3話 モンゴル
アルパカリレー第三走者 モンゴルです
前回に引き続き、一人称視点となります。
拙い文章ですが最後まで読んでいただけると幸いです。
帰り道。
僕は最寄り駅から15分の我が家へ向かって一人歩いていた。
4月とはいえ夜中の8時半ともなると少し肌寒い。
途中コンビニにでも寄ることも考えたがカラオケでの出費もありやめておくことにした。
「一曲しか歌ってないのに514円だもんなぁ…」
そんなどうでもいい独り言を呟きながら僕はカラオケでの出来事を思い出していた。
夕立と雪乃さんが生き生きとした表情で好きなアニメの曲を歌っていたこと。
有城さんが真っ赤な顔で必死に自分に向けられた疑いを晴らそうとしたこと。
・・・そして剛昌が冗談で女の子向けアニメの曲を歌って、もれなくドン引きされていたこと。
剛昌が瞳を潤ませて「お前は友達だよな?」って言いたげな顔でこちらを見てきたが、アイツがスベったことなど僕の知ったことではない(僕が無視したのは言うまでもない)。
でも、やっぱり一番印象に残っているのは…
「上手かったな、雪乃さんの歌…」
口を突いてでたのは紛れもない本心。
出来ることなら何度でも聴きたい。
素直にそう思っている自分がいる。
雪乃さんの歌っていた曲を鼻歌で歌いながら歩いていると、スマホの通知音が鳴った。
スマホの通話アプリをひらくと、
ブルーリバー剛昌:『今日は楽しかったな!! また行こうぜ!!』
そういえば、帰り際に剛昌の提案でID交換したのを忘れていた。グループまでたててるし。
というか剛昌のアカウントの名前酷いな。
お笑い芸人か、お前は。
とはいえ初めから既読無視するのも可哀想だったので
少しだけつきあってあげることにした。
修斗:『皆歌上手いんだね。驚いたよ』
ゆ~だち:『修斗に言われるとな~んか嫌味っぽい!腹立つ!』
えっ?
碧:『いくら自分の実力を自負してるからって、そういうのは良くないと思うよ? ダンゴムシくん』
うっ…
改めて自分の文面を見てみると、確かに上から目線だったかもしれない。あと僕はダンゴムシじゃない。
修斗:『いや、そういうつもりじゃなくて…ごめん…』
ゆきの:『修斗くん大丈夫だよ!二人共からかってるだけだから!(゜ロ゜;)』
雪乃さんは優しいなぁ。
ていうか、顔文字使う人なんだなぁ。
ブルーリバー剛昌:『でもホントに修斗歌上手いよな~!それこそ驚いたわ』
ゆ~だち:『ソレ!』
ゆきの:『(*^^)σ!』
碧:『まぁ確かにダンゴムシにしては上手かったわね…』
本当にからかっていただけのようで安心したが。
どうやら有城さんの中で俺はダンゴムシで確定らしい。もういいや、どうにでもなれ。
しかし僕は褒められる事に慣れてない。こんなに褒められたのは幼稚園のかけっこで一等賞をとった時以来だろうか…
僕は若干の照れ臭さを感じながらも素直に返信する。
修斗:『ありがとう』
碧:『あれ?謙遜しないの?やっぱりダンゴムシくんだね』
修斗:『なんで!?』
ゆ~だち:『まぁいーじゃん!上手かったのはホントだし!またみんなで行こーよ!』
ブルーリバー剛昌:『おう、また俺の美声を聞かせてやろう!』
ゆ~だち:『ごめん、やっぱり4人で行こうか。』
碧:『夕立、3人と【1匹】の間違いでしょう?』
またダンゴムシか…
おっと、気にしない気にしない。
ゆきの:『二人共、剛昌くんがかわいそうだよ?!Σ(゜ロ゜;)』
ブルーリバー剛昌:『雪乃さんは優しいな…ソウデスヨネ…具体的な名前は出てないけどハブられんのやっぱり俺ですよね…』
ゆきの:『す、すみません!! つい!』
ブルーリバー剛昌:『うん…ま、まぁいいよ。とにかく修斗もまた来るだろ?』
「ッ!!」
・・・・・・。
もう歌いたくない。ずっとそう思っていた。
当たり前だ。あんなことがあってトラウマを抱えない奴がいるなら僕は心底その人を尊敬する。
---でも。
半ばヤケになってたけど、歌っている時、たしかに僕は楽しかった。
それに、彼らと行くなら、悪くないかもしれない。また、雪乃さんの歌も聴けるのかな。
修斗:『うん、考えておくよ。』
さて、帰ったら人気のアニソンを調べてみようか。
いや、まずみんなが今日歌ってた曲を調b…
ブルーリバー剛昌:『あ、そうだ!忘れてた
!!今日学校で言ってたマンガ明日持ってくからな!楽しみにしとけよ!』
だから、いらないって!!!!
そう返信した後、ふと画面の上を見る。
[21:02]
身体が冷えきっていたことを思い出し、僕はかけあしで家へ帰った。
ということでやっと家に着いた修斗くんです。チャット部分読みづらかったらごめんなさい。