職場の日常その6
自営業の良いところはフットワークの軽さに有る、だがそんなのは幻想でしかないと今ならば言えるし仮にそれを認めるとするならば相当に小規模か閑古鳥が鳴いているかのどちらかだ、俺が急に明日休もうかと思っても予約が有るから無理だし休みを作るとしても数ヵ月先になる、それもホームページに何年の何月何日は経営者都合により休みですとか書いてようやく、一日や二日分の営業が無くなる程度で傾くような売り上げではないが物凄く面倒で作るよりも会社が休みの日に合わせて行動する方が楽だ。
そうなると困るのは他の誰かとの予定を合わせるのが限りなく難しいって点だろう、基本的に土日祝日なんてのは客足が止まる事はない、そのため仮に休みを作るにしても土日祝日なら半年は先になるし非難轟々浴びそうだ、別に疲れる様な仕事はしていないが暇なんだよな。
浮かせて下ろしてを繰り返すだけだから合間にテレビ見たり映画見たりはできるし片手間で可能だが佳境って所で意識を割くのはどうにもシックリと来ないし水を刺された感が強くなる。
何もしていないように見えて大事な部分を担うというのは意外にも辛いらしい、何せ傍目には座ってるだけで家に居ても同じ事が可能となる、通信だとラグやハッキングに通信異常への対策が難しくなるから会社に来るしかないのだが日がな一日社長室に籠っているだけだ、目の前のパソコンが示す番号のコンテナを上げたり下げたりするだけで飛ばす時間も下ろす時間も決まっているから多少は動けるが基本的には缶詰め状態、社員を話し相手になんて事も忙しい最中にやる事でもない、と言うか起業当時なら兎も角として今は暇な時間帯すらなくバイトも社員も馬車馬の如くだ、これでバイトも社員も起業当時より10人増えているのだから驚きで辞めた者も僅か数人、俺の想像より遥かに大きくなってしまったな。
プレハブ小屋に社屋という微妙な会社が気付けばやはりプレハブだが社屋も増設しての大所帯か、今から近隣の土地を買ったんじゃ高く付くし、ここから更に手広くやるのはもう無理だな、気付けば近くの道の駅にも客足が増えて土地の相場が上がっているらしい、高々会社一つとも思うが小さな巨人と言うか他にはないオンリーワン故に人気もシェアも独占できる、飛行機を利用した無重力体験とか高い金を払って宇宙まで行ける事業も有るには有るが手軽さと値段の面で遥かにリードしてるからな、最近では海外の観光客も増えている、おかげで自動翻訳機の確保と英語が堪能な奴を雇うのに奔走する羽目になった、人事部に任せる部分でも有るが英語は常に満点読み書き得意ですなんてのは基本的に使い物にならないからな、ほんの少し訛ったりスラング含めるだけで会話が成り立たない場合が少なくないのだ、俺みたいに複数地域を網羅しろとは言わないがせめてクイーンイングリッシュと米英語のニュアンスの差くらいは理解して欲しいし欲を言うならば南部だとか他地域の訛りにも対応してほしい、まぁ最終的には見付かったが、それも数人、人気のある会社で良かったとも思うが人気が有るからこんな手間があるんだよな。
何れにしても本当に大所帯になった、そろそろ土地や建物やコンテナのローンも完済だが次の一手は何も無しだ、俺のキャパシティの問題もあるし手広くやっても良い事なんて何もない、せいぜいが市や県に寄付してここまでの道路とか優先的に整備してくれって用途指定するくらいだが電車に関しては鉄道会社が勝手にやるだろう、既に準急ダイヤを新たに組もうかという話も出ているらしい、地元民からすると九重より館山に止めろよとも思うが経営者としては乗り換えを考えると九重に止まってくれた方が都合が良い、今は東京行きの特急だけだし本数も少ないからな、どうしても不便だ。これが準急が生まれるとなればかなり移動が楽になる、まぁ駅からは20分近く歩いて貰うし途中は上り坂だから実質30分は掛かるのだが、最近送迎バスも良いかななんて考えているのだが許可とか面倒なんだよな、運転手も雇わないとだし丸投げにしても最終的には全容とまでは言わなくても概要くらいは理解していないと経営者としてはダメだろう。
当たり前だが誰かに何かを問われた際に常に広報や担当が居る保証は無いんだ、詳しい話は解らないが解らないなりに解るところだけでも説明できるのと、何も解らないのとでどちらの印象が良いかなんて考えるまでもない、理想を言うならば完璧に理解している事だが何もかも掌握なんて面倒でならないし俺の仕事は上げ下げとトラブルを力任せの除去と最終的に責任を持つという三つくらいが関の山だ。