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『俺』が『私』になるまでの成長記  作者: 羽鵺
第一章 『私』が『 俺』になるまで
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7.『私』の武器と師匠の過去


座学を終えて、師匠にステータスを見せてほしいと言われたので頷く。

少しソワッと嫌な感じがした。

師匠曰く、この嫌な感じは他人の魔力が無理矢理自分の身体に流れているかららしい。

魔力探知のスキルを持っている人は、誰かに鑑定されたらレベルが高い程強く感じる。

そして、鑑定スキルは特別スキルなので会得が難しく、魔力操作が下手な人にされると酷い吐き気を起こすらしい。


ある程度見終わったのか真剣な表情からニヤニヤ顔に戻し、外に出るよう指示が出される。



「今日から武器の扱い方を教える!今のステータスの内容から、レインは体術等の身体能力を活かす物が良いね」



そう言って、師匠が持って来た"マジックバック"という鞄の中から武器を取り出していく。



「よし、こんなもんだろ。レインにはこれから、短剣・弓矢・暗器全種を覚えてもらう。それと、特訓中に土壇場で覚えた棒術も基礎を叩き込むからな!」



後、将来使いたい武器を見付けたら私が教えてやるよ!と言って、ニヤニヤ顔のままグッと親指を立てる。

顔が腹立つが有り難い。

因みに、私が会得した棒術のスキルは、特訓中に師匠から攻撃され吹っ飛んだとき、咄嗟に近くにあった箒で師匠の蹴りを受け流して会得した。

自分の動きに自分で驚いたのでハッキリと覚えている。

武術や魔力のスキル会得条件は基本基礎をちゃんと学ぶ事だが、稀にこのように会得できるらしい。


実際に手に取って見ると、見た感じは軽そうだったが意外とズッシリくる。

師匠に教えてもらいながら構えて、丸太を的にして基礎を叩き込む。


≪熟練度が一定に達しました。技能スキル「短剣術Lv1」を会得しました。≫


そろそろ腕が上がらなってきた時、タイミング良くスキル会得の知らせが来た。

師匠に会得した事を伝えて休憩に入る。

武器の扱いは使い慣れないと身体の負担が大きく、人それぞれに合う動き方があるので基礎だけ教えてもらう事になった。

休憩が終わり、武器の手入れの仕方を学んだらいつもの特訓を開始する。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




一日分の修業が終わり疲れた身体を休ませる為に眠りに就いたが、喉が乾き真夜中に起きる。

リビングに入ると、師匠が椅子に座って何かを手に持って見ていた。

少し驚いた様に此方に顔を向けた師匠は、苦笑しながらどうした?と聞いてきた。

寝ボケながら水…とだけ言った私はキッチンに行き、コップを使うのが面倒なので手を器にして飲む。

混合魔力で温風を出して手を乾かし、そのままフラフラと自分の部屋に戻ろうとした時、師匠が此方来てと手招いてきた。

師匠の向かいの椅子に座り、どうしたのかと首を傾げる。



「全く、無意識に気配を完全に消していたから驚愕したよ。それに、一緒に暮らしていたからか私に似てきたなとは思っていたが、ズボラな所まで私に似なくて良いのに…」


「………自覚あったんすね」


「喧しい」



ため息混じりに言う師匠にツッコむと、ペシッと額を叩かれる。

本当の事を言ったのにと顔に出さずムッとして額を擦っていると、苦笑いをしながら此方を見ているので気付いているのだろう。



「……そう言えば、師匠は何で此所で暮らしているんですか?」


「え、今頃?」



聞くタイミングが無かっただけでずっと気になっていましたと言えば、呆れた表情をしながら教えてくれる。



「私は魔獣と魔の森を調査する為に、此所で暮らしているの」


「魔の森?」


「アレ?教えて無かったっけ?」


「魔獣と魔物の違いの事は教えてもらいました」



そう言うと、師匠はアチャーと言って手を顔にやる。


魔の森とは、穢れた魔力が集まる森らしい。

まず、この世界に暮らす種族、人族・魔族・獣人族は四つに別れている大地にそれぞれ暮らしている。

一般の世界地図で見て、左側の大地を人族、真ん中の縦に並んだ二つの大地を獣人族、右側の大地を魔族が暮らしている。

面積は、人族と魔族が同じ位で獣人族が一番小さい。

魔の森は四つの大地に必ず有って、魔族の大地が一番大きい魔の森を持っている。

此所は魔の森だけがある、人が住めない島らしい。



「今から話すのは私の昔話だ。聞き流しても構わない」


「……………」


「私には最愛の夫と息子がいた。魔族最強で最凶な魔導師として畏れられていた私を、普通の女性として見てくれていた唯一の人だった」



懐かしむ様に、掌にある大きさが違う三つのリングを見ながら言う。

話の内容と師匠の雰囲気から、二人は亡くなったのだろう。てことは、あのリングは形見なのかも知れない。



「ある日、私は王直々の指定依頼で此所とは別の魔の森へ行っていた。夫と息子は一番弱い魔獣がいる平原に行って、修行をしていたんだ。その時、居る筈がないSS級の魔獣が発生して夫と息子、他にも少なくない人数が亡くなった」



私は何故そんな事になったのか、自ら王に調査したいと申し出て此所にいるんだと言い、目を伏せた師匠。

話を最後まで聞いた私は、師匠は二人に愛されていたんだなと思った事を言った。

私の言葉を聞いた師匠はポカーンと呆けるが、それを無視して続ける。



「だって、師匠は二人の為に此所にいるんだろう?それって二人から愛されていないとしないよ。てか、私はしない」



そう断言をすると、師匠は徐々に身体を震わしやがて爆笑し始める。


何だ、等々頭がイカれたか?


首を傾げていると、乱暴に私の頭をワシワシと撫でてきた。







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