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二面性マイシスター  作者: 終野 怜
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第二話 休日の姉妹

休日の朝、現在午前6時に目覚めた私は部屋を出て洗面所に向かう。まずは温かいお湯で洗顔をして顔を拭き、歯を磨く。丁寧かつ手早く済ませた私は自分の部屋に戻り、動きやすい私服に着替えて髪を解かす。これでも髪の手入れには時間をかけている方だ。

 

それを済ませるとまた部屋を出て1階に降り、キッチンへと向かい、また手早くエプロンをして髪を結ぶ。手軽な1つ結びに。これで準備は終わった。


何をかって? もちろん朝食を作る準備だ。朝はよほどの事が無い限り私がしている。もう1人の同居人は朝が弱いからだ。


冷蔵庫を開けて食材を確認し、卵を2個とベーコン1パック、あらかじめ切られているカット野菜1袋。卵は溶いて塩を入れ、温めて油をひいたフライパンに入れて軽く混ぜる。ある程度火が通ったら皿に2人分盛り付ける。空いたフライパンにベーコンを焼いている間、戸棚から食パンを出し、トースターに2枚入れる。焼き上がったベーコンを、焼いた卵、スクランブルエッグと同じ皿に盛り付けて完成。カット野菜をさっきとは別の2つの皿に取り分け、ゴマドレッシングをさっとひとかけ………あ、丁度パンが焼けた。皿に置いたパンにマーガリンをつけて朝食の完成。後は、

 

「お姉ちゃん!起きたー?」

 

と、丁度お姉ちゃんの部屋がある辺りの天井に大きな声をかける。

 

「……………」

 

反応なし………か、仕方ない、起こしに行かないとご飯が冷める。まあサラダはもとからだけど。

 

2階に行こうとリビングの部屋を開けると、

 

「キャッ」

 

「おわっ、どうしたの、」

 

パジャマ姿の、眼鏡をかけて髪がボサボサの、なのに顔はスッキリしたお姉ちゃんがいた。


「なんだ起きてたんだ。だったら返事してよ、もう、」

 

「ああ、ごめん、顔洗ってた」

 

ああ、通りで顔だけはキレイになっていると。

 

「ご飯、出来てるから食べっちゃって」

 

「ありがとう、いつも………って、あれ、髪結んでいる、珍しいね」

 

「いつも朝作るときに結んでますー、まあお姉ちゃんは起きるのが遅いから、いつも解いっちゃってる姿しか見てないと思うけどね!」

 

「す、すみませんでした……」

 

デリカシーの無いお姉ちゃんに軽い説教をしてからテーブルにつき、朝食を食べ始めた。食べている最中、目の前のお姉ちゃんのボサボサ髪が目についた。

 

「お姉ちゃん、顔を洗うついでに髪も直してくれば良かったのに」


私の言葉にキョトンとした反応を見せてから、ああ、とでも言っているように噛っていたパンを離した。

  

「大丈夫、ほっとけば大抵直ってるから、へいきへいき」

 

なんだろう、その安心出来ない答えは。

 

「私が直すから、お姉ちゃんはそのまま食べてて」

 

私はポケットに常に常備している薄いくしを取り出した。どうせお姉ちゃんに聞いても持っているわけ無いだろうし。

 

「ええ、別にいいよ、いつもとたいして変わらないし」

 

「学校ではそうでも、部活では違うでしょ、今からはオタクモードじゃなくてイケメンモードのお姉ちゃんなんだから」

 

「……………なにそのモード、」

 

お姉ちゃんはモードの切り替えや違いに自覚がない。まあだからこそ困っているのだけれど。ちなみに休日に関わらず朝が早いのも、お姉ちゃんはこれから部活だからだ。まあ私はいつも通りである。

 

「お姉ちゃんは気にしなくていいの。クラスや家ではいいけど、部活くらい少しはまともでいてってこと」

 

「それって普段のボクが変って言ってるような、」

 

「はあ、だから、少しはかっこよくいてって言ってるの!分かった?」

 

「は、はい………善処します……」

 

朝からこんな恥ずかしい事を言ったせいで、私の顔は焼けるように熱くなっていた。せっかく洗顔したのに、それは関係ないか。

 

ついでに言うと、何故かお姉ちゃんの耳が赤くなっていた。顔は、髪を解かしているせいで分からなかった。

 


 

 

 

 

 

 


 

 

「じゃあ、行ってきます」

 

髪も整って、眼鏡を外して、部活着の姿になったお姉ちゃんは完全にイケメンモードのお姉ちゃんになっていた。

 

「はいはい、行ってらっしゃい」

 

そう返すとお姉ちゃんは自転車を取りに行こう........あれ、戻ってきた。

 

「うぅ、なにーお姉ちゃん」

 

「......忘れてた」

 

「そのまま忘れていてほしかった」

 

毎朝恒例、いや休日の朝恒例である、お姉ちゃんからのハグ。これ近所の人に見られると後で弁解が面倒なんだけどな。


「いつも思うけど、これ、なんか新婚さんみたいだね........」

 

「!!!早く行ってきなさい!」

 

込み上げてくる恥ずかしさとそれを言った張本人への成敗と称した平手打ちをお姉ちゃんにかました。


「イタッ!はいはい、ごめんごめん」

 

多分、いや絶対反省していないお姉ちゃんが謝罪をすると、今度こそ自転車に乗って、

 

「行ってきます、嘉織」

 

「いってらっしゃい、お姉ちゃん」

 

そう私が送り出すと同時に、お姉ちゃんは自転車を走り出していた。

 

 

………………あれ、これもいわゆる新婚夫婦みたいな、お姉ちゃんが旦那さんで私が奥さん…………//////!!

