真相は……
お待たせしました。漸く更新です。では
「見ての通り、この部屋の窓は、このように開きます」
そう言って私は、窓を開ける為に、それに近付いて摘みを上げて開錠した。
「これが今回の事件の重要なポイントです」
ポイント?──と疑問符を浮かべる日奈菊警部補。「さて、先ずご主人の件ですが、先程のトリックでは密室を作るのは不可能です。ではどうやって行ったのか」
私は小春に向いて訊ねた。
「この家にドライアイスはあるかしら?」
「ええ、あるわ」
「じゃあ、それを小さく砕いて持ってきて。あとゴム手袋も」
「解った」
小春は頷くと、部屋を出て何処からかドライアイスとゴム手袋を調達して戻ってきた。
私は先ずゴム手袋を受け取り、手に填めると、小さく砕かれたドライアイスを窓枠にある鍵穴に落とした。
「犯人は外側から今の動作を行いました。これで、密室のトリックは完了。あとはドライアイスが溶けて勝手に施錠されるのを待つのみ」
黒羽は「……成程。見逃していたわ」と口にした。
「それで、彼が犯人だと言う物的証拠は?」
日奈菊警部補が秀次を差しながら訊ねた。
「そんな物、私は持って──」
そこまで言った所で、私は秀次が口にしていた事を思い出した。
「そう言えば秀次、どうして真理愛さんが殺された事を知ってたの?」
「それはお前が言ったからじゃん。殺されたって」
私は首を左右に振るった。
「私は殺されたなんて言ってないわ。亡くなった、となら口にしたけどね」
「…………!?」
秀次は焦って冷や汗を垂らす。
「貴方、ひょっとして」
「……ああ、そうだよ。お前の言う通り、この家の主人を殺したのは俺だ。そしてメイド……いや、真理愛姉さんも」
「姉を殺したのは口封じかしら?」
「ああ、そうさ。姉さん、俺が毒を盛った所見てたんだ。しかもそれを知らない振りして、あいつに毒入りコーヒー飲ませてた」
「…………!?」
初耳だ。
「それって共犯じゃない!」と日奈菊警部補。
「だけど……姉さん、俺に言ったんだ。自首しろって。俺、それがどうしても許せなくてよ。自分で飲ませといて何が自首だよ!?」
秀次は膝を着くと、涙を流した。
「聡美……」
「うん?」
「俺、死刑確定か?」
「警部補、どうでしょう?」
「大丈夫。殺人とその幇助の罪で裁かれる事になるけど、裁判次第では死刑にはならないわ」
警部補は行きましょうかと、秀次を連れていく。
「あ、そうだ。俺が戻ってくるまで、待っててくれないか?」
秀次は振り返って私を見るとそう言った。
「……嫌だ」
「えっ……?」
「刑事さん、そいつを早く連れてって」
「解ったわ」
警部補はそう答えると、暴れる秀次を押さえて連れ去った。
「聡美、あんな見送り方で良いの?」
小春が不思議そうな顔で訊ねた。
「良いのよ。殺人犯の彼女だ、なんてレッテル貼られたくないしね」
私はそう言って、部屋を後にした。




