写真の二人
真理愛の部屋に入ると、私は隅々を調べ始めた。
ベッド、箪笥、押し入れ等、妙な物は無い。
「ん?」
コ○ヨの勉強机の上にある写真立てが倒れているのに気付いた私はそれを取り上げた。それには真理愛と秀次の姿が写った写真が収まっていた。
後で秀次に訊くとしよう──そう思った私は写真立てから写真を抜き取ってポケットに仕舞った。
直後、小春が部屋に入ってきた。
「聡美、氷鉋さんの推理ショーが始まるから応接室に来てくれない?」
「え、もう解ったの?あの娘」
「うん」
「解った、行く。けどその前に一つ良いかな?」
「何?」
「真理愛さんって弟居た?」
その問いに小春は若干上を向いて答える。
「確か・・・生き別れになった弟が居るって聞いた事があるけど、それがどうかしたの?」
「否、何でも無い。それじゃあ行こう」
そう言って足を動かすと、側にあったゴミ箱に足を引っ掛けて倒した。
「何やってんのよ、聡美のドジッ娘」
私はしゃがんでゴミ箱を戻した。その時、中にテグスが入っている事に気付いた。
密室のトリックに使えるかも──そう思った私はそれを取り仕舞って立ち上がった。
「何、今の?」
「釣り糸。多分、密室を作る時に使われたんだと思う」
「へえ。まあ良いや。兎に角行こう」
私は「うん」と頷き、小春と共に応接室に向かった。
応接室に着くと、黒羽の推理ショーは既に始まっていた。
観客は執事の鷹文、警視庁捜査一課の日奈菊警部補、秀次、志狼の四人である。さて、実力の方、拝見させて貰うとしますか。
「これから、第一の事件の時の状況を再現したいと思います」
黒羽は徐にテグスを取り出した。
「警部補、被害者役をやって頂けますか?」
「何で私がやらなきゃいけないのよ?」
私はやれやれと言う表情で挙手した。
「クロ、日奈菊警部補はその役嫌いみたいだから私がやってあげるわ」
「じゃあお願いするわ」
そこに座って──と最初の被害者が座っていた席を指差す黒羽。
私は言われた通り、その席に座って次の指示を待つ。
「発見された時のポーズになって」
私は机に伏した。
「で、何すんの?」
「そのままじっとしてて」
「了解」
そう返事すると、黒羽が近付いて来て針を取り出し、テグスを穴に通し、私のズボンのポケットに刺す。そして、鍵を通し、片端を鍵に結び付け入り口まで伸ばし、外に出てドアを閉めて鍵を掛け、ドアと床に出来た隙間からテグスを引っ張って鍵を室内に入れ、ポケットまで運び、テグスを思いっ切り引っ張って結び目を解き回収した。
「シロ、開けて」
志狼が解錠してドアを開けた。同時に黒羽が入ってくる。
「犯人は恐らく、今の方法で密室を作りあげた」
「成る程。で、肝心の犯人は?」と日奈菊警部補。
黒羽は徐に、「犯人は・・・」と指を差した。それは──
いよいよ物語もクライマックス。黒羽は犯人を指を差した。果たして聡美は手柄を立てる事が出来るのか?