 

「なしなしなし!今のはあり得ない忘れろ私!!!」

 

そんなもしもの妄想をしてしまった私は、また顔が焼けるように熱くなり、思わずその場で頭を抱えてしまった。

 

それもこれも全部お姉ちゃんのせいだ、あーもう! 

 

 


それを忘れるために、やけくそにやった掃除はいつもより早く、そしていつもより綺麗になったので、それがお姉ちゃんのおかげであると言うことに私はムカついた。

 

 


 

 


 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

お昼の12時過ぎ、部活から帰ってきたお姉ちゃんの声で、モヤモヤと私の頭を覆っていた眠気が晴れた。

 

「おかえりー 、あとお疲れ様」

 

そう返して玄関の方へと目を向けると、2階に上がっていくお姉ちゃんの足しか見えなかった。

 

バタン、と2階のドアが閉まったと思えば、すぐに開き、ダダダッとでも言うような足音を立てて階段を降り、脱衣徐に入っていった。

 

お姉ちゃんはいつも部活から帰ってくるとすぐにお風呂に入っていく。しかも結構の早風呂で、15分、いや10分もかかっていないんじゃと、生まれてこの方ずっと一緒にいた私ですらそう思えていた。

 

そう頭で考えを巡らしていた私は眠りこけていたソファから体を起こし、目の前にあるテーブルに置いてあったテレビのリモコンを手に取った。そしてもちろんスイッチを押す。

 

『…………お昼のニュースをお伝えします。本日5月27日の土曜日にお伝えしますのは…………』

 

なんだ、もうお昼だったか、そんな他人事のように表示されている時刻を見つめていた。どうやら朝のやけくその掃除が、思ったより私の体力を削ったらしい。そこそこ自信がある方なんだが。

 

ぼんやりチャンネルを回していると、時間が12時の10、2、3分、あ、

 

「しまった、お姉ちゃんが、」

 

と、思ったときには遅く

 

ガチャッ

 

「ただいま上がりました」

 

やっぱり早い、上がるの。じゃなくて、

 

「あー、疲れたよー嘉織ー」

 

そう言うと、ソファに座っていた私に、いつものように抱きついてきた。しかもそれが思ったより勢いがあり、

 

「ああ、ちょっと!」

 

ソファの上で、背中から倒れ、いや簡単に言うとお姉ちゃんに押し倒された。その方が分かりやすいだろう。分かってもらってもしょうがないが。

 

「お姉ちゃん、髪まだ濡れているよ、ちゃんと乾かしてきて!」

 

「大丈夫、すぐ乾くから、」

 

なんだろう、このやり取り。朝も似たようなことを聞いたしやったような。

 

「私が濡れるの、だから乾かしてきてよ」

 

最もな理由を言っても、お姉ちゃんは動く気配が無い。

 

「だって、早く嘉織に会いたかったし、抱きつきたかったし、いいだろ?」

 

「は、はい?」

 

この口調、まさか………あ、まだ眼鏡をしてなかった。だからか、こんなタラシのような話し方を(無意識に)続けているのは。

 

「ちなみにお姉ちゃん、眼鏡はどうしたの?」

 

「ん?持ってるけど?」

 

いや、だったらかけて下さい。私が被害を受ける。


「ちょっとごめんね、」

 

お姉ちゃんの手にあった眼鏡を取って、本来あるべき場所に戻す。

 

「んん、あれ、目の前に嘉織が………ああ!!」

 

「よし、」 

 

やってしまった、その言葉が似合う顔をしたお姉ちゃんは素早く私から離れた。眼鏡をかけたオタクモードのお姉ちゃんは、正直いって俗に言うヘタレであり、こんな抱きつくなんて大胆な真似はしない。自分からは。

 

「ご、ごめん嘉織、痛かった?」


(オタクモード)に戻ったお姉ちゃんは、あたふたしながら私の事を心配していた。

 

「ううん、大丈夫だよ。それよりお昼にしよっか?」

 

「あ、う、うん。ボクも手伝うよ」

 

ちなみにイケメンモードのお姉ちゃんは、こっちに比べて若干甘えん坊というか、それっぽい感情がある。クールでイケメンでタラシで甘えん坊かつ朝が弱い、何だっけ、こう言うのを………

 

「設定過剰、属性多すぎ、とか?」

 

「え、ああそれだって、なんで分かったの!?」

 

「うーんと、オタクの勘と言うことで」

 

こっちのお姉ちゃんは、冷静でオタクで勘が良くて優しくてヘタレで朝が弱いのは共通で………こっちの方が良いのかな?

 

「お姉ちゃん、」

 

「何?」

 

「なるべくそっちでいてね」

 

「………何が?」

 

オタクモードの方が楽だと言うのが私の行き着いた結論だった。


 


 


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