最初の殺人
えっと、読者の皆様には黙っていたのですが、天海 沙月さんのDetective catよりクロとシロを出す事が決定しました。この企画は既に天海さんにはお伝えして承諾して頂いております故、著作権については全く問題はありません。と言う訳で──
第一回、黒猫&聡美の殺人事件
始まります。
私の名は相楽 聡美。都内の有名進学校に通う普通の女子高生で・・・あったのだが、ひょんな事から有名人となってしまった。
それは、私が友人の誕生パーティに招待された時の事だ。
*
都内にある、皇居とも思える程大きなお屋敷。そこは、私の友人でもある、名門西園寺財閥社長の御曹子、西園寺 小春が暮らすご自宅である。
私は今日、彼女の誕生パーティに招待され、彼氏の桐山 秀次とそのお屋敷にお邪魔していた。
今居るのは、学校の体育館より広いパーティ会場。彼の有名な童話の主人公、灰かぶり姫が訪れた城の舞踏会会場よりも広いそこには、豪勢な料理が沢山用意されている。そしてそれを取り巻く様に、大勢の人々。その数、数千人。流石、財閥の令嬢だ。
「聡美ー!」
とそこに私の名を大声で呼びながらやって来る一人の少女。縦髪ウェーブで円らな瞳。白いドレスを着ているその娘が、西園寺 小春である。
「ハッピバースデイ小春」
私はそう言って小春を抱き締めた。
「苦しい」
「ああ、ごめん」
私は小春を締めていた腕を緩めた。
「聡美、今日は来てくれて有り難う。・・・あら、そっちの子は?」
小春が私の後ろに居た少年に気付きそう訊ねる。
「桐山 秀次よ。私のげぼっ、じゃなかった。彼氏よ」
「聡美、今言い掛けたよな?下僕って」
「むせただけよ」
私は秀次に向いてそう言った後、小春に「ねえ?」と顔を向けた。
頷いて下さい──そう念じながら。
すると、小春は私の表情から思いを読み取ったのか、三回ほど頷いてくれた。
「ほんとかよ・・・?それより、料理食べねえか?」
「全く、あんたは食いしん坊なんだから」
「あら、良いのよ?好きなだけ食べて」
「マジ?」
「その為の料理よ」
「じゃあお言葉に甘えて」
私はそう言うと、秀次と共に料理を食べに動いた。
「秀次、何処から食べる?」
「聡美さん、まぁさか全部平らげると仰るつもりじゃありませんよねぇ?」
秀次は少し嫌味な顔でそう言った。
「そのつもりよ。だって、小春が好きなだけ食べて良いって言ってたのよ?そう言う事だから、あんたも私を手伝いなさい」
私がそう答えると彼は「無理だ。お前の食欲には敵わない」と即答した。
私はその言葉にハハッと笑いながら食事に有り付く。うん、どれもこれも全部美味だ。
そして私は数分で食料を全部胃袋に収めた。辺りの者は全員、私の事を見て口をポカーンと開けている。
「聡美、ホントに食べたわね」と小春が言った。
「うん。どれもこれも皆、美味しかったよ」
私がそう言うと、小さな少女が声を掛けて来た。
「ちょっと」
振り返ると、ウェーブの掛かった長い黒髪の娘が私を見上げていた。
私はその少女に「何か?」と訊ねる。
少女は私にハスキーボイスで「料理」と呟いた。
「ああ、ごめん。全部食べちゃった」
「・・・・・・」
少女は無言を回答に、ショックで肩を竦める。
そこへ、少女と同じくらいの歳の男の子がやって来てた。
「僕のあげるから落ち込まないでよ、クロ」
男の子はそう言って料理が盛られた自分のお皿を少女に渡した。
「有り難う、シロ」
少女はそう言うと、小春に会釈して男の子と共に去って行った。
「誰?」
私は小春に訊ねた。すると小春はこう言う。
「聡美、知らないの?あの女の子は今、世間で話題噴騰中の名探偵よ。名を氷鉋 黒羽。通称、黒猫。新聞でも有名なんだから」
「へぇ。でも何でそんな人が?」
「私が呼んだのよ」
「なして?」
