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異能部  作者: KAINE
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自宅の日常その8

 誰にでも不幸というのは訪れる、規模に違いは有ってもタイミングに違いは有っても、近所のスーパーやコンビニに好きなお菓子や商品が何故か入荷されなくなったとか、歩いていて犬か猫の糞を踏んだとか、階段を登ろうとして足を引っ掻けて転んだとか、遅刻しそうなのに信号に捕まるとか、些細な事から大きな事まで生まれてから一度もそんな不幸に見舞われなかったなんて奴はそれだけで宝くじを当てるよりも幸運だろう。

 対して、それにばかり見舞われるというのも確立論を持ち出すまでもなく相当に凄い、誰しも日に一度は大小含めれば何らかの不幸は体験するだろうが24時間365日休みなく、怒涛の様にとなるといったい全体何がどうなればそうなるの疑問にしかならない。

例えばそれが準備不足だとか確認不足だとかなら不幸ではなく自業自得だし目に見えたバナナの皮を踏みに行って不幸だなんてのは出来の悪いコントでももう少しマシなネタを使うだろう、たが意図せず望まず、そんなのはまぁ当たり前なのだが不幸を不幸として享受する奴が居る。

毎日のように、毎度のように、何をどうしたらそうなるのかと思うくらいに不幸を呼び寄せる、曰く不幸に愛された男、曰く死神と歩む男曰く不幸の権化、竹田良太郎というその少年は紛れもなく不幸だ、誰がなんと言おうと、と言うか自他共に認める不幸の化身、まるで狙い済ましたかのように不幸を引き当てる、天文学的な確立を引き当てる、二分の一を千回でも万回でも億回でも悪い方を手にする、ある意味でどんな異能よりも恐ろしい異能ではない何か、世界最強をして異能と呼べると太鼓判を押す何か。


 「うわぁ、あれは痛いぞ」

 全力で走り限界まで手を伸ばしグローブの先に白球を納めるとそのまま転がりながら壁に激突する、傍目には転んだように見えて本人的には安全に減速するための所作、度重なる不幸は彼を不幸の中でも小さい方を選び取るだけの判断力を身に付けさせた。

 それでも思いっきり背中をクッション入りとは言え壁にぶつければ肺の中から空気を押し出す程の衝撃だ、しかしグローブの中の白球を取り落とす事はなく、キッチリとアウトカウントを一つ進める、その瞬足で球界にやってきた新星は初の一軍スタメン試合で十分に通用すると如実に語りながらもまた生傷を一つ増やして、ついでにタッチアップによる得点を許すという締まらない物になる。


 「これって不幸って言えるの? 割りと普通のプレーだけど」

 「不幸……とは言えないな、ただ今日だけで三回目って異常だぜ、流石にタッチアップは初めてだが全力疾走からの壁激突三回って長打系のチームでもそう無いってか長打警戒にならない選手でああも走るって初めて見る」

 「コイツも相変わらずね、それでもまだ交代してないし怪我してないってある意味凄いわね、残り二回でどうなるか私は頭にデッドボールと見た」

 「じゃあ俺は牽制死で」


 八回に肩へのデッドボール、九回にまた壁激突、ついでに九回に自打球とその異名を遺憾無く見せ付けるプレイはファンを大いに沸かせて、首脳部にそのタフさとスタイルを理解させるに十分だろう。

 この日は五打席二安打一死球二盗塁に四度の壁激突と複数回のファインプレー、代打や守備固めでは十全に発揮できない底力を見せた、後は信頼を築けば一軍でやっていけそうだ。

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