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異能部  作者: KAINE
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西岸高校の日その1

 西岸高校は生徒の自主性を重んじる、結果として非常に校則関連が面倒な事になってしまっているがそれもまた特色として受け入れられて今では名物という程ではないが学生の期間にそういう事に触れる事ができる数少ない高校として全国的ではないが関東近縁、少なくとも県内には知れ渡っている。

 まず校則を新たに制定する場合、理事会及びPTAの過半数を得た上で生徒総会を行い三分の二の賛同が無ければ校則として明記されない、逆に条文の変更又は削除に関しては生徒側からのみ可能でこちらは非常にややこしい。

まず各部長又はクラス委員長ではない人物を代表として各学年最低五人、各学年2クラスかつ幽霊助っ人併用含めて別の部活動をする計30名の賛同者を集め、それを生徒会に提出、書類の不備及び上記の条件に一致するかの確認をした上で月に一度の全校集会で代表が校則の変更又は削除事由を5分以内のスピーチで訴える、後にホームルームで決を取り、クラス委員及び最初の賛同者30名に名を連ねていない生徒一名、教員の三人で生徒会に提出、生徒会は教員二名及び代表者と賛同者二名の前で開封して過半数が賛成しているならば理事会に提出してそこで三分の二の賛同を得る必要があるが、全校生徒賛成ならば理事会を介さずに校則が変更となる。面白いのは制定する場合理事会PTAが全員賛同をしても生徒総会は行う必要があり生徒側からは全員賛同なら必要がないという点だろう、そして生徒側からは制定はできないが同じく理事会側からは変更ができない、まぁ例外的に追加項目という形での制定や変更は可能だが基本的にはこの前提が守られる。


 その条文はそれほど気にはならないと言うか当初は問題にならない条文で、時が経つとそれが表面化してきていて、この数年で特に大きくなってきている。

 すなわち、食堂内で購入した物は食堂内でのみ消費すべしというただソレだけの条文だ。

創設当時はそれで良かった、出しているのもお握りと味噌汁とかウドンとかお茶とかくらい、しかしこの数年で近所の弁当屋と提携して日替わり弁当を朝に注文を取り規定数納品して貰ったり、同じく近所のパン屋から菓子パン、惣菜パン、サンドイッチを納品して貰ったりと品目が増えたし湯飲みでお茶をなんて時代ではない、自販機での購入が当たり前となる、そういった物でさえ持ち出し厳禁、見付かれば大きな処分は受けないが注意はされてしまうし続けば内申に響く、自主性を重んじるが故にその辺りの融通の利かなさもまたこの学校の特色だろう。

それを踏まえて例えばラーメンとかウドンとか持ち歩くのは溢すと危ないとかの理由として仕方がないと思えるが缶コーヒー一本、クッキー一枚ですら食堂で購入したら食堂で消費する必要があると言うのはなんとも馬鹿馬鹿しい、その上にある程度の席数は確保していても生徒全員が入りきる程ではないし弁当等を持参する生徒と食堂組の交流が取り辛いという面も強い、とは言えだ、それを誰かが言い出した事はない、誰もが問題だとは思っていても言い出しっぺの法則で面倒を抱えたくないという一点で大半が二の足を踏み、結果としてズルズルと10年以上。


 事が動いたのは秋もそろそろ終わりという頃で生徒会長、いや元生徒会長板田挑を旗頭にあっという間に賛同者をあつめてつい1ヶ月前に引き継ぎを終えて生徒会長に就任したばかりの後輩に自分の在学中最後の仕事だとでも言うように申請書類を提出したのだった。前任が夏休みを待たずに雲隠れするように異能排斥過激派からの突き上げに負けて退任してから孤軍奮闘とも思える戦いに身を投じた男だ、生徒からも教員からも信任は厚いし人気もある、一声で規定人数を集めるなんて訳はないしこれは出来レースだ、何せ教員や理事会でさえその条文は面倒だと思っている、生徒からの過半数も理事会での追認も確定した出来レース、或いは新たな生徒会長緒方耕平に功績作りと経験を積ませるためでも有るのだろう。何にしても、冬休みを待たずに条文が書き換えられる事だけは誰の目にも明らかだった。

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