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異能部  作者: KAINE
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昔のお話その1

 大阪は難波駅に程近い今宮戎駅、年始になれば関西近縁の商業を行う者達が集う十日戎で知られる今宮戎神社に程近い故の駅名だが、では神社しかないのかと言えば当たり前だがそんな訳はない、普通に住宅街でコンビニやガソリンスタンドや公園、学校等々探さなくても諸々揃っている、駅から北に約2分、難波からよりは少しだけ近い位置にその進学塾は有った、関西、特に発祥地である大阪に幾つもの分校を抱える塾でオフィスビルをツーフロア借りて複数の教室と自習室を用意した大学と一応は高校受験のための塾で窓には進学率だとかが関西名門校の名前と共に張り出されて新たな受験生を待っている。

 近隣に住む受験生や数年後を見据えた若者、はたまた浪人生が足しげく通う学舎は高校の授業より過密に教えて着いてこれない奴は切り捨てるというレベルで一年間を入試のために費やして数ヵ月に一度は模試を行い生徒に志望校への希望と絶望どちらも与えて、時には志望校をワンランク上にして時には下にする、大体は成績を底上げできるが、どうしたってできない場合も有った、何れにしてももはやだった、正確には今はまだであるというしかないが。

昭和の終わりから平成に入り少しずつ生徒数が減ると同時に全国的な塾の参入も増えて生徒の取り合いとなる中で、大阪でも一等地に近いこの塾は少しずつ少しずつだが黒字の値が減り、このままダラダラと続けても何時かは傷になると早めに見切りをつけて通天閣に程近い恵美須町近くの分校に吸収される形での統廃合が今年の春に決まっている、一部生徒はこのまま入試を済ませて桜と共に塾から姿を消すだろうが一部は分校に移るかそれとも別の塾に通うかを迫られ、教員もまたこれから先を問われている。


 板野孝路もまたそんな教員の中の一人で彼は教員免許は持つが採用試験を受けなかった、正確には試験の時期に相次いで両親が亡くなりそれどころではなく受ける事ができなかった口で、じゃあ来年までと塾で教鞭を取る事にしたが案外、性に合っていたため続けてきた、幸いにして顔に似合わずカリスマとして担当科目で生徒達に好かれ、また成績を底上げできるだけの実力も有ったらしく近縁では今宮戎にこの人有りと知られる程度には優れた能力を誇っていた。

 だがちょうど良いし採用試験受けるかどうか考えると早々に分校への遺留を受けても留意していて、最終的に試験を受けると決めたが困った事に採用の時期に子供が生まれてまたまたそれどころではなくなってしまった、とは言えじゃあまたお願いしますとは不義理だろうと分校への異動もせず、さてこれからどうするか、こうなったらまた何処かの塾で教鞭を取るか私塾でもやってみるかと幸いにしての親から受け継いだ遺産にマンションの家賃収入と株式の収益や雇用保険で最低限食い繋いでいけるため、いっそアルバイトで一年を過ごすかと決めた頃に客人は訪ねてきた。

和装姿の品の良さそうなお婆さんで腰は曲がっていないが年齢事態は70近いと思われる、間違いなく始めましてだ、老齢の女性が訪ねてきたと聞いて叔母か妻の縁戚の誰かかとも思ったが自分の知らない誰かで無いならばその線は無いだろう。


 「始めまして」

 渡された名刺には私立西岸高等学校理事長という肩書きが記されているが残念ながら板野には聞き馴染みが無い、関西の私立高校なら全てではないが知っているし大阪府内に限ればほぼ網羅していると断言できるが一目見ても思い出せないとなると相当にマイナーか新しいか関西以外の何処かなのだろうと予想する。

 「えーっと、今日はどう行った御用件で」

自分も名刺を返しつつ単刀直入にだ、別に時間的な余裕が無いという事は無いのだが見知らぬ誰かで聞き馴染みの無い学校となると用件が思い付かない、一応は都合良くもスカウトに来たなんて頭を過りはしたが都合が良すぎると切り捨てる。


 「私、ここの須藤会長とは古くより懇意にしておりまして、須藤さんから自分の所の教員で採用試験のため契約の継続を断ったが理由有って試験を受ける事ができず、その後何も言ってこない、おそらく断った手前言いにくいのだろうし此方からも他の教員の手前遺留を伝える事ができない、なんて事を聞きまして、当校で長らく教鞭を取っていた先生が退職されるという事を覚えていらした須藤さんがどうだろうかと」

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