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異能部  作者: KAINE
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受験生の日常

 その門は潜ろうと思えば誰でも潜れるだろうが、その学舎で学ぶにはかなりの倍率を越えて己の学力を示さなければならない、各校の最優秀生徒が出揃うような、ガリ勉か天才か、何れにしても並みの学力では入学が許されず、潜り込む等の例外を除くならば受講できない。

 生来のあがり症という程では無いが、試験等では緊張からミスをしがちな彼がなんとか試験を無事に終えたのは友人達のサポートが在ったからか、それとも克服したか、どちらにしても自己採点的にこの門を潜れるかどうかはかなり微妙だろう、浪人するつもりは無いため併願で三つ程増やしたが私立はほぼ確定、国立もラインを越えていると見ている、目下の問題は線の上で反復横飛びか平均台の上で目隠しして歩いていると思える此処だけだ。

 Web上と紙面での合格発表まで残り1時間を切り、気分だけでも盛り上げようと門を前に佇むがどうにも悪い未来ばかりが見えてくる、この門を潜る自分が想像できないしそもそも着いていけるかとか不安も募る、軽薄な友人に言わせれば『なるようにしかならない』とか言い出すのだろうが起業で忙しい中でも模試やらに付き合って貰った手前、叶うならば良い結果を報告したい、だと言うのに脳裏を巡るのは悪い結果ばかりだ、何時だったか下ばかり見ていてはいけないと言っていたのはジョンソンさんだったか、上を見たら鳥に糞を落とされるのインパクトが強すぎて記憶がアヤフヤだ、彼は彼で指名されて来年の春から野球人だが入団早々に何かしらやってくれそうで怖い、少なくとも現役中にスパイクの紐を切った回数とかで記録作れるんじゃないかと冗談みたいに言っていたがグラブとかベルトとかでも記録作りそうだからな彼の場合は。


 発表まで残り30分、時間が過ぎるのが酷くゆっくりに感じて吐く息の白さがより濃く見える、そろそろ発表の張り出し場所の近くに移るかと何度目になるのか数えるのもバカらしくなるくらいに見た自分の受験票を確認する、何千何万回見てもその数列が変わる事なんて有り得ないし急に鞄に穴でも空いてクリアファイルと共に消えてなくなるなんて事も無いのだが緊張から無意味な行動を取っている、気の早い受験生ならもう並んで今か今かと待っているだろうし自分もその群れに加わる事になるのだがよく平気な顔をしていられるものだ。

 いやもしかしたら内心では吐きそうなくらいに緊張しているのかもしれないな、俺だってとりあえず今すぐにでも朝飯吐きそうな気分だが顔色は鏡でも見ない限り青いかどうか解らないしそもそも自分でも思うくらいに病的に白いからな、何時でも何処でも体調が悪そうに見えなくもない、親とかは表情見れば解ると言うが生憎と鏡は持ち合わせていないし自撮りができるような雰囲気でもない、かと言って適当な女子に声を掛けて手鏡を借りようなんて気分でもない。

男鹿辺りならナンパついでにやってのけるだろうがアイツは緊張とは無縁の男だからな、せいぜいが音矢君の作った料理を前にした時くらいか。


 ほんの僅かながら気が晴れたが残り10分足らず、何度も腕時計を確認したり、受験票を見たり、合格祈願のお守りを握り締めたり、そんな少しずつ余裕を無くして緊張感を漂わせる周りに呼応して息を着いたのもつかの間だな。

 秒針が止まって見える程の時間を過ごし、周りも今にも吐きそうな顔の奴が増え出す、両手を組んで祈る者も全ては出しきったとでも言うように鷹揚に構えている者も居るが余裕が有りそうなのは一握りだろう。


 職員が抱えた紙を板に張り出し我先にと群がっていく、己の番号を早速見付けた者も居るだろう、何度見返しても無い者も居るだろう、人の山を掻き分けてなんとか見える位置に到達して探す。

 と言っても番号順に並んでいるためおおよその位置は特定できるが数列が羅列されているため目が滑る、受験票と何度も照らし合わせてようやく張り出された番号と受験票の番号が合っている事を確認してガッツポーズでも取りたいがこんな人だかりの中だと迷惑でしかない、場所を明け渡すようになんとか抜け出してようやく握り拳を作った。

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