自宅の日常その15
発酵に蒸留や乾燥、科学的な抽出に変異させての製造、ありとあらゆる手段を用いてソレを生み出す。
男鹿松平兼守菜慈美となった少女が用意された研究室では毎日さまざまな実験が行われて幾つもの瓶やビーカーシリンダー等々が液体や個体で満たされる、元々部屋に置いていた鉢植えや複数の触媒にサンプル、飼っている金魚とマウス、他にも火気厳禁な代物が多数に釘やガラス片等々、ちょっとそこらのお宅には絶対に無いと断言できる物が大量に揃っている。
おそらく知識を持つテロリストでも連れてきたなら数日で首都圏を大混乱にしてしまう程の何かを作り出すだろうと想像できるだけの機材や素材が揃っているがあくまでも個人的な趣味の賜物で別にテロを行うために建てた訳ではないし、そのために幾つもの毒や爆破物が貯蔵されている訳でもないが間違いなく警官がこの部屋を見たならば即日即時緊急逮捕は免れないだろう、何せ手作りとは言え複数の爆弾に数グラムで大人一人殺せる毒物が多数大量、どう贔屓目に見ても危険人物でしかないし資格等を持っていても致死性の爆弾作るようなのを放置できる筈もない。例えばこれが花火だとか鳥や鹿を追っ払うための爆竹を作っていると言うならば解らなくもない、まぁ防火設備等の危険物取り扱いの用件を満たしてはいないからどちらにしても逮捕だが、ともかくそういった物を作るならば理解も得られよう、だが作っているのはパイプ爆弾だとかで至近距離なら最低でも重症は免れない物ばかりだ、どう言い繕っても情状酌量の余地なしと言うのが世間の総意だろう。
虫や蛙、蛇に茸、魚や植物、自然界で生成される毒は強弱や効果に差は有っても多種多様で幾つものサンプルから抽出されたそれらを組み合わせたり純度を高めたりしつつ金魚やマウスで実験を行い、少しずつ目指す物を作り出す、何を目指すかは本人のみぞ知るだがロクなものでは無いことは確かで致死性が高いという事も確認するまでもなく事実だろう、何せヤバい細菌やウイルスまで作り出した事が有るのが彼女で という色々と規格外のが実験台だからこそ問題にはなっていないが過去にペストやらを蔓延させかけているし毒に関しても何百回と投与して結果として幾つかの毒を克服させてしまうくらいには何度も何度も濃度や量を種類やブレンドを代えて投与している。
最近では同体重の致死量の倍でも耐えられるようになった毒も有り血液型が合うならば日本に居る大抵の毒蛇の血清を輸血で与える事ができる程度には頑強になっている、なんなら一部の毒キノコや毒草、毒虫も可能で魚やクラゲにも強い、唯一アナフィラキシーの可能性が有るタイプの毒は流石に厳しいが幸いにしてスズメバチに千回刺されようとも生き返るため気にする事もないだろう。
延々と作業を続けていた手が止まり透明な液体で満たされたアンプルが幾つか完成している、慣れた手付きで中身を示すシールを張り冷蔵庫の中に容れる、ストックされているアンプルは軽く数百本近くそれぞれ一本有れば最低でも一人は殺せるとするなら小さな冷蔵庫だけでちょっとした中小企業なら皆殺しにできてしまうだろう。そしてそんな生易しい代物ではないのだ、一本有れば数人から数十は殺せるようなのが数百本、規模にも左右はされるが町一つだけならば潰せるレベルの量が此処に在る。