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異能部  作者: KAINE
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西岸高校の日常その7

 言うまでもなく、夏は暑いし冬は寒いのが日本の常でどちらもロシアだとかの北国から見れば日本の冬はまだ暖かいしベトナムだとかの東南アジアから見れば日本の夏はまだ涼しいのだろう、ほんの数ヶ月で様変わりするが如く30℃近くも気温が浮き沈みして湿度も浮き沈みするから如実に差を体感してどちらも過剰に反応してしまっているのかもしれないがそう思うくらいには大きく様変わりしてしまう。

 そして同時に気圧配置も変わるため東高西低と西高東低で のテンションが変わる、ある程度は我慢というか慣れでどうにでもなるが梅雨と秋の長雨の年に二回の合わせて一月以上はデスマーチを終えてようやく帰宅し、着替えもそこそこにベットに倒れ込んだ企業戦士と大差ないくらいに泥の様に体を精神を重くしてグッタリとしている。

まるで炎天下のマンホールの上にでも放置されたナメクジの如く、もしくは糸の切れたマリオネットの間接を瞬間接着剤で固めたかのようにグッタリとしたまま指一つ動かさずにだらしなくテーブルに顔を押し付け、両の手を垂らし、椅子に座ってはいるが子供がほんの少し揺らせば容易く崩れ落ちて床に這いつくばりそうな様相で陸に打ち上げられて半日は経った小魚の方がまだ生気に満ちた目をしているくらいには淀んだ目で何を見るでもなく教室の中央に向けている、もしかしたら瞬きすらも億劫なのかもしれない。


 「相変わらず死んでるわね、今日はどうする?」

 そんな菜慈美の問いに何時もなら快活に朗々と捲し立ててジョークの一つや二つは飛び出しそうな物だが、あーとかうーとか呻く事すら無く目線を向ける事すらしない、目を開けたまま眠っていますと言われても信じるだろうし、既に事切れていますと言われても信じられただろうというくらいの脱力は例え今この場で火事だとか天災が起きようとも避難は当然として顔や頭を守るとかすらしない筈だ。

 「まぁ答えは解ってるけど、とりあえず後2時間は頑張りなさいな、天気予報が正しいならお昼から晴れよ?」

 ほんの僅かに眉根を動かし口を開く事で返答とするが角度的に見える訳もないがそこは異能、尋常ならざる空間把握能力は石像の如く動きを見せない生きた死体かと思える幼なじみの声無き返答を正しく受け取り満足したのか軽く背中を叩いてから席に戻る、言葉に出さずともシッカリとしなさいなんて鼓舞が聞こえてきそうだがそれにすら返答せず、そのまま3時限目の予鈴が鳴り響いた。


 起立の掛け声に先程までの死体の擬態っぷりが嘘の様に立ち上がり、そのまま礼と着席を終えると同時に先程と一寸違わないくらいに、前後を見比べて違いが在るとするなら服の皺とかその程度なくらいに同じ体制に戻ってしまう、ただ教科書とノートとペンが浮いているという点を除けばだが。

 これが新任ならば驚きもしただろうし眉を潜めたり注意もしただろうが老練の数学教師からするともはや慣れ親しんだ光景で一応は授業を受けるつもりは有り、板書はしているし問題も解いている、解答を求めれば酷く面倒くさそうに、今にも吐きそうだと言わんばかりの表情と疲れきっていると言いたげな声で返答はする、そのため姿勢を除くならば授業態度は悪くはない。

それに慣れ親しみ過ぎて当たり前の光景となると姿勢は正しくとも板書すらしようとしないような生徒を何人も見てきた身としては随分とマシと思えてしまうし普段は普通に座って受けている、ただ雨になったり低気圧が停滞すると鬱病にでもなったのかと思う程に気落ちして体の力を入れようとしないというだけだ、幸いにして教科も座学のため最低限板書しているならば強く言う必要もない、特にこの時期ともなると注意する数分が他の生徒の合否に関わり彼自身は進学をしないと告げている、卒業できないくらいの落第生ならば兎も角成績も優秀そのものならば放置して上げるのも人情のような物だろう、逆に体育とかならば明らかに中に浮きながら移動するような有り様を評価できる筈もないが年に数日か十数日態度が悪いくらいで欠席判定にする事もないし、したところで単位は足りるだろう、内申に関しては流石にそうはいかないがやはり進学しないならば記憶とデータとして残る以上の意味はない。


 ようやく昼休みになるが空模様はまだまだ降らし足りないとでも言うように水を吐き出し続ける、どしゃ降りという程ではないが強い雨とは言える、地面に跳ね返る雨でズボンの裾を濡らすくらいの強さはある。

 「うーん、まだ続きそうだ、最新の予報だと14時には止むってよ」

 携帯を出すのすら億劫な体な に対して福音となり得るだろう天気予報を告げていくが、片手を挙げての返答すらなく、淀んだ目が相変わらず教室の中央を見るでもなく見据えている、そこにあるのは絶望でしかなく希望はない、深い深い地獄の底からやってきた亡者でももう少し希望や気概を瞳に湛えていそうなくらいに闇だけがそこに在る、普段との差は躁鬱のソレに近くあるいはダウナー系の麻薬を大量に摂取したかの如く、彼の周りだけ重力が歪んで沈み行くが如く、世界最強の称号が一切の意味を持たない姿は対局に位置しているようなのに、周囲にとっては見慣れた光景でしかない。

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