異能部の日常その17
掃除というのは人によってその印象は異なる、存外気持ちいい物だとか面倒なだけだとか、はたまた己の心を磨くのに繋がるなんて奴もいる、とかく人がその営みを享受するならばゴミの類いは少なからず出てしまうし自然分解されない物も多い。
おそらく地球上で最も無駄を出しゴミを作る生物は人だろうという程度には多い、お菓子なら個包装でビニールだとかプラスチックゴミ、ジュースなら缶にPETにプラスチック、焼き芋でも紙袋くらいは出るだろう。
そして残念ながらポイ捨てをする奴は枚挙に暇が無いし少ない筈もない、それが神聖なる学舎の近くだろうと警察署の前だろうと美しい海岸だろうと捨てる奴は捨てるし持って帰る奴は持って帰る。
「今日は学校周りと平久里川までの合流ポイントまでな」
学校指定のジャージにトングと大きめのゴミ袋を複数、軍手にマスク、ゴミ拾いのデフォルト装備とも言える、異能部は今さらながら非公式の組織であり主な活動内容は異能者とそうでない者を繋げるという事になっている、だがそれだけだと非公式にしてもどうなんだという意見を封殺するために自主的にボランティアという事で近隣のゴミ拾いをしていて数ヵ月に一度だが学校周辺や公園川沿い等を重点的に掃除する事で学校に対する最低限の貢献を果たして非公式ながら黙認を勝ち取る、一応は校長預かりの組織として彼の体面を守るためという側面も有るが本人はおそらく気にしないだろう、彼にとっては生徒が健やかに学ぶならば大抵は良しとなる。
空き缶に紙屑にタバコに菓子の袋等々、少しばかり注意して見れば道路に落ちているゴミは少なくないし側溝の中なんてのは宝庫と言えるくらいには多い、それらを一つまた一つとトングで挟んで袋に容れていく、燃えるゴミは専用の袋に燃えない物や資源はまた別の物にと、ついでに触りたくも無いため中に浮かせてパッケージとキャップを分別したりしつつ学校の周囲をグルリと半周する、少女ペアと青年ソロで割れてだがゴミを見逃すという事は基本的にない、少なくとも知覚範囲に有る物なら拾い集めるくらいは問題無いし は数十メートルという広めの知覚範囲を蟻の一匹程度までの精度で把握でき菜慈美も十数メートルとペットボトルの蓋程度までなら把握可能だ、今回の様なゴミ拾いならば双方ともに十二分以上の戦力だろう。
「遅かったわね? そんなにゴミが多かった?」
「いや、猫が車に轢かれて死んでてな、道路管理者に連絡してた」
「そりゃあ仕方がないわね、でも保健所じゃないの?」
「調べたら違うらしい、流石に袋詰めにする訳にも行かないし放置するのも猫を飼ってる身としては捨て置けん、一応は小学生の通学路だしな」
「まぁ後は管理者に任せましょう、とりあえずここから合流ポイントまでだけど、どうする? ガードレール越える?」
「あー、昨日の雨で多少増水してるだろうし今回は道路沿いだけで済ませるか」
「了解、さっさと済ませて帰りましょう」
「お前らはな、俺は報告とか一応有るから」
「報告とかって他に何するんですか?」
「そりゃあ指定の場所にゴミを捨てたりとか、用務員さんにゴミ増えてるけど仕分けは済んでますって伝えたりとかさ」
「意外とマメですね先輩」
「割りと普通だと思うんだが? 非公式とは言え部活動な訳だし、その辺りをしっかりやらないと他の部にも悪い」
「後、念のために行っておくと役所に許可取りしたりとかもするから前段階からそれなりに準備と根回し必要になる、来年も部室使いたいなら覚えておけよ後輩」
「いや、来年は多分部活とかしてる暇無いって言うか、担任の先生から今の成績を維持するとして来年も無遅刻無欠席かつ提出物を全て出しても卒業できるかは五分、赤点が三つ有れば諦めろって言われてるんで」
「「あぁ」」
「どうして二人してそんな納得した顔なんですか!?」
「いや、うん、残当だよな、因みに残念でもないし当然の方な、試してないから微妙だが普通は俺とコイツに勉強手取り足取り教えて貰って赤点ギリギリ教科次第じゃ赤点ってどうやって入学したのか謎な部類に入る」
「教えてるの私だけだけど、リリーとかは苦手な国語を赤点から平均点くらいまでは底上げしてるわよ? コイツとタッグ組んだらリリーでも80には届きそう」
「なるほど、つまり後輩の出来は読み書き苦手な外人より酷いと」
「流石にそこまでは……そこまでは……酷くない……筈です」
「自信持って言いきって欲しかったな、教えてる身としては、まぁ部室使わねぇなら卒業前に片付けとくわ、後今日か明日にでもお前の親御さんに時間作って貰ってくれ、家庭教師についてじっくりと話し合う必要がある」