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二面性マイシスター  作者: 終野 怜
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第一話 二面性のある姉とその妹

最強シスコン姉妹の登場です

「いやいや、確かに普通は最終話が神回かもしれないよ?でも本当にあのアニメを愛しているのであれば、真の神回はどっからどう見ても第10話だろ!」

 

いきなりの急展開でごめんなさい、説明します。ここはとある都内の少し偏差値が高い高校の2年生の教室。時刻は、生徒が1番気を抜ける昼休み兼昼食時間。

 

「その回は君の推しキャラが1番出番のある回だからじゃないか。それにそもそも君の推しキャラはアニメ内ではサブヒロイン。人気も需要も少ないとみえるが?」

 

この長文で意味不明な単語を並べて議論しているのは私の隣の席にいる人たち。この学校でも珍しいと言える人たち。

 

「...言ったな、ボクの目の前でボクの1番のヒロインをディスったな」

 

「いやディスったというより、このアニメ全体的の評価を見ての結論というか....」

 

「いいか! サブとか言ってるが、このヒロインは主人公の幼なじみだぞ!現在に至るまでの間、主人公を何度も支え、何度も慰め、いついかなるときも味方であり続けた、主人公への愛する想いが尽きない、もはや正妻と言ってもいいぐらいの高レベルヒロインなんだよ!」

 

ああ、始まってしまった。この人は一度語りはじめてしまったら、恐らくこの昼休みが終わるまで止まらないだろう。その姿を私は何度も、いやほぼ毎日見てきたから予想は付く。

 

「まあ流石にそれはわたしも見てきたから知ってるよ。でもあのヒロインは主人公にたいする愛が重すぎると思うけどね」

 

「それでも良いじゃないか!その重い愛がより二人の中を深めたんだから!ホント二人が揃ったシーンを見るたんびに泣けてきて...」

 

とその人は眼鏡を外していつの間に流れたのか、涙を拭っていた。

 

 

本当に不思議な人だと思う。教室のど真ん中でアニメなんてものを語って泣いて、私には理解できない。まあ、

 

「な!嘉織もそう思うだろ?」

 

「...私、興味ないから。あと、ほっぺに米粒ついてるよ、お姉ちゃん」

 


その不思議な眼鏡オタクの人は、私の双子の姉、日向灯織なんだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

私のお姉ちゃんは、二つの顔を持っている。一つはさっきみたいな重度のオタクと言う顔。中学の頃からあんな感じだ。深夜に放送しているというアニメを見たり、普通の小説とは違う、お姉ちゃん曰くアニメを本にしたようなやつと言うライトノベルを買って読んだり、画面の中の人と話すシミュレーションゲームをしたり、あとアニソンとか言うキャラクターの声を演じている人が歌っている歌を聴いていたり、そして歌ったりしている。お姉ちゃんには悪いけど、第一印象は地味といえる、もっと言えば変人。

 

 

そんなお姉ちゃんだけど、クラスの人たちにけなされたり、バカにされたり、変人扱いをされたり(一部例外)はされていない。その理由は、お姉ちゃんが持つもう一つの顔。

 


 

それは、六時間目の終了後。ホームルームが終わり、放課後を迎えると

 

 

 

......お姉ちゃんの性格が変わる。

 

 

 

 

 

 

ホームルーム終了後、すぐに教室を出ていったお姉ちゃん。10分後、戻ってきたお姉ちゃんの一部が変わっていた。眼鏡を外していたのだ。そのせいで、いつもは目に隠れるまで伸びている髪も、邪魔にならないよう横に分けていて、本来見えるはずの無い輝く透き通った目が見える。そう、例えるなら、

 

「キャアーーーー ヒオリ様!」

 

「来ましたわよ!イケメンモードのヒオリ様!」

 

さっきのがオタクモードなら、今ではイケメンモードのヒオリ様となっている。

 

そのヒオリ様が、要するにお姉ちゃんが私のところに来る。

 

