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エッセイのようなモノたち

(ほぼ)素人が「大回り乗車」なるものをやってみて感じたことと、案外初心者でもできるということ

作者: 奈良ひさぎ

 小説の合間に息抜き……とまではいきませんが、ここでエッセイを一つ。なろう内で検索をかけたところそれらしい記事は見当たらなかったので、いろいろお話しできたらと思います。

 今回のテーマは「大回り乗車」です。

(以降はなるべく調べつつ書いていきますが、個人の意見もちょいちょい混じっていることには留意してください)



◆大回り乗車って?

 「『大都市近郊区間』内を普通乗車券または回数乗車券で乗車する場合、実際に乗る経路に関わらず、最も安くなる経路で計算した運賃で乗車することができる」という特例を使った電車の乗り方を指します(参考:『運賃計算の特例』JR東日本)。JR限定のルールです。


 より具体的に言えば、山手線で東京から品川に行きたい場合、普通に行けば外回りで5駅、運賃200円ですが、同じ200円を払いながら逆方向、つまり内回りで上野や新宿を通りながら遠回りして品川に行くこともできますよ、というものです。


 ただしいくつか条件があります。まずはスタートとゴール、さらに通る経路が全て『大都市近郊区間』の範囲内であること。これは後述します。二つ目は同じ駅、同じ区間を二度通ってはならないこと。つまり一筆書きならOKということです。

 また、切符についても経路指定されているものだとアウトです。駅の券売機で買ったら出てくるような小さい切符に経路が書いてあることはおそらくないと思うのですが、みどりの窓口で購入するような名刺サイズの切符には、経路がきちんと書いてあったりします。「経由:◯◯、△△、◇◇(路線の名前)」みたいな感じで。金券ショップで購入しても経路指定されている切符だったりしますので、駅の自動券売機で購入するのが一番無難だと思われます。加えて途中で新幹線を使うのはアウトです。ただし、在来線特急は(追加で特急券を購入すれば)OKだそう。


 もう一つ大回り乗車最大にして一番忘れてはならない条件が、「改札を出ないこと」です。改札に切符を通した時点でどこから来たか、どんなルートを通ってきたかが判定されるので、もし途中で間違って改札を出てしまった、となるとそれまで乗ってきた運賃を一気に請求されます。これやるとえらいことです。まあ大回り乗車が「特例」を利用した裏技みたいな乗り方なので、正規ルートの請求をされる方が通常と言えば通常なんですが。



◆大都市近郊区間

 大都市近郊区間は全国に東京・大阪・仙台・新潟・福岡の五つが設定されています。ルートを示した図を描くのがめんどくさいので具体的にどこが対象なのかは調べていただきたい(『大都市近郊区間』と調べればすぐ出てきます)のですが、この地図に示された範囲内で一筆書きができるなら、どれだけ遠回りをしてもいいですよ、ということになります。電車の時間にも特に制限はなく、始発から終電まで対象です(実際に『◯◯最長大回り』と称してほぼ始発から終電まで乗り回し、なるべく多くの路線に乗るルートが存在するようです)。ちなみに日付を超えても電車がギリギリあるようなところに関しても、終電まで対象です。また、これはあくまで個人の感想ですが、仙台・新潟・福岡の三つの大都市近郊区間は範囲が狭く、一筆書きしようとしても数通りにしかならないと思われるので、どうせやるなら東京か大阪の方がバリエーションがあって面白いと思います。

 これ以降、筆者が関西在住ということもあり、大阪近郊区間を中心に話をさせていただきます。東京も面白い、とは思うんですが、土地勘もないしいまいちよくわからんのでここでお話するのはパスということで。



◆大阪近郊区間

 大阪、と名がつくから大阪府内しかない、というわけではありません。西は兵庫から、京都、奈良、和歌山、滋賀、三重 (ただしちょこっとだけ)と広い範囲が対象です。ただし、範囲の端っこの方だと遠回りの一筆書きをしようにも一本しか線路が通ってないからできない、なんてことがありますので、スタートやゴール地点にできないところはポツポツありますが。これは大阪近郊区間に限らず、どこでも言える話です。

 あとはこれも大阪近郊区間に限らない話かもしれませんが、どこまでが範囲内かはきちんと把握しておく必要があります。範囲外にちょっとでも出た瞬間アウトです。大阪近郊区間の指定する範囲と、ICカードの使える範囲、電車の行き先が全部違うこともあります(例:福知山線の大阪近郊区間の北限は谷川、ICカードが使えるのはその手前の篠山口まで、しかし福知山線には谷川より先の福知山まで行く電車もある)。いつの電車に乗って、ここで降りて何分くらい余裕がある、みたいなのをあらかじめ調べると安心です。



