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異能部  作者: KAINE
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新入生

 入学してすぐに行われる新歓期間、各部活が朝礼時に新規部員を求めて出し物をしつつ4月の終わりまで練習そっちのけで勧誘と見学者や体験入部の募集、それと平行して文化祭の出し物を決めて提出と毎年毎年この時期になると各部員部長共に大忙しである、しかし今年新入生の深井沈華にとっては関係が全くない、と言うのも彼女が異能という力を持つが故であり部活だとかに一切のやる気や情熱を持てないからだ。

 能力に関わらず、文武に関わらず、異能者はあらゆる競技の公式大会に参加できない、そもそも異能者は申告登録制の時点で排除なんてできるはずもないし例えば彼女の様に犬だとか猫だとか虫だとかの遺体に命を吹き込む能力と書道とか剣道とか徒競走とかにどう関連するというのだ、だと言うのにだ、各団体は異能者排除を謳う、曰く平等性に欠けるのだと言う。

これはまるっきりオカシナ話でボクシングにしろフェンシングにしろ、サッカーや野球、競泳、茶道華道書道算盤、それらを競技化しているならば当然ながら優劣が出る、勝敗という形で必ずだ、例外的に引き分けとか反則敗けは有るが、そして大前提として平等なんて最初から存在しない、体格が違う、体重か違う、身体能力が違う、技術が違う、道具が違う、作戦が違い所属もコーチも全員が全員異なる、階級分けをするにしても例えば昨日今日の新人と幼い頃から父や親戚のジムで鍛えた者を同じ盤面で戦わせるのだ、ソレの何処に平等が有る。才能も何もかも誰一人として似通いはしても同じが存在しないのだからそこに異能という何かが加わったとしてもなんの問題もない、問題ないが彼らに言わせれば異能で反則をしても気付かないの一点張りで上手く反則する選手だって居るという点に目を向けようともしない、かつて神の手でゴールを決めたスーパースターだって居る、しかし異質だからと除外する。


 そして非常に残念ながらこれは世界基準で罷り通る、異能という存在が世に知れておおよそ数百年、いまだ理解からは程遠いのだ。

 そんな理由でモチベーションを持てない異能者は多い、どれだけ練習してもどれだけ鍛えても大会には出れないし下手をすると練習試合にすらだ、例えば深井沈華が徒競走でどんな反則ができる、せいぜいが蚊とか蠅とかに背中を押してもらうくらいでコンマ01秒もタイムは変わらないだろう、しかし学校の身体測定ですら参考記録になるのだ、最近になってようやく異能者向けの競技団体も完成したが日本だと約二千人に一人という確率は学校という狭い空間だと二人居れば十分に多く一人でもレア、大学規模でようやく三人が見えてくる、たった三人で可能な競技なんて限られるだろう。


 「はいー、いらはいいらはいー、寄ってらっしゃい見てらっしゃい、遠からん者は音に聞け、近らば寄って目にも見よってね、我ら異能部、異能かそうじゃないかなんてミミッチイ事は気にしない、そんな洒落臭い物は溝にでも捨てちまって相互理解をってのが部のコンセプト、ってのは表向きで大抵は茶でも飲んで本読んで、テスト前にはこの学校一の秀才と学校トップクラスの才媛が手取りナニ取り面倒見てやれる、その上に何を隠そうこの私は異能をその身に宿した男でして同じくもう一人もまた、質問疑問なんでもござれ、話によっちゃあ相談だって乗るし手だって貸せる、さぁーいらはいいらはいー」

 校門前で怪しい物売りの如く口上を上げる男子生徒、バスケ部顔負けの長身にそれなりに筋肉質らしいがゴツくはない巨体と言うより長身、浅黒いを通り越してチョコレートの様な肌にツルツルの剃髪頭、大量のチラシを自分の回りに浮かせて新入生の呼び込みをしていた。


 それは場違いとは呼べないがしかし浮いてはいる、新歓と言うならば正しく新歓なのだろうが言葉通りならば少なくとも二人の異能者が居る部活だ、テロリストの様な極端な排斥者は少なくとも異能排斥派の多い世の中でコレとは物凄くバカをしているようにしか見えない、今という過渡期を越えるならば理解も広がり状況も好転して来るだろうが今という世ならば周りがそうである様に白い目怪訝な目、侮蔑の目、だと言うのに気にした風もなく口上を繰り返しつつ道行く新入生の眼前にチラシを浮かせて嫌でも見せるという行為を続けていた。

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