらい、脳の血管が破けるくらいに意識を集中させようとも50kgから1gでも重いならビクともしない、その上で人を殺すのに必要な力は対して大きくない、それこそ幼稚園児程度の握力でも脳ミソかき混ぜたら人は容易く死ぬし小学生の握力が有れば動脈を塞げる、単純にナイフで刺し殺しても良いでしょう」
「ですので本気であれば殺せたかという質問には本気にならずとも殺せましたとお答えします」
「その上で良く聞かれる事して何故習熟訓練を行うのかですが、これは単純に精度を上げるためですね、先程の例の異能者が0か100しか切り替えられないなら豆腐を運ぶのに50kgの物を時速60キロで飛ばす事になる、そうなれば当然の様に豆腐はグチャグチャ、だから出力に関してより細やかに動かせるようになるために訓練を行うわけです」