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異能部  作者: KAINE
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ゲーマーの日常その2

 「あー、人間より動体視力が良いはずの犬が餌とかキャッチミスするみたいな感覚か」

 「まぁ似て非なると言うか言い得て妙と言うか、見えてるのと反応できるのは別問題って感じだな、ボール球に手が出るとか、コロコロシュート見逃すとか、プロでもやるんだ、ちょっと異能でチート使える運動神経良いくらいだとセミプロレベルくらいが限界だな、だからこそ俺達はスポーツから遠退いてるんだが」

言い換えれば才能、単に動体視力が良いとか反射が良いとかではない、打った瞬間、投げた瞬間、蹴る瞬間、あるいはそれより前から結果を予測できてしまう、それだけでアドバンテージは相当だ、逆にスポーツ観戦ですら楽しめそうにないが。


 「因みに、俺の足が早いのも応用だったりする」

 「うん? あぁ、フォームか、確かにメダリストの様な綺麗なフォームだな、見てやってで改善できてしまうと」

 「エグザクトリー、走れば違和感も有るし自分とプロの違いも見える、後は改善すりゃ良い、逆に道具系だと体格とかでどうにもな、後は加速曲線って言うのかね? 理想的なタイミングで最高速に持っていける」

運動の効率化、最小の力で最大の結果を出すには自分に合ったフォームだとか道具が最適解の一つとなる、必ず常にソレを維持できるなんて事は無いが例えば理想の八割を平均して出せるのと半分、三割、一分だとかが平均なのとは大きな差が出る、体格とかが同じ双子三つ子のような者を用意しないと正確では無いだろうが単純にイップスだとかスランプに陥る前と後でを見比べるだけでもその差は歴然としてだ、無理無く無駄無い動きを模倣できてしまうのならば結果は当然の様に出る。


 カチャカチャと自らの手足となるスティックと六つのボタン、弱パンコンボをガードして素早く逆方向にレバーを入れつつパンチボタンで迎撃として飛び技、対して強パンチのスーパーアーマーで耐えつつ投げ技、投げ抜けからの宙返りして距離を取る、それを追撃しつつ着地狩りのドロップキック、刹那の攻防がひたすらに繰り返される、決められたかの様なガードと攻撃、ひたすらの読み合い。

 互いのコマンド技も動きも癖も知って、だからこそ上を行くと言葉ではなく指先と画面で語り制限時間がゼロになるまで技術を注ぎ込む。


 おおよそ半日、缶ジュースを買った以外は朝から何も口にせずだ、流石に空腹には勝てず、と言うか高三という食う時期の男子としては昼飯を抜くなんて選択肢は最初っから存在しない。

 結局キャラを変えたりゲーム変えたりしつつおおよそ勝敗は互いに五分、何戦したのか解らないが千円を崩した回数が二回は有るから少なくとも20戦はしている。


 場末のゲーセン故に残念ながらレストランだとかファストフードが併設されているなんて事は無く少し移動を必要とする、そしてそろそろエンジンも暖まったし現行機でもと場所を変えようと駐輪場のバイクに近付けば板田のスクーターは有っても全略の大型は影も形もない、確かに止めたのに切られたチェーンだけが悲しくそこにある。

 「ふむ、何処のバカか知らんが良い度胸だ、あんな目立つの盗むとか、ソレに何より、俺より早いと思えるのは愚の極みだな」

 「悪いが先に行って席を取っててくれ20分で合流する」

そういうとフワリと体を浮かべて空の彼方へと飛び去る、彼の言葉の通り相当にバカをしたものだ、GPS装置を取り外そうとあの男は異能で場所を割り出せる、今朝聞いた物理エンジンだとかではない、バリアーの方だ、奴は友人だとか家だとかに不可視の壁を常に張り、その位置と状態を常に把握していると聞いたのは一年生の頃だったと思い返す、ならば愛車にも、それも自作に近い物ならば間違いなく対策はしている。


 何時盗んだかは解らないがそう遠くまでは行けないし解体するにしても売るにしても車体番号とか車検とか所有者とか確認できないのに請け負うのは真っ当な会社ではない、そういう所に持っていってナンバーとか付け替えても指紋やら何やらは消せない、仮にヤクザだとかの事務所に有っても問題ない、むしろ気兼ね無く正面切って潰せる分だけ楽だろう。

 バイクだとか船だとか飛行機だとか戦闘機だとか、彼より遅いのに逃げ切れる道理は無いし基本的に順法精神を持つ男だが縛られている訳でもない、信号無視を初めとして大小様々、何度と無く法を破っている、今さら過剰防衛だとか私刑だとかを気にはしないし、そもそも神ならぬ人の身で彼を捕らえるのは不可能だしどんな牢獄に閉じ込めても無意味だ。

真に好き勝手をしても咎める事はできるだろう、批難も可能だ、注意や怒をぶつけるのも可能だろう、だがソレ以上が不可能なのが彼だ、数多の異能の中で間違いなく頂点に立ち、二位をダブルトリプルクアトラブル以上に大差を着けて独走する国も世界も宇宙だって相手にできる個人の持ち物を盗むというのは無知とは本当に恐ろしい。

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