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第十話



 まずはじめに、10人のサトルがダンジョンボスの広間に足を踏み入れた。


 ダンジョン『異端者の地下墳墓(カタコンベ)』。


 ダンジョンボスの広間はこれまでの小部屋や通路同様に石で覆われている。

 広い空間には規則正しく円柱が立ち並んでいた。


 中央には二体のモンスターがたたずんでいる。


 頭からつま先まで全身を覆うフルプレートメイルで、種族も表情も窺い知れない。

 タワーシールドと剣を持ち、2メートル近い身長と相まって威風堂々たる姿だ。

 二体とも装備はそっくり同じで、違いは一つだけ。


 色だ。

 一体の鎧は金色に、もう一体の鎧は銀色に輝いている。

 アンデッドまみれの地下墳墓(カタコンベ)に似合わず、ボス鎧はどこか清浄な雰囲気を纏っていた。


「散開、散開! 敵は二体、全身甲冑で相性は悪くなさそうだぞ俺たち」

「了解、オレイチ! 初撃はベスタがいく! ()()を開けろ俺たち!」

「俺は金色を担当する。銀は任せたぞオレック」

「うわ、派手だなおい。アンデッドだとするとリビングアーマーか?」

「首を落としても気を抜くなよ俺たち! デュラハンのパターンもあるぞ!」


 静かにたたずむ二体のボス鎧を前に、サトルたちは騒がしい。

 10人のサトルが半円状に広がると、金銀のボス鎧が動き出した。

 足元(グリーヴ)から兜まで隠すほどの巨大なタワーシールドを構える。


「盾持ちか。ベスタ、全力でやってみろ」


「わかりましたサトル様! 最強なアタシ、違った、サトル様の次に最強なアタシの最強の攻撃を見せてやる!」


 サトルに続いて広間に入ってきた馬が光る。

 光りながらシルエットが変化する。


 馬からドラゴンへ。

 ベスタの元の姿へ。


 ドラゴンに戻ったベスタは、すぐに大きく息を吸い込んだ。

 龍の爪が石の床に喰い込む。


 グオオオオンッ! という咆哮とともに、ドラゴン最強の攻撃が放たれた。


 サトルと戦った時は、放つことさえ許されなかったドラゴンブレス。

 ベスタのブレスは火ではなく水らしい。


 口から勢いよく噴射される水が、ボス鎧のタワーシールドにぶつかる。

 金銀の盾を並べた二体のボス鎧は床にグリーヴを喰い込ませながらこらえている。

 が、それも限界があったようだ。


 ブレスに押し流され、金色と銀色のボス鎧が吹っ飛ぶ。

 広間の壁に叩き付けられて、ガシャン! と大きな音を立てた。

 二体のボス鎧を壁にめり込ませ、ベスタのブレスが止まる。


「どうだ! アタシはサトル様の次に最強なんだぞ! ほらやっぱ強いよなアタシ、最近なんだか自信がなくなってたけど」


「おお、やるじゃんベスタ! 行くぞ俺たち、追い打ちだ!」

「ベスタって水系のドラゴンだったんだ。そういや川から襲ってきたっけ」

「ほらぼーっとするなオレック! 銀を押さえにいくぞ!」

「レベル43のベスタのブレスでぶっ飛んだか。推定レベル50ぐらい?」

「俺、もう10人俺たちを追加してくれ! 一体あたり俺が10人もいれば大丈夫だろ」


 ダンジョンボスの大広間にいた10人のサトルが、ボス鎧に追撃を仕掛ける。

 レベル50あたりという推測とサトルの要請を受けて、サトルは広間の前にいた10人のサトルを追加で送り込む。

 ボス鎧に向かって走るサトルたちを追うように、サトルたちが大広間に突入した。


 金銀のボス鎧がめり込んだ壁を抜け出す前に、先行したサトルが間に合ったようだ。


「伸びろニョイスティック! 一番槍はもらったぞ俺たち!」

「ベスタが攻撃したあとだけどな。あと槍じゃないぞオレイチ」

「いつも通りだ! まず武器を手放させろ俺たち!」

「んで人数かけて押さえつけると。必勝パターンだなオレニー」

「追加の俺たち、はやく! けっこうキツイです!」


 ダンジョンドロップしたマジックウエポン『ニョイスティック』を使って、金銀のボス鎧の手足を押さえつけるサトル。

 両手両足にサトルが二人ずつ、胴に棒を当てて壁に押し付けるサトルがさらに二人。

 ジタバタ暴れているが、ボス鎧はレベル64のサトルたちの拘束から抜け出せないようだ。

 魔法は飛んでこない。

 フルプレートメイルのボス鎧は、見た目通り物理攻撃主体だったのだろう。


「やっぱり予想通り相性はよかったみたいだな。もう10人、いや、20人追加しておくか。10人ずつで押さえて10人ずつで攻撃するってことで」


 広間の前で様子をうかがっていたサトルがぼそっと呟く。

 以心伝心らしく、追加で20人のサトルが広間の中に入っていった。

 これでソフィア姫とプレジアのまわりに残った護衛役のサトルは10人だ。


 追加で投入された20人のサトルを見て、金銀のボス鎧がぎょっと目を剥いた。兜で中身は見えないがなんとなくの雰囲気で。


 レベル40を超えると一流冒険者と呼ばれる中で、レベル64のサトルが40人。

 絶望的な戦いのはじまりである。金銀のボス鎧にとって。




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