旅の日常その7
「今更ながらに少し思うんだが、今回の行程はかなり弾丸過ぎやしないか?」
「本当に今更ね、コイツが休み取れるのってほんの数日だし、その数日でしたい様にするにはこれしか無かったのよ」
「まぁ俺は今をトキメク新進気鋭のオージーエーコーポレーションの社長だからな、長期の休みを事前に決めてなきゃ今年は会社の非営業日くらいしか休みは無しだ、コレ終わったら次に纏まって休めるの正月だぜ? 信じられるか?」
「大学でもかなり話題になってるよ、何人かは行ったらしい、一部教授とか俺に口利き頼んできたくらいだしな」
「天文学か宇宙工学辺りの教授か、親父からも来てたな、電話して予約しろとしか言えん、来月には回線増やすから少しは繋がると思うが繋がっても数週間待ちだな、まぁその頃にはもっと成長して数ヶ月待ちになってるかもだが、少なくとも土日祝日狙いなら時間帯にも左右されるが半年先までほぼ埋まってるよ」
「動画の影響なんだろうが飛ぶ鳥を落とすどころか月を撃ち落とす勢いだな」
「あー、それな、個人的には大枚叩いたCMより一円も払ってないどころか料金受け取った動画の方が反響デカイって泣きたくなるぜ、まぁCMの演者さんは知名度増えたって喜んでたが」
「一度ハマると強いよな、視聴者が数万とか確定してるしワールドワイドだ、タレントよりコアなファンも多いしな、その1%でも客になるならそれだけで数百だ、ある程度見ている層が被るとしても投稿者分だけ掛け算だしな、ソイツらがSNSで口コミを広げればそこから倍々式に増えていく、何もしなくても左うちわってのは世の新規事業者から見れば羨ましい限りだろう」
「頼まなくても勝手に来て勝手に宣伝してくれるって費用対効果物凄い事になってそうよね、まぁ私としては収益が見込めて稼ぎになってくれるわけだからありがたい話だけど」
「俺としても社員を食わすくらいの売り上げ余裕ってのは有り難いがな、で? なんだっけか? ……あぁ弾丸ツアーな、別に普通だろ釧路まで飛行機で移動して、バイク担いで生身で札幌まで行って、そこからアチコチ回りながら動くだけだし」
「前提からしてオカシイんだがな、普通は空を生身で飛ばん、まぁかなりスリリングで楽しかったのは認めるが」
「男のツンデレとか需要は稀有だぜ板田、そんなだから家の残念な後輩に描かれるんだ」
「康男、ブーメランって知ってる? あの娘に描かれてるの貴方もなのよ?」
「それについては俺も男鹿も、後ついでに竹田もネタにはしても見ない事にしようとしてる、正直に言って直視に耐えないし叶うなら全て焚書してやりたい」
「完全に同意するね、あんなの全部火力発電の燃料にでもなれば良いんだ」
「そう? 知り合いが出てるのはちょっとあれだけど、中々に面白い読み物よ?」
「そりゃ腐ってるんなら面白いだろうさ、俺らは普通なんだよ普通」
「普通と言うか自分をネタにBL漫画や小説書かれて嬉しい奴ってかなり少ないと思うぞ」
「でもほら、特長捉えつつ美化されてるし」
「俺らを美化とか意味ねぇだろ、素のままでファッション紙の読モくらいなら余裕だぜ?」
「俺は少し生白さを消せば生き生きとして見えるんだろうがだからどうしただしな」
「アルビノ程じゃないけど本当に生白いよな、白人の白さとも違う、何て言うか生気の無い白さ、死体の色って言われたら納得しそうな感じの儚さって奴がお前の肌には有る、本人がアレだから実際儚さは皆無だが」
「アレとはなんだアレとは」
「そういう所だよ板田、儚いと言うには元気モリモリ過ぎる、もっとひ弱な雰囲気出せば腐女子が垂涎で寄ってくるだろうさ」
「なら良いじゃないか、俺は腐りたくはない」