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『俺』が『私』になるまでの成長記  作者: 羽鵺
第一章 『私』が『 俺』になるまで
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9.『私』は初めての友達ができる


あの後、大慌てで聖獣の手当てをした。

途中、私の思い付きで浄化と水属性の混合魔力で"人工聖水"を創り聖獣にぶっ掛けたら、急に怪我の治りが良くなった。


まぁ、私は師匠に思い付きで即実行するなと叱られたが、結果オーライという事で。


冬の月に入り寒くなってきたので、リビングにある暖炉前に寝床を作り聖獣を寝かせる。



「全く、初めて結界から出たらトラブルに遭遇とか……で、その魔獣の大量の死体はどこら辺だ?」


「家から出て、丁度真っ直ぐに行った所です」



指を指して言うと、確認してくると言って師匠は出ていった。

私は寝ている聖獣を見ていたら眠くなってきたので、横に並んで寝転がり一緒に眠る。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




額に何やらプニプニしたモノでペシペシされているのに気が付き反射的にガシッと掴んだら、ギニャーーーー!!?という鳴き声がした。



「……………誰?」


「此方のセリフにゃ!!」



目を開けると、フシャーーー!!と毛を逆立てて威嚇している白銀の猫がいた。

なるほど、プニプニしたモノは肉球か。

そのまま猫を抱き上げて座ると、意外にも大人しく腕の中にいる。

此方を見上げている猫と目を合わせて話し掛ける。



「君、聖獣だよね?」


「にゃんだ、気付いていたのか。オレはCランクの聖獣だにゃ」



ちょっと得意げに言ってユラリと尻尾を動かす。


かわいい。


初めて生き物に触るので凄く感動する。

モフモフしている……可愛い。

どうしよう、感想が可愛いしか出てこない……語彙力がなくなる……。

好き勝手にモフッていると、お前不思議にゃ匂いがするにゃと言われた。



「匂い?何か臭いのか?」


「いや、にゃんか微かに混ざっている様にゃ感じにゃ。それに、にゃんだか落ち着くにゃ」



そう言って、ゴロゴロと喉を鳴らしながら肩にすり寄る。

すると突然、にゃぁあ!?と耳元で大きな声を出されたので、キィーーーンと耳鳴りがした。



「…………うるさい」


「あ、ごめん、ってそれどころじゃにゃい!!コレ!この耳飾り何処で!?」



そう言って前足で必死に指しているのは、父さんの形見のリングピアスだった。

私は首を傾げて、父さんから渡された形見だと説明する。

猫はそのピアスをマジマジと見て、納得したように頷いた。



「にゃるほどにゃぁ~、巡り合わせってのは凄いのにゃぁ。オレも此処に巡り合わせで来たのかにゃ」



うんうんと頷き腕の中からすり抜ける。

私と正面を向く様にちょこんと座り、胸を反らして尻尾をユラユラと揺らす。



「オレのにゃ前はコハクだ!SSSランクににゃる為に旅をしているにゃ!」


「……私はレイン。此処で暮らすサクラ師匠の弟子で、今は修行を終えて自分の限界を目指している」



コハクと同じように自己紹介をして、よろしくと伸ばしている前足を握り握手する。

嬉しそうに尻尾を動かして私の肩に乗ったら、そのままの状態で会話をする。



「レイン!オレとパートにゃー契約をしにゃいか?」


「良いよ」


「返事はいつでも良いからにゃって早っ!?」



即答!?と驚くコハク。

少し話しただけで気が合うのは解ったし、知識不足な私は旅をしているコハクの存在は心強い。

首を傾げてその事を言うと、複雑そうな表情をしながら頷く。

猫なのに私より表情豊かだな。



「まぁ良いや、今日からよろしくにゃ!」



そう言ったコハクは、挨拶をするように鼻と鼻を合わせると、私たちの周りにホワンッと柔らかい光りが立ち上がる。

私は急な事に目を瞬く。

自分のやりたい事を終えて満足したのか、コハクは肩から胡座で座っていた足の上に移り丸くなる。

自由だなぁと思いながら暫くコハクをモフッていたら、師匠の気配がいきなり背後から現れた。

驚愕して体をビクッ!と揺らすと同時に、コハクが飛び起きて師匠を威嚇した。



「コハク、この人が師匠」


「お?何だ起きてたのか。やぁ、私はサクラだ!怪我が治った様で良かったよ」



師匠が片手を挙げて気軽に声を掛けると、コハクは怪訝そうな顔をした。



「顔が信用できにゃい」


「わかる」


「おいコラ似た者同士」



失礼だな!という師匠は一度、普段の自分の顔を鏡で見た方が良い。

師匠をガン見しているコハクを抱きしめて立ち上がる。

師匠にコハクとパートナー契約をした事を伝えると、展開が速いわ!と頭にチョップされた。

地味に痛い。


頭を擦っていると、目の端に外で白いモノが降っているのが映った。

窓に目を向けると、雪が降っているのが解った。

通りで寒い訳だ。

四歳以来の雪で少しテンションが上がる。

私の視線で雪が降っている事に気が付いた師匠は、気になるなら外に行ってこいと言ってきた。

急いで師匠のお下がりの保温性ローブを着て、コハクに一緒に行くかと聞くと、行くと即答してローブに潜り込む。

たぶん師匠と二人きりが嫌なんだな。



「行ってきます」


「行ってら~。あ、コハクは後で 二 人 き り でお話しような~?」


「ぅぇぇえ?」


「おい顔と声」



師匠の言葉にローブから顔だけ出したコハクは、猫らしからぬ声を出して不細工に顔を歪める。

そんなコハクを見て突っ込んだ師匠は、見た目と性格は似ているのに感情表現だけは真逆だなと言った。

誰の事だろう……?


外に出て、扉の直ぐ近くで暫くの間雪を眺める。



「コハク」


「にゃんだ?」


「友達になろう」


「いや急だにゃ!?」



契約した時から考えていた事を言うと驚かれた。

師匠曰く、魔物とのパートナー契約は人によって主従関係になったり、友人関係になったりと様々あるらしい。

私は、パートナー契約は互いを助け合う存在だと考えているので、主従関係になりたくないのだ。


それに………



「私、友達いないから欲しい」


「かにゃしい事をさらっと言うにゃよ……」



呆れた表情をしたコハクは、元々そのつもりだと言って首元にすり寄った。







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