◆大阪近郊区間のネック

 もちろん「関西最長大回り」とか称してやってもいいんですが、初心者向けではありません。自分のような人様よりちょっと多く知ってるくらいのにわかとか、そもそも大回り乗車ってなんぞやってところからこのエッセイを読んでくれている方だとハードルが高いと思います。それにほぼ丸一日つぶして十数時間も電車に乗り続けるなんて、普通に疲れますよね。

 そこで最長大回りあたりはその道の人に任せておいて、一時間で気が向いた時に出来そうな、あるいは長くても数時間の時間つぶしになりそうな初心者向け?なルートをいくつかご紹介したいと思います。その前に、ネックとなる路線・駅 (※個人の主観です)をいくつかご紹介します。


 大阪近郊区間、と一言に言っても、全範囲ビュンビュン電車が来るような多忙区間ばかりではありません。そりゃ大阪京都とか、全国的にも名前の知れているような駅周辺はひっきりなしに電車がやってきたりしますが、特に範囲の端っこあたりは単線 (上りと下り合わせて一本しか線路がなく、反対方向から電車が来るのを待つので遅くなったりする)、非電化 (電気が通っておらず、車と同じくエンジンを積んでガッタンゴットン走る)の区間が多いです。当然単線から複線 (上下一本ずつ線路がある)に、非電化から電化にした方が効率はいいし、スピードも速くなります。が、それでもしないということはつまり、工事をして輸送量を上げても採算がとれないほど乗ってくれるお客さんが少ないということを意味します (正確には違うかもしれませんが、自分はだいたいこういう理解をしています)。

 こういう区間ではそもそも電車の本数が少ないです。一時間に一本とかならまだしも、後述のように一日に十往復も来ないようなところもあります。もしこれらの区間を考慮に入れる、なんてことがあれば参考にしていただければ幸いです。


①加古川線 (加古川〜谷川間)

 加古川線はちょうど半分くらいのところにある西脇市、という駅でほぼ分断されたようなダイヤが組まれています。南半分、すなわち加古川から西脇市の間はギリギリ大阪への通勤圏内ということもあり、だいたい一時間に一本は約束されています。ところが西脇市から谷川の間が、先述の一日に十往復もない場所。谷川は福知山線との乗換駅になっていますが、この路線をまたぐ乗り換え客はほとんどおらず(それこそこういう大回り乗車する人がほとんどだったり)、時間を間違えると周りにほとんど食べ物屋のない谷川で三時間待ちぼうけ、ということもありえます。また大抵は途中の西脇市で比較的スムーズに乗り換えられるようになっていますが、なっていない場合もあります。例の最長大回りの場合も、ここをいかに早く抜けられるかがキモの一つだったりするみたいです。


②和歌山線 (和歌山〜王寺間)、桜井線 (高田〜奈良間)

 和歌山駅は阪和線 (大阪・天王寺と和歌山を結ぶ)、きのくに線 (和歌山駅からさらに南の方へ行く)とこの和歌山線が乗り入れています。このうちきのくに線は大阪近郊区間の範囲外です。

 阪和線は大阪と和歌山を結ぶ乗降客も多い路線ということがあり、十五分に一本は約束されていますが、和歌山線はそもそも三十分に一本しかやって来ません。しかもそのうち半分は途中までしか行かず、奈良まで来てくれるのは一時間に一本。途中の駅で終点ですって降ろされても戻って来なければ意味がないので、この奈良まで行く方に乗るわけです。まあ言っても一時間に一本ですから①の北側よりかはマシですが、それでもちゃんと乗り換えを考えないといけないことに変わりはありません。

 ちなみにこの奈良まで行く電車、和歌山を出発して途中の高田から桜井線という別の路線に入ります。和歌山線の本来の終点である王寺に行くためには、この高田で乗り換える必要があります。でも確か、ここも接続があまりよろしくなかったような……。


③関西本線 (加茂〜柘植間)、草津線 (草津〜柘植)

 天王寺は大阪環状線と先述の阪和線のほか、関西本線も乗り入れています。天王寺のあたりから京都の加茂駅までは乗客もなかなか多く、割と頻繁に電車が来てくれますが、それより東は別です。一時間に一本はやってきますが、単線・非電化でゴトゴト言いながら走ります。普段電車に乗り慣れていると、いざこういう電車に乗った時に疲れるんですよね……。関西本線と草津線との乗り換えに関しては、そこまで待ちぼうけを食らわないようになっているみたいです。



