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異能部  作者: KAINE
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企業戦士の非日常

 「俺、信仰心とか全く無いって言うか神なんて糞食らえって公言して憚らないが、流石に大聖堂は荘厳だと拍手してやりたくなるな」

 「私も似たりよったりだけど、宗教云々じゃなくてこれを作って数百年建ってるって事実に凄いなとは思うわね」

 イギリス、ロンドンはウェストミンスター大聖堂、すぐ近くにあるウェストミンスター宮殿の時計塔ロンドンのシンボルマークとも言えるビックベンの鐘は日本においては学校の始業と終業予鈴を告げるメロディとして有名で名前を同じくする寺院も含めれば三つの建物は名前だけ同じでそれぞれ意図や意味は異なる、宮殿は言うまでもなく大聖堂はイギリスカトリックの大本山とも言え寺院はイングランド協会の協会でそれぞれ微妙にニュアンスは異なる、乱暴に言えば議事堂と伊勢神宮と出雲大社くらい違う、ただそれらが半径数キロ圏内に固まっているというだけで地名を同じくしているだけだが宮殿はともかく知らない者からしたら寺院とか聖堂とかどっちもキリスト教じゃねぇの? となるが宗派の違いで大きく違う、根は同じなのかもしれないが教義の受け取り型はそれぞれだ、逆に向こうの人も真言宗とか天台宗とかどっちもブッティストじゃねぇの? と思うだろうからおあいこだろう。

 とまれ、高校を卒業して、さぁもう少しで開業という頃合いになって忙しい時期にわざわざこの二人がロンドンまで来ているかと言えばハネムーンなんて甘酸っぱい理由ではない、そもそもまだ入籍前だし、ようやく家が完成するというタイミングでは新婚旅行よりも生活基盤の充実が最優先で一通りのハードルを越えてからだ。


 「やぁ、助かった、本当に助かった」

 「なんでこんな所で、空港でも良かったのでは?」

 「いや、お恥ずかしながらスカンピンでここ二日は絶食だよ、幸い水には当たらなかったから生きてるけど」

 「あー、つまり空港までの足代もないし歩くのも億劫だと」

 「そういう事、いやはや油断した」

 「会社貸与のスマホ盗まれたは解りますけど、スカンピンなのは財布もですか? ってか此方のビジネスパートナーに金とか借りればなんとかなるんじゃないですか?」

 「いや、ホテル代に溶けてね、カードも此方じゃスキミング怖いし延泊の予定無いから持ち合わせも少ないしビジネスパートナーはスコットランドだ、流石に呼び出すのはね、それに弱味を握られる訳にもいかないし」

 「それで日本の娘と義理になる息子にって、そっちの方が呼び出すのは忍びなくないの?」

 「それを言われると痛いなぁ、でも本当に助かったよ」

 「とりあえず飯からですかね、因みにスマホは戻りました?」

 「戻ってたら今頃は飛行機の中だね、いやはやチケットとかの半電子化は嬉しい反面、危ういね」

 「デバイス紐付けの登録とかじゃないなら普通にプライベート用でログインして予約チケットのバーコードなりナンバーなり受け取れば解決したんじゃ無いですか?」

 「面倒な事に専用のアプリ使っててパスワードは会社が設定してて社員は知れないんだよね、今回みたいなケースは例外かなって連絡したら普通に教えて貰えないわプライベートの方でなんとかならないかって聞いたら自費なら良いよって返ってきたよ」

 「わぁいブラックの臭いがプンプンするぜー、って今更だったぜー」

 「年の半分海外出張で月給そこそこ領収書はほぼ切ってくれなくてオーダーきつい、出張手当無しか、黒よりの灰色ね、保険とかは有るし給料も安くはないから」

 「いや普通にホワイトな部類だよ? 残業手当とか出るし有給使えるし交通費出るし」

 「でも地獄の出張ノックが有ると」

 「いや、うん、ソコだけはマジで勘弁してほしいとは思うけど多少は観光もできるしさ」

 「でもトラブル対応してくれないと」

 「君達オッサン苛めて楽しいかい!? ちょっと本気で職種代え考えだしそうなんだけど」

 「そりゃあいきなり迎えに来てって雨の日に駅に来いくらいのテンションでロンドンまで来させられりゃ荒みもします」

 「しかもその理由が地下鉄で寝ちゃって起きたら会社貸与のスマホ盗まれてネット予約の航空券印刷してないから帰れないって荒みもするわよ」

 「うん、本当ゴメン、でも流石に僕も例外としてログイン方法とか有って帰れると思ってるしさ、当日まで粘っても無理ってマジで糞上司殺すってなったよ、乗るはずだった飛行機飛んだら笑えてきたけど」

 「もしかしてパワハラなのでは?」

 「もしかしなくてもパワハラ案件なのでは?」

 「あー、うん、帰ったら人事と相談室に話してみるよ、たぶん間違いなく今回みたいなケースだと例外的にプライベートデバイスでログインがベストだし」

 「なるほど、つまり糞上司が勝手に判断してる可能性大と、社員を予定よりオーバーステイさせるとか下手すりゃ会社潰れるぜ?」

 「下手しなくても炎上案件よ、来年の進入希望減るし幹部クラスの首が吹っ飛ぶわね、大使館通じて超過申請は可能だとしても手間は掛かるしどう足掻いても自費帰国しかないとか世間が知ったらなんて言われるかなんて解るでしょ、切っ掛けが居眠りでの窃盗だから認識不足を問われるかもだけどその後の対応が悪すぎる」

 「案外ソレ狙い説」

 「その心は?」

 「糞上司も上からの圧力に嫌気がさして会社潰そうってパターンと引き抜きがあって立つ鳥後をぶっ壊して手土産ってパターン」

 「どうして君はそう過激なのか、単純に頭の中が空なだけだよ、だって急病とか代休で抜けた穴埋めを毎回同じ人に頼むような人だし、普通は満遍なく全員で穴埋めさせるか一人に回すにしても前はこの人だし次は別のってなるでしょ? そもそも休日出勤の代休に穴埋めしないといけないような計画建ててるのがオカシイし、平の僕らが暗黙の了解で分散させてなけりゃとっくの昔に過労死手前だ」

 「話し聞いてるとなんで管理職やれてんのか、なんでまだ首になってねぇのか謎な奴だな、過去に何度かパワハラとかトラブルで始末書とか減給降格処分受けてても不思議じゃなさそうなんだが」

 「あくまで噂だが会社の黒い部分握ってるとか社長の隠し子とか上役の弱味知ってるとか、いろいろ言われてるしそうじゃないと納得できないってくらいには能無しだよ」

 「どうします? 処します? 処しますね、解りました」

 「だからどうして君はそう過激なのか、制裁なら社会的に済ませるから物理的にはしなくていいよ」

 「じゃあそういう事にしておきましょうか、で、彼処の個人経営っぽいレストランとファストフードどっちにします?」

 「お腹空いてるのに地雷踏みたくないしファストフードかなぁ」

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