#4 夏
クーラーの効いた部屋で、ふとカレンダーを見ると8月23日に赤丸がされていた。
なぜなら、、、
8月23日、木曜日。
この日はまだまだ焼けるような暑さだったと思う。
その日も彼と通話していた僕は、前々からしていた架空の彼氏との惚気話をしていた。
何故かと言われたら少し恥ずかしいのだが、彼に嫉妬して貰いたかったからだ。
こんな方法で気持ちが伝わる訳ないのに、素直に言えないからこんな回り道をしてしまう。 ダメな人間だなぁとつくづく思っていると、ふと目にテレビ番組の特集が目に入ってきた。
“愛について”
愛かぁ〜と思っていたその時、何故だろう、不思議な決心がついた気がした。
その時はなんの決心かは分からなかったけど、僕の口からは自然と言葉が零れていた。
「彼氏がいるっていう話、実は嘘なんだ。」
この言葉に対する世の一般的な反応は恐らく、
『はぁあ?』
だろう。 そのくらい唐突に言っていた。
しかし、彼は
『なんで嘘ついたの?』
と聞いてきた。
それは問いただす訳でもなく、責めてるわけでもなく、いつもの柔らかい声で聞いてきただけだった。
だから、答えた。
「し、嫉妬して貰いたかったから、、」
『なんで嫉妬して欲しかったの?』
「好きだから、です、」
自分の気持ちが自然と溢れ出てしまった。
その時、前についた決心がようやく理解できた。
それは、
大好きな人に「大好き」と言う
決心だった。
「秋、」
「僕と付き合ってください。」
『.....』
『っっ......』
声が震えていた。
『こんな、自分でよければっ..』
『よろしくお願いしますっ....!』
彼は、そう、言葉を紡いでくれた。
秋、
それは8月23日に付き合い始めた、
世界で一番大好き《だいすき》な、
彼氏の名前です。