西岸高校の日常その6
「さて、板田、お前どの程度までやれる? 俺はお湯沸かすのがやっとだ、インスタントとレトルトがお供だな」
「チャーハンとカレーくらいならなんとかなるがな、期待薄だ」
「となると菜慈美と島谷さん頼りか、いや島谷さん頼みだな、菜慈美お前は何もするな、何かするなら俺の許可取ってからにしろ、もしくはお前の制服のポケットと異能で引き寄せた毒を使うな、それが守れるなら自由だ」
「安心なさい、アンタの分にしか入れないようにするから」
「音矢君、それだと安心できる要素が一欠片も無いんだがな、今日はガス爆発起こしそうなのが居るんだ、これ以上のトラブルの元は回避したい」
「安心しろ板田、奴のグループには俺が厳重なる防護を張っておいた、いくらアイツの力が強くとも俺の力に対抗できるとは思わない、むしろ対抗したらマジモンだよ」
「あの、って言うか私あんまりお料理得意じゃ無いんだけど」
「詰んだ」
「いや毒云々抜きにした場合音矢君の料理の腕はどの程度かで決まるぞ」
「毒抜きで? 私に? そりゃあ得意だけど毒入れちゃダメなの?」
「君に倫理観とか……有ったら道徳で赤点取らないか、解った、男鹿に毒盛って良いから指示を頼む」
「ワーオ、コイツ小を犠牲に大を生かしやがった、それが元会長のやり方かよ、お前やっぱ政治家に向いてるわ」
「嬉しくない評価をどうも、さて、そろそろ始めよう、我々くらいだぞまだ玉ねぎの皮すら剥いてないのは」
「じゃあまず玉ねぎの皮剥いてみじん切り、その間にお湯沸かして昆布ぶちこんでおいて、康男、アンタはレタス洗って手でちぎって、ついでに涙成分ガードね」
「YESMa'am」
「ワカメ戻しておいて、あぁ、物凄く増えるから一人一摘まみ分くらいね」
「と言うとこのくらいか、増えると言うが倍くらいか?」
「その程度で済めば良いわね、乾燥ワカメを舐めちゃダメよ、10倍くらいになるわ、ティースプーン一杯でけっこうな満腹感得られるくらいだし」
「……調子に乗って入れすぎるとホラーじみた光景になりそうだな」
「あぁ、ワカメ入りのスープとか少量だったのにけっこう満腹感有るくらい増えるよな、納得だ」
「ってなると竹田君の班が絶望に顔染めてるけど、あれ大丈夫なの?」
「どうみても一掴みは戻してるわね、味噌汁が緑に染まるだけでしょ、最悪キュウリとワカメの酢の物にでもして運動部の口にぶちこめば良いわ」
「ほいサラダ完成、ついでにハンバーグ種仕込んだぞ」
「なんだかんだ良いながら出来てるじゃないか」
「そりゃあレシピ見てるからな、グラムとか異能でどうにでもなるし、後は他班の動きを模倣しちまえばこの程度は軽い」
「相変わらず万能だな、お前一人で家事全般が楽になりそうだ」
「実際楽よ、大掃除の時とか棚とかベットとか浮かして数十の雑巾が空を舞うわ」
「便利だな、本人は微動だにしてなさそうだが八面六臂の活躍できるってのは異能の特権と言える」
「その特権の対価に頭おかしいのに命狙われるがそれでも欲しいか? 面倒だぜ毎度毎度入れ替わり立ち替わり」
「欲しいとは言ってない、便利だなと言ったんだ」