戦場の日常
そこを例えるならば戦場だろう、1日最低10万人以上、3日間で通算50万人は訪れるという戦士達の集う戦場、年に二度、夏と冬に行われるソレは曰くオタクの祭典、曰く人ゴミの極地、曰く汗と体温で雲ができる、曰く身動きが取れなくなる、曰く汗と脂とオタクの臭い立ち込めるサウナ、曰く日本で最も500円玉が飛び交う日、曰く世界最大の同人誌即売会。
諸人こぞりて一国の総理だろうと子供だろうと等しく並び等しく争う、目的の物を手に入れて、掘り出し物を探しだし1日で全てを回るのは絶対に不可能と言われる程の戦場。
一眼レフと呼ばれるカメラがある、物凄く乱暴にかつ的確に言い表すならばファインダーで覗いたままを切り取れるカメラでプロが使ってそうなデカイレンズのカメラは全てではないがかなりの比率でコレの物だろう、せいぜいフィルムかデジタルかの違いが有るくらいだ。
カメコと呼ばれる存在の大半はコイツを相棒にレイヤーの目線を求める、二眼レフやミラーレス、普通にデジカメを使う者や携帯、使い捨て、ポラロイドなんて猛者も居るには居るが稀有だろう。
まぁポラロイドの場合はその場でサインとか貰える可能性もあるし二枚取って相手に渡せる、ネタにもなるだろうから使い分けで持っていく者も居る、本当に猛者というならば銀板カメラとかピンホールカメラとかになるが流石にそんなのを担いでくる奴は居ないと信じたい、仮に居たら色んな意味で伝説になる。
リュックの中にはサイズ様々なレンズ、カメラ本体が二台に予備のメモリー、バッテリー、それらをタクティカルベストに積めて日射病を避けるためにバンダナ、腰には水筒を二本、何処の戦場に向かうのかと問われればオタクの祭典と答えるしかない。そしてそんな装備をした奴は少なくないのだ、恐ろしい事にたった一枚の写真のためにカメラ一式にウン十万円注ぎ込む奴は多い、おそらくこの日訪れる全てのカメラと周辺機器の値段を出せば億は容易い、そんな場所に前述の格好で は居た、本当ならば同人誌の方にも行きたいのだがソッチは最悪後日書店やネットで買えるがレイヤーの写真はこの日しか撮れない、故に高校入学より毎年毎年、遠征と呼べない距離を移動して戦いに挑む。
今期のアニメ、古いアニメ、新作ゲーム、古いゲーム、或いはドラマや時節の事件を皮肉った、はたまたオリジナルの本当に様々なコスプレや着ぐるみを愛でながら一枚一枚真摯にシャッターを切る、レンズを手早く変えたりバッテリーの残りを確認したり、カメラを変えたりというのを繰り返してひたすら撮りまくる。
流石に特大望遠レンズは必要無かったかと思うが去年も一昨年も念のために持ってきた、おそらく来年も持ってくる、そして来年もまたシャッターを切り続ける。
世界最強の異能者でも諸人ごそるこの場ではなんの意味も無い、この場で空に浮かべたとしても一切の意味がない、せいぜいレイヤーさん浮かせたり服を整えてアニメやゲームを切り取った様な写真が撮れる程度だろう。そして間違いなくそんな事をした日には袋叩きだ、例えソレがどれ程似合うのだとしてもレイヤーさんに迷惑を掛けるのは御法度、許可を得ても厳しいだろう。それは不文律で破れば最後、数百の人の輪が囲むだろう、もはや文字通り飛んで逃げるしかない。
銀板担いだ場合レイヤーになるのかカメコになるのか