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第1章
三上さんが、もし、河野先輩と別れてしまったら。
私は、だめになってしまうかもしれない。
三上さんに、自分の想いを、ぶつけてしまうかもしれない。
そうすれば、きっと、今のこの関係は壊れてしまう。
もしかしたら私は、心のどこかでそれを怖れているのかもしれない。
今のこの関係を、絶対に、壊したくないと。
そう、強く願っているのかもしれない。
「なぁ、柚紀ちゃん」
「…はい」
「俺が、こんなこと話してる意味、ちゃんと分かってるか?」
「え…意味、ですか」
「そうや。何で俺は、柚紀ちゃんにこんな話してるんやと思う?」
「えっと、それは…。河野先輩のこと、私も知ってるから、とかですか」
「アホ。それやったら、彩に相談してるやろ」
「だったら、どうして」
「俺な、ずっと、柚紀ちゃんのこと好きやってん」
「…え?」
私は一瞬、耳を疑った。
そして思わず、立ち止まってしまう。
そんな私に向かって、三上さんは優しく微笑んだ。
それから、そっと、私のことを抱きしめた。
香水の匂いに混じって、ほんの少し、汗の匂いがした。
けれどそれは全然嫌な匂いじゃなくて。
そんな匂いに包まれながら、私は思った。
三上さんが好きだ、と。