その問いに小春は懐から<西園寺 様>と書かれた封筒を取り出した。
「何それ?」
すると小春が私に耳を貸すように手招きするので、私は小春の口元に耳を近付けた。そして、驚く様な事を囁く。それは──
「脅迫状」
「え?」
「脅迫状よ、きょ・う・は・く・じょ・う。今日開いたパーティでね、私のパパを殺すって書かれてたの。しかも届いたのが4月1日だったから、信じなかったんだけど、そしたら次の日に電話が掛かって来たのよ。出たのはママなんだけど、相手はこう言ったわ。社長の命は貰った。今度の娘の誕生パーティの日に社長を殺す、って・・・。だから、あの娘に依頼したのよ。この手紙を送った人物を見付けて欲しいって」
「それ・・・本当なの?」
と、その時だった。
きゃあああああ!──と言う甲高い悲鳴が屋敷中に響いた。
「行ってみる?」
私は小春にそう訊ねた。
小春は小さく頷き、駆け出した。その後ろを、私が追う。
会場を飛び出し、左右に分かれた廊下を右に曲がってひたすら真っ直ぐ行き、突き当たりにある<応接室>と書かれた扉の前にやって来た。
中には腰を抜かして震えているメイド服の女性が一人居た。
「どうしたの?」
小春が訊ねると、メイドの女性は震える手で指を差した。
その先には、鼻の下に髭を生やした40代後半と思しき男が、ソファに座りながら机に伏して、口から血を吐いている姿が在った。
机の上には、倒れたコップに零れた黒い液体が確認出来る。恐らく、毒入りコーヒーか何かだろう。
私は伏している男に近付き、呼吸と脈拍を確認して首を振るった。左右に。
小春は言葉を失い、床に膝を着いた。そこへ、先程の少女、氷鉋 黒羽と男の子が現れる。
「何かあったんですか?」と氷鉋 黒羽。
私は氷鉋 黒羽に男が死んでいる事を話した。
氷鉋 黒羽は遺体を凝視すると言った。
「シロ、警察に電話。メイドさんと西園寺さん、それとお姉さんは部屋から出て」
お姉さん、と言うのは私の事らしい。
私は氷鉋 黒羽に睨みを利かせた。
この娘とは何か勝負しなくてはいけない気がする。
そう思った私は、もう一度遺体に触れ・・・ようとした。
「触らないで」
氷鉋 黒羽が私を睨み付けながら言った。
「下手に触ったら死亡推定時刻が崩れる恐れが・・・」
彼女がそこまで言った所で、私は遺体に触れ、腕時計を確認した。現在、午後8時半。
「およそ1時間って所ね。口からアーモンド臭がする。死因はKCNよ」
「KCN?青酸カリじゃ」
「KCNはシアン化カリウム、又は青酸カリの化学式よ。経口最低致死量は推定200mg。知らなかったのかしら、名探偵さん?」
言って私は不適に微笑んでみせた後、小春に近付いて言った。
「戻って皆のアリバイを聴くわ」
するとメイドが横から口を挟んできた。
「あの、旦那様は自殺じゃないかと思います」
「自殺?どうしてですか」
「実は、私が此処に来た時、ドアには鍵が掛かってたんです」
と言う事は密室。待てよ?でもそれじゃ、メイドさんはどうやって。
「あの、鍵はどうやって?」
「合い鍵です」
「成る程」
私はもう一度部屋に入り、隅々を調べた。
ドアの鍵には怪しいものは一つも無い。窓も、人が一人通れそうだが、しっかり鍵が掛かっている。他殺と仮定し、犯人は一体どうやって密室を作ったと言うのだろうか・・・。
天海さん、読んだ?劇中で聡美がクロに「知らなかった?」と発言したけど、天海さんはKCN知ってます・・・?
それはさておき、本題に入りますが、今回、この作品では、クロとシロのラブコメ率を上げたいと思います。また、ラブコメお約束の読者サービスもあります。
え、駄目!?否、あたしはやりますよ。例え天海さんが僕を嫌おうとも。ほなな〜
──ネタバレ──
初回は無いですよ?だって最初ですしね。次話辺りからって事で