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異能部  作者: KAINE
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短編集その6

 「おい、俺にも不可能は有るんだが?」

 「それは重々承知してるし俺も無茶だとは思うがどうにかしないと彼女達が不憫だ」

 「それは解るがね流石に写真とかだけでテナーサックスを障壁で作れってのは無理だろ、そりゃ、外見はどうとでもなるだろうが中身はな」

 「調整するしか無いだろう、それとも今から彼女の家まで飛ぶか? 流石に今から何十分も時間稼ぎは厳しいぞ、彼女達はオオトリとは言えもう出番も差し迫ってるからな」

 「とりあえず君達もう少し早く言えよ、作るは作るが何をどう調整かは解らん、薄い厚い細い太いの調整でどうなるのかは解らんからな、って言うかリード? だったか? アレは有るんだよな、アレもとなると流石に手が回らんぞ」

 「無い……です」

 「良し、やるだけやろう、最悪リコーダーなら作れるだろうからそれでどうにかするしかないな」

 「ジャズバンドでリコーダーか、仕方がないとは言えシマらないな」

 「とりあえず音は出たが波長が違うな、録画された物でイヤホン越しだから微妙に違うだろうが」

 「波長、解るのか?」

 「空間把握の仕様だ、俺は反響測位で距離を増やしてるからな、まぁどれがどの音とかは知らんが」

 「残り5分でどうにかしてくれ、文化祭の〆が一人抜けのバンドなんぞシマらない、最悪俺がもう10分までなら引き伸ばしてやれるから可能な限り万全で頼むぞ男鹿」

 「身勝手な保証はできないが、やるだけはやってやる」

 「なる程なる程、だいたい判ってきたが、これは難物だな、しかもここからチューニングもか、どの音を使う? もう使わないのは切り捨てるぞ」

 「その……全部です」

 「全部と来たか、やるだけはやるが微妙にズレる音もある、アレンジで乗りきってくれ」

 「ってか、10分も稼げるなら頼まれた時点でたぶん往復できたんだが、もう7分しか無いんじゃ無理だな」



 「なるほど、一点差で負けてるな、とは言えヒット数は上だからあの特訓の成果は有ったと言っていいらしい」

 「って言うかヒット一本で得点ってホームランでも打ったの? それとも四球バントから?」

 「さぁな、向こうに応援団居るし聞くか? 聞いた所で結果は変わらんが、しかし三回で8ヒット打ってて一点も取れないとか沼ってるな」

 「沼ってるわね、あの不幸の権化が出塁してるなら盗塁も狙ったでしょうしバントは確定、得点圏にランナーは居ただろうに帰せないってプロならヤジが飛ぶレベルよ」

 「とは言えだ、先発は捉えられてるし引き摺り下ろせてるならリリーフ陣は強敵って程じゃないってのがアイツの見立てだ、中盤から後半戦が肝だろうな」

 「確か県内随一のピッチャーが居るんでしたっけ?」

 「あぁ、魔球の高速スラーブ投げるのがな、まさか二戦目で当たるとは思って無かっただろうが此方にも県内随一の快足と国内随一の不幸の両方持ってるのが居るからな、後は何処かの高校に県内随一のスラッガーが居る筈だ、守備はアイツが兼任してるし」

 「仮にその三人と他県の随一集めてもプロとの差って大きいのよね?」

 「そりゃ、県内とか言っても47都道府県でピンキリだろう、ピンでもプロなら二軍でクリーンナップ任されればってのが大抵で数年に一人か二人開幕一軍即戦力ってのが普通だろ、大学とか社会人からなら話は別だが」

 「まぁ18の若造だからね、それこそ140km後半投げるだけでもそこそこ豪腕なんて呼ばれそうな世界とそれがたぶん平均くらいって世界だし」

 「それがプロの世界なんでしょうね、学校とか県内随一が集まって、それをさらに選別して選別して、残ったホンモノだけが立てる世界」

 「俺らじゃ逆立ちしても届かない世界だな、見えんのと反応できんのは別問題って以上に俺の場合バット振るより飛ばした方が楽って思っちまう」

 「完全にイカサマ通り越したズルじゃないですか」

 「まぁな、俺みたいなのが居るから俺らはスポーツの世界に居ないんだろうし居ても隠すだろうさ、バレたら排斥じゃ済まんしな」

 「袋叩きプラスで他の異能者にも飛び火しますからね、マトモな感性してたら無理ですよ」

 「まぁ、それが無くても勝手に燃える時は燃えるけど、私達がお婆さんになる頃には異能者が人権を求めるデモとかするんじゃない? もしかしたら死んでからかもだけど」

 「あー、まぁ今はようやくやや排斥よりくらいに落ち着いたからな、もう少しして声がデカイ奴が現れたら爺さん婆さんになるより早く見れるかもな、俺からすると滑稽でしかないが」

 「どういう意味ですか?」

 「うん? そりゃあお前考えても見ろよ、公式な試験って免許くらいでしか受けられないが学校とかも受け入れ体制作ってる所が増えてきてるし発現して即殺害なんて時代から考えりゃ今は天国だろ、何より力を持つ者が持たない者に不平等だ、酷いなんてどの口が言える、向こうからすりゃ人間の形して人間の思考してても特異な力を持ってるってだけで脅威なんだぜ? 俺みたいな怪物化け物は稀有としても逸脱したのなら十把一絡げ、叩き売りされるバナナよりは少ないだろうってくらいには居るし」

 「それを先輩が言うとほんとにどの口がになりますけどね、平気で倫理とか物理とか無視しちゃいますし」

 「いや、倫理観はちゃんと備わってるよ、道徳観もな、でなきゃ今頃は王座にふんぞり返ってる」

 「それが可能であるのと実行するかは別問題って言っても可能なだけで潜在的な脅威なのよね、だから狙われる訳で」

 「毎度思うし、たぶんきっと菜慈美は嫌ってくらい聞いたと思うが、手段は兎も角として俺の情報知ったなら不死の部分を読み飛ばしたり聞き飛ばしたりしないで欲しい、どうせ徒労にしかならんのに排除だの迎合だの面倒くせぇことこの上なしだ、なんで俺がわざわざ異能者の権利とやらの為に立ち上がらなきゃならん、なんで俺が異能者の代表格みたいになってる、それを千歩譲って認めてやるとしてだ、力付くで言うことを聞かせるって野性動物でももう少しマシな交渉方法を使うだろうに、そして何よりそれらに意味なんて無いってちゃんと考える脳ミソ有るなら理解できない筈も無いんだがな」

 「それが理解できないのがもう何十人と来ててそれを指示したのも同じくらい居て、組織グループの人員総数が云千って考えるとこの世界には私が思うよりバカが多いって事になるわね」

 「さてな、時にホームランボール直撃を助けた事に対する礼とか無いのか?」

 「手を顔の前に突き出すまでもなく防げるでしょ? 因みにこの場合ホームランボールって持って帰れるのかしら? サインでも書いて貰う?」

 「プロの試合じゃねぇし球場の備品だろ、普通に返すよ、それに同級生のサイン貰ってもな」

 「将来価値が出るって言っても先輩から見ればはした金ですし、そういうののコレクターでも無いですよね?」

 「俺がコレクトしたいのはゲームとB級映画と美人くらいだよ後輩、間違っても野郎のサインに喜ぶ事はねぇ、仮に有ってもB級の主演俳優とか監督だな」

 「美人のサインならどうなのよ?」

 「キスマークも添えてくれるなら嬉しいかもな」

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