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異能部  作者: KAINE
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外れた者の日常その3

 「私は、嫌だ」

 「友達を巻き込んで、私達に襲われた全員の中に間に合わなかった人も居た筈で、それでも嫌だ、私の罪を無理矢理背負わせて、無茶を言って手を汚させて、何時か誰かに私や沈華が後ろ指刺されて、後ろから討たれる事になっても、私は嫌だ」

 「覚悟は有ります、例え私の障壁が消えてもいい、払える対価なら貯金もへそくりも財布の中身も身体も全て払います」


 「ちゃんと正確に理解しているようで何よりだ、冥府魔道だの地獄外道だの有るか解らんがそこに堕ちる覚悟も、何時か後ろから刺される覚悟も有るってなら上等だな」

 「だが、あんまり嘗めた口叩くなよガキが、テメェらの貯金なんぞ酒代にもなるかよ、テメェらの身体に一銭の価値も有るかよ、本気で俺が見捨てない障壁が消えないなんて高を括って、頭下げりゃあ済むなんてのは幻想だぜ後輩、あの時にも言ったろ俺は化け物だ、化け物に人間の道理は通じねぇよ」

 「菜慈美、ドクツルタケだ」

 「乾燥したのなら有るわよ」

 「さて、コイツは俺が今まで死んだ中で死んだ方がまだ楽だった毒物だ、そんなに嫌ならコイツを食いな、来月を待たずに墓の下だ、コイツが嫌ならテトロドキシンか? 青酸カリ? それともヒ素か? テメェだけ助かりてぇってのは都合が良すぎるし楽になりたいってのは解らなくはないが他人様を巻き込むな、まぁこれは俺が言えた義理じゃないがな」


 「全くもってその通りだオーガ、他人様を巻き込むななんてよくもまぁいけしゃあしゃあと言えるな、お前ほど誰かを巻き込んで死にたがる破滅主義を越えた全滅主義者は世界広しと言えど二人と居ない」

 何時の間にか本当に何時の間にか居なかった筈の五人目がそこに居る、そこに居るが居ない、男か女か大人か子供かすら解らず声がして、内容を理解してどんな声をしていたか思い出せない。

正しく異常と言っても大言壮語でも過言でもない異常がそこに居るとしか言い表しようもない、透明人間の様に目に映らない存在、余りにも希薄な存在、もしかしたらほんの少し気を緩めたらそこに居る筈だという確信と言うにはか細い思いすら消えてしまいそうな存在。


 「なんだ居たのかよノーネーム、何か用か? 今見ての通りお取り込み中なんだが?」

 「少しね、あぁ他の皆様は少し寝ててくれ、気にするな此方の話だ」

 「俺にだけ用ってか、なんだ? 性欲溜まったから発散させろとかそういうのか? お前が男か女か判断着かないから事と次第じゃ絶交物だぜ?」

 「相変わらず口が回るなオーガ、安心しろよそんな下ネタやセックスを楽しみに来た訳じゃないし世捨人だがそこまで暇でもない」

 「で? 本題は? まぁトラブルじゃねぇよな、お前にトラブルとか起こらないし」

 「違うね、君が化け物なら私もまた化け物だ、幸いにして人間社会でトラブルには本来はなりえない、奇特にも防御性を捨てて、しかし捨てきれていない君と違って私は常に全面完全防御体制だし」

 「傲慢だな、もう少しばかり謙虚に生きようぜ兄弟、ブラザーかシスターかリトルかビックかは知らんが地球じゃ数少ない化け物同士なんだ、俺が人間様に迎合してやってるんだからお前も少しは譲ってやれよ」

 「御免だね、私と君とは化け物だが同質でも同属でもない、同属はそこに居る子だ」

 「うん? あー、まさかとは思うが三人目の化け物か? それも二人目の精神系?」

 「あぁ、とは言え化け物と呼ぶには少し足りないらしいがな、それでも生まれる前から持ってるのは私と同じで君とは違う、そして一応は望まれて生まれた私と望まれないこの子、私でこうなんだ、行く末がどうなるかは解るな?」

 「最高で自殺、良くて一家心中、まぁまぁで周りを巻き込んで自滅、普通で世界征服って所か、悪くて虫か何か潰すみてぇに災厄を振り撒く」

 「残念だが現時点で最悪の方だ、この世に生まれた先達としては心苦しいし勝手だが自殺を踏みとどまっている今、世界を壊される訳にもいかない、君がそうであった様に変えるのは難しくはないが同属である限りは何時かは解くだろうし付きっ切りは御免だ、それとも君が年がら年中障壁で封じ込めるかい?」

 「それでも良いんだろうがそれをすると後が面倒なんだろうな、全く、ようやく理解が足りない後輩が少しは学んで一歩進むかと思ったのに、この貸しはデカイぞジョンジェーンドゥ」

 「貸しとか借りとかも面倒なだけだがな、まぁ良いさ、そういう契約だしね、じゃあとりあえず彼らの認識と記憶は整合性が取れる様にアフターサービスまで含めてやっておこう」

 「ついでに記録の改竄もしとけよ、病院のと警察の、後は検察とか日記とか」

 「既に終えている、とりあえず摘出は済んだようだし遺体は無縁仏として墓地にでも埋葬、いや、日本だと水子供養だったか?」

 「それも任せたミスターアンドミセスX、俺に言わせりゃカルシウムやらたんぱく質の塊だよ人間だろうが動物だろうが、生きてようが死んでようがな」

 「そんな認識でよく結婚とか考えるね、子供とかどうするんだ?」

 「菜慈美に育児は無理だよ、解ってるだろ? 夜泣きが鬱陶しくなると躊躇なく毒殺するぞコイツは、そんなの野放しにできねぇから近くに置いとくんだよ、当然俺も無理だろうから残念ながら男鹿松平兼守家は俺の代で終いだ、アフリカにアホほど親戚居るから血筋は守られるし妹の方で脈々と紡がれるだろうがな、俺に人並みなんてのが掴める筈もない、掴んでも粉々に砕くのが関の山だ」

 「だろうな化け物、お前はそうやってひねくれたふりをしてないと生きていけないクソだ、そんなクソに一端の幸せなんて訪れる筈もない」

 「特大のブーメランをどうも、鏡って知ってるか?」

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