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異能部  作者: KAINE
144/207

ifその5

 鶴は千年亀は万年とは言うが実際にそんなに長生きではない、鶴は生きても50年程度と言われ亀の中でも長生きなリクガメでも200年から300年くらいがやっとで生きている樹木でも9500年程、一部のクラゲが若返りと成長を繰り返してはいるが捕食されるため万年生きた個体は相当に少ないか居ないし判別も不可能だろう、では人間ならと言うと120年くらいがやっとでそれ以上生きたのはたったの一人だけと言われている、言われていたと言うべきか。

 125才の老人と聞けば枯れ木のようなしわくちゃで腰が曲がり歩く事すら難しい様を思い浮かべるだろう、では190才の老人ならばもはや立つ事すら無く息すら絶え絶えの今にも天に召されそうな老人が想起される、しかし、今目の前に居る若者は200年も生きている老人なのだという、見た目的にはかなり上目に見ても20代前半にしか見えないが戸籍が正しいならば200年前に生を受けた老人で年金を貰い続けるために生きている事にしているだとか、曾孫か玄孫を本人という事にするという無茶苦茶な話ではなく、純粋に200年も生きている、ただ死なないというだけだ、加齢はする、事実としてほんの10年前まで彼は子供の姿で十数年前なら赤子だった、それより前はというと老人の姿である朝になって老人の代わりに赤ん坊がベットの上で寝ていた。

普通に考えれば年寄りが誘拐されて代わりに赤ん坊を置いていくという他に類を見ない珍事件だが、しかし我々に驚きは有っても来るべき時が来てしまったという達観しか無かった。


 今から120年近く前、この少年は自らのための老人介護施設を建設し、そこを自らの終の住み処と定めて過ごしてきた、異能、今では当たり前となったそれを持つ彼の能力の一つが不死で、例え死んでも5秒で直近の健全な状態に肉体を戻すという異能が何度と無く老衰や病で死を迎える彼をこの世に押し留めてきた、そして事ある毎に冗談めかして『次は赤ん坊まで戻るかもな』なんて言って笑い『その時はDNA鑑定でもなんでもして本人確認しますね』なんて冗談を返すのはここに勤める者の常套句だった、だがまさか本当にそうなるなんて思いもよらず、ある朝ベットでスヤスヤ眠る赤子の薄い髪の毛を数本切り取り、生前と言えるかは不明だがまだ老人だった頃の彼との比較は間違いなく同一人物であるという解答で、本人である以上はその財も持ち物も権利も姿が変わったという理由で失効はしない、管財人や代理人、それらの監査役も彼は用意していてこの為だけに用意したのではと勘ぐりたくなるが、ともかく併設されている孤児院に移された彼はスクスクと問題なく成長し、ようやく言葉を話せるまで成長した頃になって数年前と変わらない口調でしかし圧倒的に幼く舌足らずの声で何時もの如くジョークを飛ばす、どうやら記憶を継承していたらしく赤ん坊時代は曖昧模糊とした記憶と思考を保つのがやっとで最近になってようやく言葉を話せるようになり、落ち着いて活動できると朗らかに笑う。

 それと同時に己が異能が現状消えていると告げて見た目通りの子供でしかない、若い頃に築いた財と記憶と経験くらいしか同年代の子供と変わらない彼は普段通りに孤児院から自室に戻り、本人曰くざっと70年以上の余生を過ごしている、幸いにしてというべきか、不幸にしてと言うべきか生まれ直してから5年経ち10年経ち、しかし元々持っていた少なくとも3つの異能が復活する事も新たに獲る事もなく、肉体年齢的に18才の老人は若々しい肉体を謳歌しつつしかし老人らしい落ち着きで静かに過ごしている、長らく溜め込んだ執務を片付けたり管財人や代理人、監査の報告書をチェックしたり、今代の市長と知事に挨拶したりとそれなりに忙しくもかつてのような荒々しい生き方ではない。


 そう聞いた、日本、と言うか世界で最も長命の人間、若かりし頃は世界にも類を見ない事業を成功させた、自分の祖父も若い頃に一度だけ利用した宇宙への旅の請負人は若者らしいハツラツさと老人らしい落ち着きを両立させてそこに居る、今まで取材してきた誰よりも難しい、何せ200年も世を見て触れてきている、そのうち10年は一度目二度目共に赤ん坊時代だから除くとしてもそれでも自分の五倍以上生きているのだ、一筋縄ではいかない所の話ではない、ただ気難しいとかなんでも有りなのにNGの質問があるとか業界の大物の方がまだ楽だ。

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