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異能部  作者: KAINE
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異能部の日常その22

 西岸高校三年棟とは通称なのだがそう呼ばれて長いためもはや公称となりつつある北の一角、用具室と掛かれたプレートの下に掲げられた『異能部、どなた様もご自由にお越しください』という場違いと言うか今のご時世だと批判こそされなくともどなた様もご自由にはならないだろう事を書いている、物凄くふざけているようにしか思えないが少なくとも活動事態はしているらしくとりあえず扉をノックする。

 「どうぞ」

 「ようこそ異能部へ名も知らぬ後輩ちゃん、今日はどんな用だ?」

 制服のタイの色からか上級生同級生で見覚えが無いからか、もしくはまだあどけなさが残る顔立ちからか判断して椅子の背もたれを抱え込む様に座っていてむんずと鷲掴みしたカップから紅茶を啜っている色黒と呼ぶには些か以上に黒い肌を持つスキンヘッドの男。

 対するはミドルカットの黒髪を軽くカールさせた女子生徒、正確に言うならばもう一人、文庫本に集中して来客に気付いていないか気付いていて無視しているか不明なショートボブの少女、部屋の中事態は端に椅子や机が積まれていて大きく作られたスペースに机を幾つか寄せ会わせて大きなテーブルにした物と来客用だろう椅子が何脚か、それ以外は普通の教室と変わらない、普通のフローリングの床に棒状のライト、大きな窓にクリーム色のカーテン、黒板に棚と多種多様な茶器を除くならば教室と変わらない。


 「えっと、ここは何をする場所なんですかね?」

 「さて、基本は茶を飲んでるだけだ、異能を持つ者と持たぬ者の間を埋める相談室みたいな物として儲けたがサロン代わりに使うもまた良しだな、紅茶なら一揃え有るしコーヒーもインスタントだが有る、緑茶はすぐそこの生徒会室に有るし近々烏龍茶と一緒に用意する予定だ、ほうじ茶は職員室に有った筈、抹茶は茶道部が復活する事を願うかお前さんが発起人になるかだな」

 「んで俺が便宜上は部長の男鹿松平兼守長倉源温羅神馬手方平之真典影康男Jr.、名前がクソ長いから男鹿とか呼んでくれて構わない、便宜上って点は部員数的に部活動としても同好会としても認められないからだな、ここも勝手に占拠してるって事になってる、実態はなあなあの見て見ぬフリだがな、便宜上の副部長がそこで本呼んでるの、名前は音矢菜滋美、マジキチとか呼んでやるといい」

 その返答よりも速く目の前の男の腹が弾け飛べば一般的な感性の持ち主ならば状況が把握できずに固まるだろうし少女もまた何が起こったのか理解できずに固まる、ただ吹き飛んだ腹部から肋骨だとかグチャグチャになって原形を留めていない臓物や肉、大量に飛び散る血液と臭気が、顔や服に飛んできた生暖かい人だった物が現実であるとだけ教えてくれる、途端に込み上げてくる吐き気を抑えるのは相当にスプラッタな映画を見慣れている者でも難しく訓練を積んで実戦を何度も潜り抜けた軍人でさえどうにかなると言った所か、どちらにしてもPTSDを患っても誰も攻める事ができないどころか当然と太鼓判を押すだろう光景はほんの五秒という短いとも長いとも言える時間の後に跡形もなく、何事も無かったかのように、白昼夢か幻の様に消え去ってつい数秒前と変わらぬ光景へと変わる。


 「なんだ聞いてたのか、なら自分で挨拶くらいはしようぜ、後気に触ったくらいで腹の中に爆弾転移させるの止めてくれ、そんなだからマジキチ判定食らうんだよ」

 「会話に割り込むのも悪いかと思ってたら貴方が勝手に紹介始めたのよ、それに人の事をそんな風に言って爆発しないなんて道理は無いと思うけど?」

 「そもそも人を爆発させて良い道理が無いんだよ、見ろ、後輩ちゃんが真っ青だ、気絶しなかったのと昼飯マーライオンしなかったのが奇跡だぜ」

 「驚かせたな、俺は死んでも五秒で元通りって愉快な異能も持っている、他は念動と障壁と予知、だから排水溝に大事な物落としたとかなら問題なく拾えるし体育館でバレーボールとか取れない位置に挟まったとかでも対応できる」

 「私はテレポートとアポート、サイズも距離も限られるからなんでもって訳にはいかないけれどもコイツと同じで手が届かない場所とかの物を取るなら相談に乗れるわね」

 「えーと、私は深井沈華と言います」

 「深井後輩ね、案外太い神経してるな、普通なら悲鳴上げながら逃げ帰ってるぜ」

 「その、流石に人間が死ぬところを見たのは始めてですけど、私ネクロマンサーなんで動物とかの死体は何度か、朽ちていく過程を見たりしてたので少しは耐性有るんです」

 「となると入部希望か見学か冷やかしか、まぁどっちでも大歓迎だが、しかしネクロマンサーなぁ、俺も始めて見る、と言うか異能持ちの知り合いって菜滋美含めて二人だけだが、せいぜい異能登録の時に同じ場所に居たのが何人か居るが知ってるとは言えないしな」

 「まぁ何れにしてもだ、基本的に緩い感じでやってるから杓子定規にお願いだとか所属とか考えなくて良い、入り浸るなら勝手に部員認定するし相談事なら話を聞こう、ついでに乳でも揉ませてくれるなら暗殺までは引き受けるぜ」

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