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異能部  作者: KAINE
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異能部の日常その9

 「お前に折り入って頼みたい事がある」

 誰が呼んだか『不幸の権化』『貧乏神と死神を連れ歩く者』『学年三位の俊足』そんな不本意でしかないアダ名しかないのが竹田良太郎という男だ。

高校球児らしく刈り込まれた頭に略と張り合える浅黒い肌、それなりの長身、まさしくスポーツマン、まさしく球児を絵に描いたが如くだ、まぁ現状、既に腐ってるのがスケッチブックを用意してスタンバっているから絵に描かれるのは確定だろうが。


 「藪から棒にどうしたよ、後そこの、静まりたまえ、さぞかしと言われたくなければスケッチブックをしまいなさい、でないと怒った俺はちょっと怖いぞ」

 「何を言っているのかよく解らんが、とにかくだ、少しこれを見てくれ」

そう言いつつカメラを手渡す。

 「んー、なんだ、投球練習か? うちのジャージでもユニフォームでもねぇな、しかしとんでもない変化球、これはスライダー? いやスラーブっぽいがこれがどうしたよ」

 「板田から聞いたがお前は物理エンジンがどうたらなんだろ、ならこれの再現ってどうにかならないか?」

 「また無茶を言うな、俺の掌握範囲って20mくらいが限度なんだが反響測位とか使って50mくらいか、映像だけだとかなり厳しいぞ、湿度気温風向き風速、それに一方向からの映像だけだと無理がある」

 「それは大丈夫だ、これ以外にもう二ヶ所から偵察はしてるし湿度はともかく気温は調べりゃ解るし風速と風向きはメモが有る、奴の魔球攻略は甲子園への切符を取るも同じだからな、手段は選ばん」

 「まぁ試合ならともかく練習なら俺が手伝っても良いんだろうが、少し時間貰うぞ、検証に実験して調整、球速と回転数、軸に角度、その辺りほぼ完璧に合わせるとなると1日じゃ無理だ、メモと映像貰ってボール借りるとして明後日の放課後まで待ってくれ」



 「よう、とりあえず形にはなったが、アレ、高速スラーブだな、スライダーより落ちるが縦スラよりは緩やか、カーブよりは鋭いし、しかも地味にチェンジアップとストレートの組み合わせが悪魔的だしその辺りのセット込みで練習台になれるから用意してくれ」

 「おぉ来てくれたか、早速準備する、とりあえずジャンジャン投げてくれ」


 球を中に浮かせセットアップのフリをしてスリークォーター気味に投げる動作をすると同時に回転をかけて球を射出、言ってしまえばピッチングマシンを個人の動きをトレースするようにした物だろう、もちろん完全ではないし件の選手はオーバースローのためフォームが違う、しかし球速とノビやキレ、軌道は近しいのだから練習にはなる。

 後は二軍選手が後ろを守り、捕手がサインでコースと球種を指示して、勝負を組み立てればおおよそ実物を相手にするのと同義だ。

 山と積まれる凡打と三振、だが少しずつタイミングは有ってくるし見極めもできてくる、三順までにヒットは二本でも六順で七本、十回も打席に立てば掠りもしなかったのが当たりはするし前に飛ぶようにもなる、しかも本人と違い緩急自在内外自在、彼のバッテリー以上に厳しい攻めで投球可能なのだから練習としてはこの上ない、なにせ投げるフリはするが緩やかにだ多少は疲れるだろうがフリだけなら200や300は軽いだろう、それも飽きたのか腕だけ軽く動かしたり手首だけだったりとテキトー極まる、それでも球威もコントロールも乱れないのだからこれ以上なく練習には持って来いだろう。


 おおよそ数時間、流石にフリだけでも疲れるらしく椅子に座りながらとかで腕を振り続けてかなり厳しめや想定より速度や変化量を増やしてもとりあえず着いて行けるくらいまで慣れた所でお開きだ、流石にもう数日は練習が必要だろうが県内随一の投手を打ち崩す用意は整った、他にも強い選手は居るが投手となると抜きん出たのは県内には一人しか居ない、後はそこそこ強いレベルでドラフト高位間違いなしの化物に比べれば十把一絡げ、少なくとも投手戦では県内に敵は居ないレベルだ。

 野球が一人でやるスポーツでは無いにしても化物じみた球威や変化球を持ち、受ける事ができて少しは試合を組み立てる頭を持った捕手が居るならそれだけで十分に強い、極論27連続三振決めて一点取れれば勝つスポーツなのだ、多少ザル守備でも打てるなら勝てる。

まぁ何事も行きすぎると無理が出るからそんな怪物みたいなバッテリーを主軸に守備を固めて一点を守るチーム作りになるのだろうが。

とにかくだ、このまま行けば組み合わせにもよるが目下のライバルと当たっても竹田の俊足を生かしワンヒット盗塁犠打犠飛で先制点、それを守る野球で勝ちきれる算段が着く、何しろバットに当たらないと前に飛ばないし前に進めない、かつて練習試合で三振凡打の山で完封負けという屈辱から抜け出すにはこの上ない自分達のペースに乗せて勝つしかないのだ。

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