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異能部  作者: KAINE
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家族の日常その2

 幸いにして、その力を持って傲慢な支配者とならず、多少の身勝手さは有れど法を軽んじる事は有れど、己の中の規律はしっかりとしているらしく野放途にあっちやこっちで暴れまわる事もなく、無頼に無体を働くという事もしない、その気になればそれを可能として、咎められようと何処吹く風を通せる、無理も道理も灰塵に帰して人理も道徳もなく過ごせるだけの力を持ちながら、それを発揮するのは自分や周りが(おびや)かされたか何かしら必要な物が有るかのどちらかくらいだ。

 一つでも有ればそれは無法者と変わらないと言われればその通りだが、前提として全て無視できるのにしないのと、気にしていないのとでは大きく異なる。

シリアルキラーも大量殺人鬼も古今東西枚挙に暇はないが捕まらなかったのはそれほど多くはない、捕まる前に自殺した例を除くならば逮捕されなかった殺人鬼で有名なのでジャックザリッパー以外を挙げよと言うのは調べでもしない限り難しいだろう、後はせいぜいが軍人として戦争に従事して殺人を犯した人物くらいだろうか、倫理観もなく欲求を満たすためか他に理由有ってかは知らないが人を数人数十人と殺して捕まった過去の犯罪者と息子とでは本質が全く違う、彼らはその気になれば世界もろとも壊せた訳ではないのだ、町を壊す、国を壊す、大陸を壊す、世界を壊す、それらを兵器すら用いずに一瞬で可能とする奴がその気になればソイツの傲慢は是となるだろう、全てにおいてソレは許される、いや許されると言うのは違うか、許されないし咎められない訳でもない、ただ捕まえる手立ても倒す手立てもないというだけだ。


 対して過去の捕らえる事ができた犯罪者達は、その手立てがあった、証拠は必要なのだろう、地道な操作が実を結んだのだろう、それでも最後に裁けた、だが違うのだ、書類の上でなら裁けるだろう、紙の上なら刑を執行する事も可能なのかもしれない、或いは寝込みを襲うなり毒を盛るなりして殺す事も普通なら可能だろう、だが決定的に違うのだ、そんな普通の古今東西枚挙に暇はない好き勝手を許されたが最後には逃れようのない死を待つ独裁者とは格が違いすぎる、死なないという事実が、どれ程の距離を隔て分厚い壁でも防げないという異常が、何をどうしたって必ず報復があるという決定事項が、過去のどんな文献を読み漁り、アレクサンドリア図書館をも凌駕する蔵書を全て読んでも英雄や犯罪者、為政者、独裁者の中にこれ程までの個人として所有する攻撃性と防御性を両立させたのはおそらく神くらいだろう。

 例えば人種も国籍も宗教すら越えて、目が見えずとも耳が聞こえずとも、赤ん坊でさえも、そこにいるのが紛れもなく、間違える余地すらなく、万人全てが『神』とする者が居たとして、ソイツが誰かの家に強盗に押し入って家人を殺害し物を奪いあまつさえ火まで放ったとして、それを咎める事ができるだろうか、それを捕まえる事ができるだろうか、それを裁く事ができるだろうか、それに刑を執行する事ができるだろうか『神』を人の法で縛る事ができるだろうか、息子は神ではないが本人の言葉通りならば化け物だ。

化け物が人の皮を被り、注意深く手加減して人の法に人の理に人の道に合わせているのが息子だ、一度その外面を投げ捨てれば化け物の法に化け物の理に化け物の道で動く、それが化け物にとって至極当然でそれにとっての普通なのだ、それをわざわざ手間を掛けて気を使って封じているだけの事。


 無理矢理に当て嵌めてまで人として生活しているだけで、本質は違う、それを心底理解できるならば観察はしても手出しをしようという気にはならないだろう。ならないだろうに何時でも何処でもバカは居るのだ、わざわざ猛獣の檻の中に手を突っ込んで勇気があるとか、格好いいとか思ってるバカが何時でも何処にでも居るのだ、気分一つで腕を無くす事になるだけで、偶然たまたまそんな気分だから見逃しただけで、次も同じとは限らないその蛮行をバカの一つ覚えで何度となく行う奴は居るのだ。

 飼い慣らされた獣でさえ、非常に注意深く扱う必要があるというのにそうですらない獣にそんな事を何度も続ければ結果がどうなるかなんて子供でも解る、それでも身の危険とかそんな物は無視して勇気を示すためとかその場のノリとかでやらかすバカは居る。

だが獣と化け物は違うだろう、刺激して良いことなんて一つもない眠れる化け物を起こすというのは蛮行ですらない、ただ頭が悪いだけだ。


 そんな化け物も家族を持つ、家を持つ、だから少しは落ち着くなんて法も道理もない、むしろ家族を持つのだ、今までも持ってはいたが本質的に異なる、自らがコミュニティの一員ではなく自らでコミュニティを作ったのだ、家族をは大事な物だ、掛け替えのない物だ、それを犯す者が居るならばそのコミュニティに属する者は牙を向くだけではない、化け物なら尚更だろう。


 「親父長い三行で頼む」

 「叔父様長いです文章でお願いします」

 「いや、僕かなり真面目にこれからは気を付けなさいよって語ってたつもりなんだけど軽すぎない?」

 「言いにくい事言いますけど、生まれてからコレの側に居るんだから重々承知してますよ? 今さら感が半端ないです」

 「だよな、化け物は認めるし頑張って合わせてんのもそうなんだろうけど、昔ならともかく今はストッパー着いてるから世界壊そうとかしないよ?」

 「うん、昔思ってたって事実にかなり恐怖してるんだけど、とにかく家族を大切に思うなら軋轢は起こさないように、これからは多少なりとも矢面に立つのも喜んでやるけど難しくもなるんだから」

 「後、間違いなく前半の親父の半生とか出自とかいらなかったんじゃねぇの?」

 「途中の殺人犯云々もいらなかったと思います」

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