誰かの日常その2
色々と思う所は有る、声に一貫性が無いとか私を何時知ったかとか、だがおそらく、と言うか間違いなく勘違いの余地もなく精神操作の異能者で、その気になればチャイムを鳴らさずとも部屋に入るのは難しくはないし無理矢理にでも話を聞かせるのも可能かもしれない、誠意を持って礼儀正しく私に判断を委ねている、もしかしたらこの思考も操作されている可能性は捨てきれないがそんなのは精神操作系の異能者相手にすると常に付きまとうし考えるだけ無駄だろう。
扉を開いたが実際に目の前にしても全く一貫性がない、体格でさえ背が高いようにも低いようにも感じるし太っても痩せても見える、延々と姿を変え続けるスライムでも観ているようだがおそらく人なのだろう、正直に言って自信は無いのだが。
「さて、君が予知を持っているのは知っているし、その内容や持っている事を知っている理由については今君が考えている通りだ、私は端的に言えば精神操作系異能者でトップに立つ存在で数年前にこの辺りに滞在していた頃に君の事は知った、まぁその頃はまだ互いに世界の崩壊なんて知らなかったがね」
「あれから数年、まぁ色々と在ってふと君の事を思い出したのが一昨日の事だ、もしかしたらアイツのせいで苦しんでいるかもしれない同類擬きをそのままにしておくのも可哀想だからわざわざ足を運んでみればだ、とりあえず理由を説明して、その上で判断は任せよう」
なんと言うか、物凄く自分勝手に話す人だ、主語を幾つも抜いていて核心を見せることなくただ話したい様に話している印象だ。
「あぁ、申し訳ない、アイツ曰く私はコミュニケーション能力がぶっ壊れているらしい、まぁそんなのはどうでもいい、さて一つ一つ説明させてもらうとするが先ずは世界の崩壊の理由から話そうか」
「理由は単純だ、さっきからアイツだのと呼んでる人物、名前が長いし名前を知ったとしてもどうなる物でもないから省くが世界最強の念動力を持つ異能者が居てね、そいつが世界と一緒に自分が壊れても良いと本気で考えてる全滅主義のイカれた野郎で明日読みたいコミックが在るから程度の理由で世界を壊さないクソガキだ、今は私がストッパーを付けているが君の記憶を見るに何度か危ない橋を渡っているらしい」
「その理由は後々検証するとして、次は同類云々だが君は予知系統の異能者で最も優れた力を持つ、自覚は無いようだが一年も先を見通せて二割も当たるとなると私が知る限りで間違いなく最高だ、物理最強がアイツで精神最高が私なら予知最優がキミというわけだ、影響力と私や彼の様に壊れた精神持ってないから同類擬きと呼ばせて貰うがトップに食い込む異能持ち、流石にそんな人を捨て置くのも申し訳ない、あくまでも可能性でしかなかったが予想通りに世界を崩壊を見ていたらしい、そして『もう大丈夫、安心してほしい』なんて言うつもりで居たが予断は許さないらしいな、私のストッパーを越えて世界を壊そうとするとはアイツは破壊神辺りの生まれ変わりだと言われても納得しそうだよ」
色々と言いたい事は多いがとりあえず纏めると世界崩壊の理由は何処かの異能者が世界と共に自殺しようなんて考えているからでそれを報せに来たのは私の予知能力が凄いからという事か、なんと言うか私が予知系最優かは横に置くとして破壊者という人物を自殺させるとかこの人ならできるのでは無いだろうか、人殺しが嫌とかそういう理由だとしても正直に言って傍迷惑にも程がある。
「残念ながらアイツは殺せないんだよ、アイツの異能の一つが死んで数秒後には直近の最も万全に近い状態での復活とかいう意味不明過ぎる異能を持つから殺しても殺しても直ぐに生き返る、困った事に寿命が有るかどうかすら解らないし天寿とやらが真っ当な人類と同じとしても70年先くらいまで待つ必要がある、最大限私も努力はするが君が最近まで崩壊を予知している以上はかなりしっかりとストッパーを作ったつもりだが足りないらしい、今後は崩壊の予知を見たら連絡をくれ、調整して様子を見ていくしかないが願わくば月に数回から半年に一度くらいまで安定するようにはしたいし理想を言うならば二度とそんな事を実行しようなんて考えないようにしたい」