◆(たぶん)初心者向けな大回り乗車ルート

(1)琵琶湖一周ルート

 景色もまあまあ見れて琵琶湖一周、というそれなりに魅力のある名前の旅ができるコース。調べる前は一時間くらいで行けるんじゃねえのと思っていましたが、乗り継ぎの時間も含めて三時間くらいかかってしまうようです(初心者向けってほどではなくなってしまった)。京都の東隣、山科駅と滋賀のかなり北部に位置する近江塩津駅が、それぞれ湖西線と琵琶湖線・北陸本線の分岐駅になっているので、駅の選び方さえ間違えなければ最安百数十円で一周できます。例として出しておきながら行ったことがないので、一度行ってみたい。ちなみに湖西線は琵琶湖の北側、琵琶湖線は南側を通りますが、琵琶湖線からは琵琶湖が見えないというトラップ。


(2)大和路(やまとじ)線を走り抜けるルート

 例としては大阪から新大阪までの百六十円の切符を買って、大阪環状線に乗って天王寺、そこから大和路線に入って奈良を通って木津まで行き、奈良線に乗り換えて京都、JR京都線で新大阪まで向かうというもの(木津から学研都市線で放出(はなてん)駅まで向かい、つい先日開業したおおさか東線の北区間で新大阪に向かう、というルートも考えられます)。京都駅経由の場合は二時間半ほどでゴールできます。

 ざっくり天王寺と奈良とを結ぶ大和路線は、大阪府内は都会風な景色が広がりますが、大阪府と奈良県の府県境あたりから山の中を縫うように走り、同じ川を蛇行しつつ何度も渡るようなルートを取ります。山の中なので春は桜、秋は紅葉できれいな景色が見れそうだな、と想像します(これも残念なことに、夏と冬にしか乗ったことがないので分からない)。プラスで大和路線内を走る大和路快速がまあまあ速く、びっくりするくらい駅をすっ飛ばすので、結構外の景色を楽しみながら乗れるんじゃないかと思います。筆者は結構好きです。



◆最後に

 ここまで個人の想像やら何やらでいろいろお話ししてきました。初心者でも行けそうなルートは「大回りをする時ネックになるになる駅・路線」を通っていない、かつ速達タイプの電車が走っているところなので、約束ブッチされて半日フリーになった、でもお金あんまり持ってない、なんて時に割と気軽に実行できそうなルートだと思われます。自分も最初にこれやっとけばよかったな。

 繰り返すようですが、大回り乗車の絶対ルールは「改札を出ないこと」「同じ駅を通らず一筆書きの要領で通ること」です(もちろん他にもいろいろあります。抜けているルールがあったら教えてください)。改札内に売店や食事できるお店がある駅は限られていますので、大回り乗車の目的のほとんどは景色を楽しむことになります(自分が以前やった大回り乗車は違いましたが)。

 あとはこの大回り乗車自体、いわゆる「裏技」であることに留意する必要があります。JRが公式に認めているルールに則ったものなのでアウトではないんですが、頻繁にやってJRにお金を落とさないのもよろしくはない、というか。駅員さんに「大回り乗車をしているんですが」と言えば通じますし、快く応対はしてくれるんですが、まあ「ちゃんとお金払って乗ってくれよ……」って何人かは思ってそうな気がします。なのでこの大回り乗車をきっかけにして、普段乗っている電車をちょっと気にしてみるきっかけにすればいいんじゃないかなあ、とそれっぽいことを言って締めくくりたいと思います。


 ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 関東民です。こういうエッセイは珍しいので楽しく読ませてもらいました。 大回りでも景色の移り変わりとか、地域の雰囲気の違いとかが楽しめるので、このエッセイを見て旅行の楽しさを知る人が増えたら…
[良い点] 長距離移動の際に『組み合わせ切符』みたいなのが売っているのをたまに見ますし、使った事あります(金券ショップなど 「大回り乗車」という言葉を初めて知りました。 論じるメイン(特になろうの…
[一言] うぉぉ、これは有難い! ちょうど、少し前に関西圏ではどんな感じになるのか知りたいな、と思ったところだったので。 鉄っちゃんでもなく関西のこともほぼ無知なので、駅名路線名を見ても未知の世界なの…
2019/03/26 00:08 退会済み
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