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異能部  作者: KAINE
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昔のお話その2

 正直に言って、都合の良い妄想すら越えてくると言うのは予想外だ、カリスマなんて呼ばれてはいるが他の分校にも居ない訳ではなく、役職も持たない一社員でしかない自分のためにグループの会長が骨を折ってくれるなんて想像から大きく外れている。

 その事に感極まる中で西岸高校が千葉県に有るという事、県内でも数少ない異能者受け入れ校である事、そして勤務条件と引っ越し費用に関しての説明を受けて、流石に一人では決められないとほんの少しだけ待って欲しいと頭を下げれば

『子供が生まれたばかりで妻にも相談せずに即決するようならば誘っておいてなんだがお断りだ』と叱られてしまう、確かにその通りでぐうの音も出ない。


 とことんまで話し合い、夢を追う事になる、教師という夢は幼い頃から目指した一つの到達点で通過点だ、思わぬ形とは言えそれが叶うならば手に取らないのは愚か者だと尻を叩かれて次の日には頭を下げて生まれ育った大阪から千葉に引っ越す事を決めた。

 バタバタと準備を進めて学校から程近い場所のアパートに居を構えて数年前に建てられたばかりだという校舎が新たな職場となる、曰く江戸の頃より剣術の道場と寺子屋を兼任し明治に入って道場を潰して私塾となり、大正時代に今の形になったらしい、戦乱を越えて脈々と受け継がれた理念は自立、自由、自治。

自立するには自らを律する必要があり、自由には自らの責任を要し、自治には自分達の誠を要すると、卒業の頃には他校に比べて立派な若者と呼ばれるようにという理念は、少々と言わずに苛烈と言うか表裏合わせて厳しい物だが古い時代から受け継いだとなると伝統を越えていて昔はそれが当然だったのかもしれないと思ってしまう。


 ともかくだ、これから先は自分のできる事を可能な限りで全力を尽くすまでだ、骨を折ってくれた会長に足を向けて眠れず、わざわざ関東から関西まで自ら出向いてくれた理事長にも頭を上げる事はできない身だが微々たる物しか持たないとしても、努力をする事も全力を尽くす事も決して難しい事では無いのだから。

 それに、既に明日が楽しみでならない、塾と違って学校は生徒に寄り添える、塾でも可能な限りでやってきたつもりだが成績を出す事が目的の塾と社会勉強や人間の育成という強い面を持つ学校とではそのあり方は違う。

恩師の様な教師を目指してきた、彼から直接指導を受けた事はないがしかしその理念は自分なりに理解できているつもりだ、ドラマのキャラクターと言えばそれまでなのだろう、現実はドラマの様に上手くはいかないかもしれない、だからどうした、それが諦める理由にはならない、それが傍観する理由にもならない、それが心を折るなんて事は無い、例え上手くいかなくとも例え失敗しようとも何度でも何度でも何度でも這いずろうが泥を啜ろうが立ち上がる覚悟ならずっと昔に決めている、理想は遠い方が目指しがいが有るというものだ。

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