10.『私』は結界を覚えステータスの意味を知る
次の日からコハクと一緒に魔獣討伐を初めた。
魔獣は聖獣の魔力を好むらしく、コハクは師匠が創った魔力遮断ローブ(ミニ)を着る事になった。
だからあの時、魔獣が集まっていたのか。
結界を出て海側に歩いて行く。
今日は結界を作る練習をしようと思う。
結界は一応無属性だがコツを掴むのが難しく、できる人は転移の次に少ない。
例え無属性を極めた者の称号を会得していても、一度もやった事がない事をいきなりできる訳がない。
何事も経験だよね。
海に着き、濡れないように羽織っていたローブを近くの木に掛ける。
コハクは今日は見るだけらしく、ローブを掛けた木の枝に座った。
私は魔獣が来ても直ぐに対応ができる様に、靴を履いたまま膝下まで海に入る。
師匠曰く、結界は浄化の魔力を薄い膜の様にしたモノらしい。
だから師匠の結界の中は、魔の森の中なのに息がしやすかったのだ。
なので私はコツを掴む為に、自分の周りに浄化の魔力を使いながら薄く水を円形状に張ってみる事にした。
(少しずつ、自分を中心に、円を書くように……)
目を閉じて心の中で自分の思う結界を唱える。
徐々に周りの空気感が変わっていくのが解り、そっと目を開く。
一目ではわからないが、良く見ると水が回りながら自分を覆っているのが解る。
成功した事に感動していると、聞き覚えのある声がした。
≪熟練度が一定に達しました。技能スキル「結界Lv1」を会得しました。≫
………え?結界ってスキルなの?
無属性の魔力がスキルとして会得した事に驚く。
「………コハクに聞こう」
知識が乏しい私が考えても解らないので、知識が豊富なコハクに聞く事にした。
天辺から切り開く様に結界を解いて海から出る。
海に浸かってた場所を温風で乾かしながらコハクに近寄り、結界のスキルについて聞いた。
「無属性は他の魔属性と違って、使い方によってスキルとして会得ができるにゃ。他に、技能スキルでは治癒魔力が、特別スキルでは転移と鑑定を会得できるにゃ」
なるほど、結界以外にもスキルになるのか。
治癒魔力は何だろう?傷口に直接浄化を掛けるのか?今度試してみよう。
転移は師匠から無属性だと聞いていたけど、特別スキルなのか。
鑑定は特別スキルなのは知っていたけど、無属性なのは初めて知った。
今日は一日中感覚を忘れない様に結界を練習して、明日からはコハクと魔獣討伐をしながら、結界は勿論治癒魔力と転移をやってみよう。
コハクに明日からの予定を伝えると、少し感心した様な表情をして、レインとサクラは変わった人間だにゃと言った。
「人間はステータスの認識が少し違うにゃ。スキルや称号はただの目安で全てではにゃいにゃ」
「全てではない?」
「そうにゃ。確かにスキルや称号を会得したらやり方を忘れる事は絶対ににゃいし、レベルを上げたらその分強くにゃるが、にゃに事にも経験が必要にゃ。レベルを見てMAXににゃっても基礎から真面目に訓練している人間と、レベルしか見にゃいで訓練をする人間では、例えおにゃじレベルでも前者の人間の方が断然強いにゃ」
聖獣や神とにゃのれるモノのほとんどは知っている事にゃと言って、得意げに胸を張るコハク。
確かに私は、魔獣討伐という実戦込みで訓練しているが、これは師匠の教えでもある。
何事にも続ける事とチャレンジ精神が必要だ!だが限度がある!と私が即実行を初めてした時に言われた。
その事をコハクに言うと、普段信用できにゃい顔をしているけど実力は流石だにゃと言った。
わかる。
この日は休憩を挟んで結界練習だけをして、レベルを五まで上げた。
浄化だけで結界を張る事ができたので、風属性・空間属性・雷属性で混合してみたら面白い事が解った。
まず、風属性と混合してみると、そのまま空中に浮く事ができて結界ごと動ける。
そして、一度バランスを崩して結界ごと近くの木に当たったら、結界が触れた所だけ粉々になった。
試しに内側からポケットに入っていた飴玉を放り出すと、粉々にならないで地面に落ちた。
次に、空間属性と混合してみたら凄い清らかな空間ができた。
コハクが、何処のシンイキだよと言っていたので意味を聞くと、神様が暮らす清らかな場所を神域というらしい。
これはその場から動かせなかった。
次に、雷属性と混合した。
服と手で摩擦して静電気を作り、無属性で増幅させて結界にする。
因みに、師匠の前で静電気を増幅して雷を作った時ドン引きされた。
雷属性は風属性と同じく結界ごと動く事ができ、電気で外から入れない様になっていた。
結界内は空間属性程ではないが、通常の結界よりも綺麗な空気が充満していた。
コハク曰く、一部の人間が雷を神鳴りと言っているからだとか。
最後に、この感じだと水属性にも何かあるんじゃないかと試してみた。
水属性も結界ごと動く事ができた。
海の中に入らないで自分を完全に囲む様に円形状に張り、そのまま海に向かって歩くと海の上を歩けた。
海の中に入れないか色々試してみたら、海水ごと結界を作り中の海水を万が一飲んでしまっても大丈夫な様に浄化したら、息ができる事が解った。
これは初めて見る生きた魚に見とれていたら、息を止めるのを忘れて偶然解ったのだ。
試しに浄化していない海水のまま口で少しだけ息をいたら、口の中が大変な事になった。
因みに、食事中にこの事を師匠に話したら、溜め息を吐いて頭を抱えていた。
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