夏の日常その4
「んー、俺は豚モダンとゴーヤチャンプルー、それにジンジャーエールで」
「私はミックス玉とコーラ、後唐揚げで」
「俺は豚焼きそば大盛とポテトフライと烏龍茶を」
「うーん、私は豚玉とゲソ焼きと烏龍茶で」
「リリーはエビ玉と枝豆とオレンジジュースお願いします」
「サラダ二つノンドレッシングと冷奴と納豆、それに烏龍茶を、後ゆで卵って有りますか?」
海を離れて帰宅途中、とりあえず目に入った鉄板焼き兼お好み焼き店に入り夕食を注文する、一名程筋肉のための食事を所望しているが残りの四人は特に気にする事も気を使う事もなく普通に注文する、既に言質を取っているというのも有るがそもそも学生だと流石にボイルした鳥胸やサラダでは腹は満たされても物足りなさが勝つだろう。成長過程で栄養面的に大丈夫なのかという疑問も無くはないが彼女の場合、これ以上成長してどうするという程に体が出来上がっているしビルダーとしての栄養管理は慣れている、本当ならチートデーに合わせたかったのだが日程がどうしても合致しなかった、もう2日早ければ同じメニューでも良かったし大会がもう少し先ならばやはり同じメニューで問題なかった、まぁせっかく食べられる日に好物以外はどうなのかとも思うが友人との食事という点を加味するならば補って余りある。
とまれ、サラリーマンや家族連れに混じって学生グループだが変に浮くという取り合わせではない、それこそ部活終わりに利用する層も珍しくもない筈なのにチラチラと目線を感じるのは美男美女揃いだからか、筋肉の塊が居るからか、日焼けというには色の黒いのが居るからか、西洋人形の様な少女が居るからか判別が付きそうにない。
とにもかくにも目立つ事は確かで物珍しいのも確かだ、日常の中に異物とは言わないまでも突出した何かが放り込まれれば大抵の奴の目は釘付けでは無いにしても二度見三度見はするだろう。
これが地元お膝元ならば見慣れた光景とスルーされそうだが5駅も離れれば流石に物珍しさは有るだろう、地元じゃ有名でも世界級か国単位か県単位か町単位かで話は変わるが彼らの場合は現状で町単位でしかない、それなりに離れれば又聞きの又聞き程度の風の噂ですらない、記憶の片隅に残るかどうかというレベルでしか知られていない、それも万人では無いのだから目立っても仕方がないし知れ渡っているならばそれはそれで目立つだろう、残念ながら彼らの場合、何をどうしたって目立つのだ。
熱々の鉄板に並べられるお好み焼きと焼きそば、そしてテーブルの端に狭そうに並べられる皿達、一部はまだ来ていないがシェアしながら適当に食べていれば遅からずだろう。
「うわっ、苦っ、先輩こんなの良く食べますね」
「そりゃゴーヤは苦いよ、って言うか苦くないゴーヤとか完熟でも無ければお目にかかれないだろ」
「ちょっと待て男鹿、ゴーヤに完熟とか有るのか?」
「有るぜ、先ず種が赤くなるだろ、身が黄色からオレンジになるだろ、んで甘くなる」
「少し食って見たくなるな」
「あー、追熟ってしたんだっけか? 生った状態でないとダメとかどうだったかな、どうしても食いたいなら育てりゃ良い、普通に食っても旨いしな、夏場とかならバテるなんて事も無くなる」
「ふむ、一口……食えないって程じゃ無いが好き好んで食べる味ではないな、流石に毎日ゴーヤチャンプルーとか厳しいぞ」
「糠漬けとかも意外と旨いぜ、爺さんの家に古漬け化した奴も有るが癖になる、まぁ俺と親父とお袋と爺さんしか食わないから古漬けになってるだけなんだが」
「少し興味が湧くな、機会が有れば持ってきてほしい、後奈良漬けとは無いのか?」
「持っていくのは構わんがな、奈良漬けもあるがゴーヤはやってなかったんじゃないかな、うん、俺も食って見たいしメールしとく、って言うか帰り道だし顔出しとくか」
「菜慈美先輩は食べてみないんですか?」
「お断りよ、二度と食べないと誓ってるの」
「前に食ってからダメなんだそうだ、俺的には残念だがな」
「リリーは苦いのダメなんで最初からNOthank Youです」
「まぁそれは見た目から予測着いてた」