推理ミス
「執事の鷹文さん、あなたです!」
その言葉にその場に居た人物が、全員驚いて鷹文の方を向いた。
「ちょっ、待って下さいよ!何で僕が!?」
「鷹文さん、あなたは榊原さんと交際していて、尚且つ彼女のお腹に被害者の子どもが居る事を知っていました。ご主人を殺害するに至って十分な動機ですよね」
「確かに、僕も最初、主人に殺意を抱いた。けど、殺害なんてしてない!それに、君もあの娘と一緒に聴いてたじゃないか!奥様にも殺害の動機があるって!」
鷹文はそう怒鳴って私を指差す。
「確かに、動機なら春子さんにもありますけど、この犯行は貴方にしか出来ないんです。先刻、小春さんから聴いたけど、貴方釣りをやってますよね。と言う事は、テグスを持っていても可笑しくない」
そう言って先程使ったテグスを取り出す黒羽。
「これは先程、シロが洗面所のゴミ箱で見付けてくれた物よ。これ、貴方のですよね。鷹文さん」
その言葉に彼は眉を顰める。
「じゃあ、真理愛さんを殺したのは?」
その問いに黒羽は、
「それも貴方。恐らく、貴方はキッチンでコーヒーに毒を仕込む所を彼女に目撃されてしまった。だから、貴方は彼女を口封じの為、絞殺した」
満面の笑みでそう答える。
鷹文は床に手を着いた。
「ちょっと待って」
私はそう言って席を立ち上がった。
同時に鍵がポトリと落ちる。
「え?」
黒羽が目を点にして鍵を見詰める。
「貴方の推理には穴があるわ」
「穴?」と私を見る黒羽。
私は徐に鍵を拾って答える。
「この鍵、ちゃんとポケットに入ってなかったわよね。何故か解る?」
解らない──と首を傾げる黒羽。
「座ってたからよ。その為、ズボンのポケットの口が締まり、鍵が入らなくなった。その状態でテグスを引っ張って結び目を解いたものだから、立った時に落ちたのよ」
それと──と私はテグスを取り出す。
「テグスなら真理愛さんの部屋のゴミ箱にも在ったわ。これは恐らく、真犯人が予め仕掛けておいた罠。家中を捜せば至る所に出て来ると思うわ」
「し、真犯人ですって!?」と驚く日奈菊警部補。
「そう、真犯人。そしてその人物は彼よ!」
私はそう言いながらビシッと格好良く秀次を指差した。
「ちょ、一寸待てよ聡美。俺は被害者とは面識が無いんだぜ?なのにどうして俺が殺さなきゃいけないんだよ?」
「それは、あんたが真理愛さんの実弟だから」
「え・・・っ?」
秀次の顔が強張る。
「この写真がそれを物語ってるわ」
そう言って私は真理愛の部屋で見付けた例の写真を取り出す。
「此処に写ってるの、あんたと真理愛さんよね」
「そ、そこに写ってるからって、俺がメイドさんの弟だとは限らんだろ?」
「確かにそうね。けど小春が言ってたわ。真理愛さんには生き別れになった弟が居るって」
私はそう言うと小春の方を向いた。
「小春、真理愛さんの弟の名前は?」
「えっと確か・・・秀次って名前だわ」
私は秀次に向き直る。
「ああ、そうだよ。俺とあの人は姉弟だ。だが、この家の主人は殺しちゃいない」
「否、殺したわ」
「証拠はあるのか?俺が殺したと言う物的な」
「それを出す前に、先に密室のトリックを明かそうかしら」
衝撃的展開。まさか彼が犯人だとは俺も思わなかったよ。(え?
てな訳で、次回は密室のトリックを暴きましょう。