職場の日常その7
今、世界で最も有名な異能者を挙げよと言うならば若干ながら難しいだろうが日本でならほぼ確実に俺だろう、会社の宣伝も予て幾つかのテレビ番組に出演したし放っておいても二匹目のドジョウを狙った動画投稿者が貸しきりで色々とやって投稿してくれる、俺がそれに出演する事はなくても会社の名前くらいは出るし興味がある奴はホームページくらいは見てくれるだろう。
そしてその何割かは社長の理念みたいな、ページを読むしそこには俺の写真も有る、まぁ書いてるのはライターが書いたのにちょっと手を加えた薄っぺらい美辞麗句だが。
そうするとどういう事が起きるかと言うと正直に言って全くの予想外にも異能関係の相談がそれなりに有るっていう謎の現象が在る。
異能者を子に持った親だとか本人だとか、とりあえず前者に関しては俺より親父の所に行けと言いたいし後者に関してもなるようにしかならんとしか言えない、俺は世界最強を謳ってはいるが異能の専門家でもなんでもない、だと言うのに会社の電話に日に数回そんな電話が来るのだ、営業担当からしたら堪った物じゃないし基本的に『お前じゃ話にならん社長を出せ』だ、何様のつもりだと言いたくもなるが神様と答えるのだろう、だったら糞食らえだ、テメェみたいな神様を信奉した覚えは微塵も無いしテメェみたいな神様を信奉する奴も居ねぇ、居たとしてソイツと一緒に墓場にでも入ってろと言いたくなる。
とにかく当社ではそういう事はやってない、政府による公的なダイヤルが有るからと言っても『酷い』だとか『人情味が無い』だとか、本当に何様のつもりだ、俺からは死ねとしか言い様が無いし営業からするとたった数分だか数十分にもっと大事な利益に繋がる電話をできたかもしれないのだから邪魔してんじゃねぇよとしか思わない、と言うか電話してくる連中はアレか俺が全知全能とでも思っているのか? だとしたら相当に頭の出来は悪いらしい、きっと脳みその代わりにオガクズか何かが詰まっていて物事を正確に理解できていないのだろうがホームページにも記載しているし口頭で説明しても理解できない奴はどうやら俺が思う以上に多いらしい、その目と耳は飾りかとも言いたくなる、しかもそういう奴に限って声高にSNSだとかで酷い会社だなんだと悪し様に書き立てている、俺が温厚でなかったらとっくの昔にミンチになってるって解っているのかと問いたくもなるがこれで排斥主義者よりはマシなんだから恐ろしい、奴らは奴らで手段を選ばず色々とやってくれるからな。
正門前でデモをする事数えきれず、夜中に侵入して警備会社から通報が行き警察に捕まる事数えきれず、客のフリをしてやってきて上昇と同時に禁止物を取り出して暴れる事数回、その度に何度警察に世話になったのかもはやパトカーが敷地内に居ない日が無いくらいだ、と言うか常駐ではないがパトロールの際に立ち寄る場所に指定されていて門や受付に警官立ち寄り所のシール貼ってある。
千葉県警にも寄付とかした方が良いのかもしれないがそれをすると金払えば優遇するのかって意見出そうだしな、付け入る隙を与えれば生ゴミに群がるコバエよりも早くワンサカと何処からともなく現れる連中だ、仮に寄付するにしても迂回してだな、なんか不正献金の手段みたいで嫌になる。
とは言え俺に人間性なんて物が欠如しているとして、いやしているのだろうが、それが仕事とは言え物凄く面倒に巻き込んでいるからな、流石に何かしらの形で報いたい、税金はしこたま払ってるんだからそれで良いとは思うがきっと良くは無いのだ、せめて缶コーヒーの一本でも差し入れしたいがそれも難しいだろうし受け取っては貰えないだろう、と言うか異能対策のスペシャリストにも還元したいがアレはアレで持ちつ持たれつだからな、俺の無理無茶は押し付けているが協力も少しはしている、対して地元のお巡りさんには面倒ばかりだ、札付きの悪でも無いのに顔を覚えられるって物凄く虚しい。