夏の日常その1
燦々と降り注ぐ直射日光、真っ白い砂浜と広大な青い海、夏の定番と言えば定番で、後は花火大会とか夏祭り辺りが夏の思い出として定番だろう、他を上げるとするなら肝試しくらいの物だが心霊スポット巡りは場合によっては不法侵入がセットで着いてくるし精神衛生上もよろしくない。
非科学的な呪いではなく極めて心理学的な思い込みによる自縛は起こりうる、仮に霊魂の存在を認めるとしてエネルギー保存の法則が有る以上は死んだ時点で総量が目減りするだけの存在と体調やら気合いで変動する、なんならパワースポットとやらに行くだけで全快する存在と、綱の引き合いをしてどちらが勝つかなんて子供でも解る。
胡散臭い霊能者に言わせればそれだけ恨みが深いとか、恐れやケガレを吸って大きくなるのだだとか言い出しそうだがそれならそれで神道から理論を引っ張ってきて奉る事でなんとでもなる、科学には科学を理には理をオカルトにはオカルトでもって対抗してしまえば呪いだなんだは紙くず程度の価値もない。
とまれ、夏だ、海だ、とくればもうやる事は決まっている、一昨年も去年も今年も来年も再来年も夏は待ってくれないと言うならば存分に満喫して楽しむのが作法というものだ。
「いやぁ、普通はさ、若い男女で海とか来たらさ、キャッキャウフフのオンパレードだと俺は思うんだ、それが様式美って奴でお約束で、深夜アニメ辺りならポロリだって有る」
「言いたい事は解らないでもないがな、世のお父さんがそうしているように男ってのは子供の面倒見るとかの理由無いならナンパ避けと荷物番ってのが関の山だ、女子達の水着拝めるだけでありがたいんだろうさ」
「お前それアレ見ても同じこと言えんの? ねぇ言えんの? だったら言って見せろよ、なぁ?」
指差す先には筋肉の鎧、足の先から手の先まで首も太股も腹筋も背筋も胸筋も腕も首も肩も、メリとハリの二文字がチラつくがグラマラスなボンキュボンとはかけはなれた鋼の肉体、特に鍛え上げずともその領域に足を踏み入れる少女は人目も気にせずビキニで何時もの様にポージング中だ。
周りの『なんだあれ』『スゲーもん見た』って目線を知っていて慣れた物だと気にも止めず、その若々しい肢体を存分にさらけ出す。
「いや、うん、ほら影野君はちょっと特別だから」
「俺思うんだが別に俺らナンパ避けに使わなくても良いんじゃねぇか? そりゃあ菜慈美も後輩も見てくれは良いしスタイルも良いがな、書記ちゃん一人でナンパ野郎遠ざかるって、リリー? アイツにナンパするようなのはお巡りさんが放っておかないから大丈夫だ」
「それでも女性陣だけってのはよろしくないだろう、そもそも鴨川まで電車でも来れるが車の方が何かと都合もいい、免許持ってて車まで有るんだ、宿命だよ男鹿」
「いやまぁ、足に使われんのは慣れてるが流石にクラスメイトと後輩引き連れて海まで来るとは思ってなかったな、って言うか副会長君どうしたの? 結局待ち合わせ場所に来ないし連絡着かないから先に来たけど、連絡有った?」
「風邪だそうだ、写真だけ送ってくれと頼まれた」
「よし、じゃあライフセーバーのお兄さんの写真しこたま撮って送ってやろうぜ」
「その場合は深井君が興奮するが良いのか?」
「前言撤回だ、普通にビキニガールズで行こう、しかし彼もツイてないな、竹田のが移ったか?」
「だとしたら早急になんとかしないと不味いぞ、竹田だからあの程度で済んでるが普通の奴なら最悪死ぬ」
「まぁオカルトとか、信じちゃいねぇが死神と貧乏神と祟り神に取り憑かれてますって言われたら納得するレベルだしな」