「じゃあ部活行ってきます。終わったら迎えに行くから」

 

「うん、いつも通り待ってます。と言うか、いつもそうだし、いちいち言わなくても」

 

「だって、言いに来ないと嘉織の赤い顔、見れないじゃん」

 

普段のオタクモードだったら、なんとも思わないのに、なぜイケメンモードだとこんなにも様になっているのだろうか。

 

………あと、私の顔が赤いのは、クラスのみんなから注目を浴びて恥ずかしいからであって、決してお姉ちゃんの容姿は関係ない。………絶対に、絶対に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんが部活にいっている間、私は教室を出て、階段を降り、ある部屋の扉を開ける。そこに入った瞬間、私がある役職を持つことになる。

 

「あ、こんにちは、日向先輩」

 

「お疲れ様です、副会長」

 

「あら、いらっしゃい嘉織さん」

 

それぞれに呼び方が違うのはまあいつもの事で、もう慣れてしまった。

 

「こんにちは、篠木さん森川さん。お疲れ様です、会長」

 

ここは、入学試験の成績が上位の人しか入ることが出来ない、学校機関、生徒会である。

 

今期の生徒会メンバーは、3年生の会長1人、2年生の私と今はまだ来ていない同級生の2人、そして1年生が2人の計5名。生徒会は最大で6名のため、私の代にもう1人入ることも出来たが、その人が断ったせいで今は5人で活動をしている。

 

「嘉織、今日もヒオリくんは元気だった?」

 

と、不意に会長が私に問いかけた。

 

「はい、いつも通りに部活に行ってますよ」

 

「そう、それはなによりね。ねえ、やっぱり気が変わったりしない?ヒオリくん」

 

「会長、私が来るたんびに聞きますけどやっぱり変わりませんよ」

 

「残念ねえ、あんなに面白い子他にいないのに」

 

「むしろお姉ちゃんがここに入ったら、今の平穏を保てなくなります」

 

「私はかまわないわ、ヒオリくんをいじることが出来ればそれで、」

 

「ちなみにどっちの時ですか?」

 

「オタクっこの時かしら?おとなしくて可愛いもの!」

 

「はあ、」

 

何故かうちの会長はお姉ちゃんをとても溺愛していた。しかもよりにも寄ってオタクモードの方を。

 

「日向先輩のお姉さん、1年の間でも話題になってますよ。もちろん日向先輩も同じくらいに」

 

「ですね、うちの学校名物、“放課後の美少女姉妹”と新聞部が取り上げていました。まあ私は興味無いですけど」

 

放課後の、か。つまりみんなが好きなのは放課後のイケメンモードのお姉ちゃんであって、オタクモードのお姉ちゃんは興味無いと言うことなんだろう。そんなの、

 

「なによー!オタクっこのヒオリくんも可愛いわよ!ねえ嘉織さん!」

 

「え、あいえ、その………」

 

「そんなこと言ってると、シスコンの嘉織さんが頭から角を生やして怒りくる………あイタッ、」

 

「姉のフォローは姉に変わってお礼を言いますが、私はシスコンではないので訂正を」

 

まったく、何を突然言うのだろうか。シスコンなのは私じゃなくどちらかと言うと………やめよう。

 

「だからってチョップしなくてもいいじゃない!もう、訂正します、嘉織さんはシスコンではなくツンデレです」

 

「会長!」


もう、言い返すのはやめよう。このままでは疲れてしまう。

 

会長を無視して、私は自分の席に行き、書類整理を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書類整理が終わりに近づいてきたと同時に、日も暮れて来た頃、

 

「嘉織!!」

 

名を呼ばれると同時にドアがうるさく開いた。

 

何を言おう、不法侵入してきたのはお姉ちゃんである。

 

「お姉ちゃん、入るなら静かにノックを……!!」

 

「ただいま、あとお待たせ」

 

「お、お姉ちゃん、ここ……」

 

