年始の日常その1
「この時期にウィンターソングが流れるのって世界中のデフォなんだろうな、曲は違うだろうが」
「まぁ日本程アッチもコッチも流す事は無いっぽいけどね、メロディとか良いなら何処かの部族でしか使われてない言語でも流しそうだし」
「今のところ日本語と英語くらいだがな、英語なら中高で最低限は学ぶし文法はともかく単語単語が解れば概要くらいはな、他の言語だと概要すらだ、まぁメロディラインでノレるなら言語とか無視しそうだが」
「解る人からすると何語でも冬を歌ってるって解るんでしょうけど」
「あー、親父とかはそうだろうな、俺は頑張っても7くらいだな、英日独露伊仏、後は訛りと部族語だから合わせて10くらいか」
「因みにこの辺の訛りは?」
「アラスカだし北部じゃねぇの? それか西部、カナダ系だとちょっと厳しいがニュアンスは伝わるだろ」
「で、あの娘の家は何処?」
「だからサプライズじゃなくて連絡しようぜと、位置は解るが道が解らん、空から探すか」
「こんな森だと道も解らないんじゃない?」
「最悪ロリっ娘に空を見て貰えば迎えもくるさ」
「んじゃ、よろしく、因みに距離的にはここからどのくらい?」
「方向は向こうで距離的には30m、まぁ見ての通り森だが」
「そんなに近いのならもう飛んで突っ切りましょうよ、面倒だし」
「んじゃ玄関先まで」
赤い屋根の三階建て、横にも縦にも広いアメリカンな家だがアメリカなのだから当然だろう、玄関先のポーチに車が無いから少なくとも免許を持つ誰かは不在か立地的に考え辛いが持っていないかだ。
住所云々は解らなくとも障壁の位置的に三階の一室に居るのは解るし重要度は高いため間違える筈もなく、また付近で最も近いのは隣に居るのとなれば町中で見掛けた美人に勝手に張った障壁と間違ったという事も無いだろう。
とりあえずノックかインターホンかだが家のサイズ的にはインターホンだろう、だが見当たらないんだよな、大抵の場合は玄関の壁とかに付いてるんだが俺の空間把握にも視界にもない、となるとこのノッカーを鳴らすしかないのか。
有りがちなライオンだとか猛禽類が咥えているタイプではなく、シンプルに留め具に付いているだけの輪を持ってコンコンと扉を叩く、こんなのは俺の経験上初めてなんだが多分おそらく上手くは行った筈だ、その証拠にソファとか有るからリビングだと思うがそこに居た女性が立ち上がる、姉か母親だろうが一人っ子らしいから母親だろうな、もしくは叔母か従姉妹辺りだろう、まぁ俺は本人しか知らんのだが。
「Jimmy? Lilycam!」
「なんで母親までジミー呼びだよ、まぁ発音か、じゃあ俺はオーガ呼びだな」
「ジミー、オーガもお久しぶりですね」
「おい、サプライズの筈が普通に受け入れてるんだが?」
「おかしいわね、私の計画だと感極まって狂喜乱舞だったのに」
「んー、窓の外見てたら人陰降りていきました、そんな事するCrazyなのリリーは一人しか知りません」
「なるほど、呼んでから現れるまで早いわけだ、そんな事なら部屋の中も確認するんだったな」
リビングに通されてカウチに座るが玄関で靴を脱がされてスリッパを渡されたのにはやや驚いた、土禁ってこっちじゃそれなりに珍しいだろうに。
「で、どうして此処にいるですか? ニホンでお仕事してるんじゃ?」
「年末年始は流石に休みだよ、クリスマスは流石に休めなかったがな、とりあえず3日くらいまでは此方で滞在するから顔を見せに来たって感じだ」
「oh、そーいう事なら泊まって行ってください、なんなら残りの滞在期間めんどー見ます」
「勝手に決めたらお袋さんとか親父さんとか怒るだろうに、と言うかすぐそこのホテル予約してるんだが?」
「mamなら日本語少しは解りますから何も言わないって事はOKって事です、それにHOTELはyoungeryoungerなら叔母さんがケイエーしてますから連絡一つですよ?」
「まさしくそこだな、どうするよ?」
「そもそも私は有無を言わせず泊まるの確定だっただろうし、お世話になりましょう、久しぶりにリリーの髪型とか好き勝手にしたいし」