第4章
「え??」
融はそう言って、心底驚いたような表情で、香月先輩を見た。
香月先輩が結婚するのが、そんなに意外なことだったのだろうか。
それにしても、さっきの融の発言は、一体何だったのだろう。
あの言葉にどんな意味が込められているのか、私には分からない。
でもきっと、香月先輩には分かるんだろうな。
そう思うと、何だか少し悔しかった。
どれだけ融のことが好きで、毎日一緒にいても、彼は、あの頃のことだけは一切語ろうとしない。
彼が、香月先輩と二人でアメリカへ留学に行った頃のこと。
私は、ちゃんと話したいのに。
柿本大翔とのことも、全部、全部。
――それって、誰のため?俺への遠慮とか?
ねえ、融。
もっと、ちゃんと話してよ。
ちゃんと、私に教えてよ。
どうして私たち、別れなきゃだめだったの?
私には、分からない。
融のことが、何にも。
言ってくれなきゃ、言葉にしてくれなきゃ、伝わらないのに。
それとも、融は私を――。
そう思ったとき、融が不意に口を開いた。
「なあ、ユズ。明日、暇やったりする?」
「え…うん。暇だけど」
「ほんなら、明日はちょっと出かけてきてくれへんかな」
「どうして?融、何か用事あるの?」
「そうそう。…せっかくやし、彩と出かけてこい。それでエエよな、彩も」
「え?うん、わたしは別に大丈夫。柚紀と出かけてみたいし」
「サンキュ。ほんなら、決まりな」
私が口を挟む間もなく、話はとんとんと進んでしまった。
融が私のほうを振り向き、エエよな、と訊いてきた。
私には断る理由も拒む理由もないので、素直に頷く。
そのうちに私が昔住んでいたアパートの前で、香月先輩は車を停めた。
私と融はすぐに車を降り、トランクから自分たちの荷物を出した。
それから香月先輩にお礼を言って、管理人の部屋を訪ねた。




