職場の日常その9
「じゃあ、簡単に業務内容の説明と契約、後は基本的な接客マニュアルと追加分は任せますって所で」
「はい、御願いします」
「えー、まず仕事は毎月新月の夜22時から23時か24時まで、お客さんが特別ガイドを希望した場合のみの出勤でそれ以外は既存の社員等で賄います、給料は日給で15000円プラス危険手当と守秘義務手当と夜間手当で合計20000円、一応保険とかも入れます、ただ交通費は公共交通機関なら往復代と車なら距離に応じたガソリン代でタクシーは規定外となります、また契約上は臨時職員雇用で正社員とバイトの間くらいですかね」
「で、業務内容は言わずもがなとして、基本的な接客マニュアルは後で研修に出て貰うとして、追加分のガイド部分はそちらにお任せになりますが理想を言うなら資料程度は良いとしてスマホとかはガッカリさせてしまう可能性大なので使わないで下さい、例えメモ書き見るにしても印刷してからにしてください」
「かしこまりました、厚めのノート一冊分くらいなら大丈夫ですか?」
「そうですね、そのくらいなら範囲内だと思います、まぁ先生なら頭の中に基本情報有ると思うんで細々した温度とか距離とかになりそうですけど」
「いや、どちらかというと念のため地形とかかな? ほら星だけ見るとは限らないし地球見たいって私みたいな人も居るはずだから」
「それはちょっと想定外ですね、確かに外だけじゃなくて内も見るか、そっちの用意までしていただいて感謝感謝ですよ、やはり見る人間が多いと角度が増えて良い」
「いや、まぁ事後承諾の用な形で申し訳ないがこの話はゼミの学生から出てね、で、それを伝える代わりに私の代行が必要なら自分達を昼間や夕方にガイドが居るなら自分達を推してくれと言われてね」
「あー、貸し切りの場合そういうオプションもアリですかね、少し幹部会議して行けそうなら頼むかも……アンケートとか取ってからになりますが来月辺りには話ができるかと」
「うーん、じゃあまだ伝えない方が良いかな、下手にぬか喜びさせると刺されかねないし」
「ハッハー、折角受けて貰って刺されると困りますね、異能とか度外視して受けてくれる人って稀有でないにしても少ないですから」
「うーん、天文系だと排斥主義は少ないかな、少なくとも過激なレベルな人は知り合いに居ないなぁ」
「視点がたぶん此方に向いて無いんでしょうね、空しか見てないっていうと語弊が有るでしょうが異能だろうと宇宙の神秘知れるなら喜んで使うみたいな」
「まぁ、ガリレオとか異端認定されてるしね最近になって間違いだったって認められたけど変わっていたり他と違う事が間違っているわけではないと大先輩が教えてくれているので」
「じゃあこれから先何百年かして異能者は悪魔云々は間違っていたって認める日も来るのか、自己満足オナニーもいい加減にしろといってやりたくなるな、実害有ったら潰してる所だ」
「話には聞いてましたが、なんと言うか随分と好戦的で過激なんですね」
「そりゃあ年中殺されるとこうなりますって、治るからって痛みを感じないとか不快さを感じないとか少しずつ意識や力が失われていく感覚に慣れるとかそんな事は無いですし、そんなのを何百と経験したら人格ぶっ壊れますよ」
「戦場でないと生きられない兵士や傭兵の様な事を平然と普通の青年が口にする程に攻撃してきたのか、彼らの正義や大義の名の元に殺された異能者が何人居たのか解らないが哀悼しておこう」
「なんでソコに目が行ったのかは別にして、この数百年で何千は死んでますよ、たぶんですが」
「何時かは彼らの後輩がその業を背負う日も来るのだろうが、その頃にはもう遅すぎる、過去から学ぶまでもなく排斥したから問題が解決する筈もないと、ただ大きくするだけだと、蓋をしても中身は変わらないと気付いた時にはもう遅い、消えない痼が残ってしまう」
「まぁ俺を筆頭とするかは別として反撃もしてるんでもう痼どころか悪性の腫瘍くらいには育ってますが、憎しみの連鎖を絶とうとか綺麗事を言い出す旗振り役がおおっぴらに現れるまではまだ50年は待たないとダメでしょうね、待ったところで痼は残りますが」
「さて、雑談はこの辺りにして、そろそろ研修と行きましょうか、新しいバイトさん達と実際に宇宙まで、基本的な対応覚えて貰って多少感動してもらって、上昇下降の感覚を覚えて貰うって感じですかね、まぁロケット程の急加速はしないですし急減速もしないんで極端な負担はないですが、それでもジェットコースターよりは最高速出るんで多少のGはかかります」
「いよいよですか、多少感動と言うと少しは窓の外も見れると?」
「ええ、基本的に扉開けて上昇下降の際の決まり文句を声に出して読んで貰って、実際に上りながらやって貰って、先輩がある程度のFAQとありがちなトラブルの例と対応覚えて、んで少しばかりの自由時間ですね、写真とかは撮れますが流石に実験機器とかは貸し切りで予約してからですね、因みに社員バイトは一割引きです」