お姉ちゃんに注意をしようと立ち上がった瞬間、走りながらの勢いのまま抱きつかれた。と言うより、抱き締められた。いやそうじゃなくてここ、

 

「あら、いきなり入ってきたと思えばうちの副会長の作業の邪魔をするなんて、いい度胸ねヒオリくん?」


「いえ会長、書類整理はついさっき終わりましたので邪魔には、」


「ボクもちゃんと入った時に確認していたので大丈夫です」

 

「相変わらず息があっている姉妹だこと。で、いつまで抱き合っているのかしら?」

 

「あと10分ほど……」

 

「いやもう離してよお姉ちゃん!恥ずかしいって…」

 

生徒会室のど真ん中で抱き合っているほどの度胸は私にはない。

 

 


 

 

 


「久しぶりね、ヒオリくん」

 

「ど、どうもです、会長」

 

「………満足した?」

 

「それはもうたっぷりと………あイタッ!」

 

「お姉ちゃん!!………バカ」

 

有言実行と言うか、たっぷり10分抱きつかれた私の顔は、まだ赤いままだった。運動部員らしい力強さで抱きつかれた私に逃げ道はなく、もうされるがままであった。

 

そんなお姉ちゃんは、部活が終わったことでイケメンモードからオタクモードに戻っていた。その証拠に眼鏡をしている。

 

「シスコンなのはヒオリくんの方だったのね、嘉織さん」

 

「ほっといてください」

 

「ヒオリくん、うちに入る気は……」

 

「無いです、お断りします」

 

「そんなに私が嫌い?」

 

「1番ではありません」

 

「じゃあ誰が好きなの?もしいるなら学校の一大ニュースになるけれど」

 

「新聞部のことは気にしてはいませんが、ボクが好きなのは嘉織だけです」

 

「あら、」

 

「ええ!」

 

「これはニュースになりますね、会長」


と、生徒会メンバーの三者三様の反応。

  

「お姉ちゃん、」

 

この人に、恥ずかしいとかそういった感情はないのか、常々私は思っている。


「って、言ってるけど、どうなの嘉織さんは?」

 

「私に恥ずかしい思いをさせるお姉ちゃんは嫌いです」

 

「えええ!!ご、ごめん嘉織、さっきのはつい、やっと会えて嬉しくて、」

 

「知らない!」

 

「うぅ、」

 

私の言葉が思ったより響いたのか、さっきとは打って変わってガックリうなだれてしまった。

 

「はあ、もう見せつけてくれるわね。嘉織さん、先帰っても大丈夫よ、その代わりにヒオリくんも連れて帰ってちょうだい」

 

「すみません、お姉ちゃんが。お姉ちゃん、帰るよ」

 

「う、うん」

 

「お先に失礼します」

 

「お疲れ様」

 

「「お疲れ様です」」

 


そういって生徒会室をあとにした。

 

「お姉ちゃん、先行っちゃうよ?」

 

「いいよ、嘉織はボクが嫌いなんだろう、」

 

「あ、」

 

結構根に持っているらしい。全く、こういうときに限って鈍感な姉だ。

 

私は今なおうなだれているお姉ちゃんの手をとった。

 

「嘉織?」

 

いきなりのことに不思議そうな顔をするお姉ちゃん。

 

「さっきのは嘘だよ。だってあそこで賛同したら恥ずかしいじゃん」

 

「!!」

 

「私も、その、まあ嫌いじゃないよ」

 

「本当か!」

 

「一回しか言わない!」

 

「嬉しいな、ボク」

 

「~~~~~!!!」

 

恥ずかしくなった私は先に行こうとしたが、進めなかった。あ、そっか


「離さないよ、帰るまで」

 

「…………やるんじゃなかった」

 

嬉しそうな姉の顔に若干イラつきながらも、手を繋いで帰る2人きりの時間を過ごせるのが、ちょっとだけ嬉しかった。 

   

 


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