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『俺』が『私』になるまでの成長記  作者: 羽鵺
第一章 『私』が『 俺』になるまで
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13.『私』は『俺』になる

第一章は此処までです!


師匠が蹴り開けたせいでギシギシ鳴っている扉を閉めて、部屋の真ん中の手前にある、低いテーブルを挟んで対面しているソファーに三人で座る。

此処はギルドマスターという、この自由なギルドの冒険者たちを纏めている人の部屋らしい。

シェルさんはそのギルドマスターな様だ。



「それで?アンタが態々私にその子を紹介するって事は何かあんの?」



腕と脚を組んだシェルさんは怪訝そうに師匠に聞いた。

師匠は隣で座っている私の頭を軽くポンポンと撫でると、この子はフレイの子だと言った。

それを聞いたシェルさんは驚いた表情をする。



「フレイの子!?フレイは人族なのよ!何でこんな所に……フレイはどうしたのよ?」



その言葉に、師匠は言い難そうに苦笑して私を見た。

師匠の様子を見たシェルさんは何かを思い付いた様な顔をして、すまなそうに眉を下げて私を見る。

そんな二人の表情に、私は一切取り乱さなかった。

意識を取り戻して、父さんとの最後のやり取りを思い出した時から覚悟はできている。

それに………



「師匠が父さんを探してくれていたのは、なんとなく気が付いていました。父さんとの別れ際の会話で、父さんの身体がもう保たない事も察しています………話して下さい。私は父さんの最後を知りたい」



私の想いを師匠に伝えて聞く体制を取る。

覚悟が伝わったのか、師匠は顔を引き締めて話し出した。


師匠には人族の友人がもう一人いるらしい。

その人に調べてもらって父さんの"最後"が分かったのだ。

父さんは海辺で倒れていて、発見者によるとまるで眠っている様に穏やかな顔をしていたので、最初は起こそうとして触ったら亡くなっている事に気が付いたらしい。



「噂では、フレイの家族がフレイがいた場所を不審に思っているらしい。私は一度だけフレイの家族に会った事があるんだが、凄く良い人たちで全員が人情家なんだ。だからこそ、レインのあっちでの暮らしを聞いた時、あの家族が何もしていない事が不思議だったよ。これは私の予想だが、レインの母親だった奴がフレイのリングピアスを狙っているんだろう」



その為に、フレイに不審にならない程度に監視付きで手紙を出させて、レインの事は死んだ事にした可能性があると師匠が言った。

私は十一歳の誕生日を迎えてから、師匠に少しずつ父さんとの思い出を話していた。

その私の想い出話と、調べた結果を照らし合わせて予想したのだろう。


そうか……父さんの家族は良い人たちなのか……。

父さんは私の前で一切自分の家族の話はしていなかったので、今初めて知った。



「師匠」


「なんだ?」


「私…今日から男として過ごすよ」


「ちょっと待ちなさい、この流れでどうしてそうなるのよ?」



私の発言にその場の暗い雰囲気が一転して少し明るくなった。

結構良い案だと思ったんだけど……何か駄目だったのか?



「ちょっと、この子大丈夫なの?私の質問に不思議そうな感じで首傾げているんだけど?」


「ハッハッハッ、此奴の発想はいつも斜め上を行くからなぁ。慣れって恐いね!」



空笑いしながら言った師匠に、シェルさんは顔を引き攣らせた後溜め息を吐いて頭を抱える。

直ぐに気を引き締めたシェルさんは、どうしてそうなったのか最初から最後まで話なさいと言ってきた。

まず、自分の身を自衛できるまで、母親から身を隠した方が良いと思った。

あの母親は、もしあの暗殺者が失敗を隠していても、父さんがピアスを持っていない事で私が生きていると気が付くだろう。

あと母親は私の前で、男で産まれたら使い勝手が良かったのにと、何度も愚痴を零していた。

なので母親は、私の見た目を細かく覚えていなくても性別は覚えている可能性があるのだ。


そこまで説明すると、二人は納得したように頷いた。



「なるほど、確かにそれなら良い目眩ましになるな。目はそれをずっと巻いていたら分からないし、髪色は空間魔属性の証と言えば納得するだろう」


「貴女とサクラの話に突っ込みたい事があったけど、取り敢えず今は置いとくわ。それにしても、よくそんな事を思い付いたわね?」



驚いた様に首を傾げるシェルさんに、シェルさんの男性になった話を聞いていたおかげですと言う。

あの話を聞いていたから性別を変えようと思い付いたのだ。



「なるほどね~、性別を替える事で考えやできる範囲が広がるのは、ギルドの仕事にも役に立ちそうね……。まぁ、今の私には無理そうだけど………」



顔にある傷痕を撫でながら言ったシェルさんに、私は首を傾げた。



「シェルさんは見目が良いから、綺麗な女性になりそうですよね」


「あら、ありがとう。でもこんなに顔に傷痕があったら気味悪がられると思うわよ?」


「??シェルさんは口は悪いけど人の心配をできるじゃないですか。確かに見た目は大事ですけど、親しい仲になるなら見た目より中身が大事ですよ」



見た目だけで簡単に離れる奴は、指差して笑ってやれば良いんですよと言えば、驚いた様に目を見開いて爆笑し始めた。

あれ?何か見た事ある景色だな。



「フフッ、サクラが何でこの子を気に入ったのか分かったわ。まぁ、口が悪いってのは余計だけどね」


「此奴面白いだろう?」



えぇ、娘に欲しい位ねとシェルさんが言うと、やらないぞと師匠がニヤニヤしながら言った。


何の話だろう…?







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