1話 蒼
5人によるリレー小説です。
話がどんなことになろうと暖かく見守ってください。
「リア充ってなんだ?」
また言われた。高校も中学時代と変わらないか…
がっくりとうなだれる修斗に剛昌は更に話しかける。
「なぁなぁそれより今期のアニメさ〜…」
そんな声を聞きながら修斗は目を閉じ、今までの成り行きを思い返した…
日比谷修斗は中学時代、周りにオタクしかいなかった。修斗自身は「彼女作ってあんなことやこんなこと…」と日々思っているのだが、周りから聞こえてくる話は「あのアニメだったら誰推し?」とか、「まじであいつは壊れ。ナーフ早く来て欲しいよなー!」とか、意味不明なものばかり。
祖父から聞いた「昔はオタクがあまり認められていないこともあってのぉ…学校では浮いた存在だったこともあったなぁ…」という話は嘘としか思えない。
それでも頑なにゲーム、アニメなどを避け続けた中学の卒業式、友達はいなかった。
そんな修斗の口癖は
「高校に入ったらリア充になってやる!」だった。
高校の入学式当日、完全に困惑していた。
同じクラスに中学が同じ奴がいるものの、当然のようにゲームやアニメの話をしている。それだけなら良かった。クラスの大半が理解出来ない話を仲良さげにしているのだ。
「嘘だろ…おい…」
なんて独り言も、話し声に掻き消される。
「席に付けー」
と言って担任の先生らしき人が入ってくる。
「これからこのクラスを担当する吉川章人だ1年間よろしくな~」
吉川先生か、人の良さそうな先生だな…
「ちなみにガンタムが大好きだ!いくらでも語れるがどうする?」
ガハハ!と大きく口を開けて笑った。
「センセー!好きなキャラは誰ですか!」
スポーツ刈りで体格のいい、最前列の生徒からの質問に
「おお!もちろんアムロ・レインだ!」
「最悪だ…」
修斗は誰にも聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
頭が痛くなった。
後ろからは「楽しそうな先生だね!」と女子の話し声が聞こえてくる。
「どうして僕はこう、運が悪いんだ…」
と頭を抱えながら自らの不運を嘆いた。
「よぉ!頭抱え込んで大丈夫か?頭痛いのか?」
と話しかけてくる声。
「いや、大丈夫です…」
と呟きながら見上げた視線の先には、先ほど質問したスポーツ刈りがいた。
「ちっ…」
面倒そうなやつに絡まれた、と小さく舌打ちする。
「俺は青島剛昌!よろしくな!」
やけにテンションが高い。
すこし圧倒されながらも
「…なぁ、リア充って知ってるか?」
「…は?リア充ってなんだ?」
回想終了。
それでも剛昌は楽しそうに話している。
「俺の名前の由来はな!ある漫画家の名前からきていてなぁ、そうだ!よかったら今度貸そうか?明日漫画持ってきてやるよ!」
いらない。漫画など読んだこともない。
「いや、いいよ。僕は漫画より小説の方が好きなんだ」
申し訳なさそうに断る。
「そんなこと言わないで読んでみようぜぇ〜?なぁ〜?」
なおもしつこく絡んでくる。流石にウザい。
「だから、僕はいいって…」
「あれ、剛昌友達出来たの!?」
剛昌と同じくらいにテンションが高い声が僕の声を遮る。
「おい夕立!邪魔するなよ!」
いや、邪魔というよりかは助かった。
「夕立さん?ありがとう、助かったよ」
微笑みながら後ろを向き、ギョッとする
「ギャル!?」
…声に出てしまった。
金髪に縦ロール、ピアスを開けている。自分の中のギャルのイメージそのものだった。
「初対面で失礼な人ね!全く!」
怒った様子で夕立は頬を膨らませる。
改めてよく見ると、意外に可愛い。
「まぁまぁ、怒るなよ夕立」
「うっさいね剛昌!関係ないでしょ!」
と仲裁に入ってくれた剛昌と夕立が言い争いを始めた。
話の内容を聞くに、どうやら同じ中学校卒業らしい。
終わりそうにない言い争いを黙って聞いていると、後ろから
「仲いい2人ね、ダンゴムシくんもそう思うでしょう?ダンゴムシくん?聞いてる?」
肩を叩かれた僕は驚いて振り返る。
「ダンゴムシ?僕の事ですか?」
「そうよ、先生の話の時に頭を抱えて丸まってたから、ダンゴムシ。お似合いでしょう?」
似合ってない。というか酷い女だな。
「あっ!碧!」
いつの間にか口喧嘩をやめた夕立が目の前の女子に話しかけている。
「ごめんね、修斗くん。自己紹介がまだだったね、私は笹夕立、で、こっちは有城碧さん!」
「よろしく、夕立、有城さん」
「それにしてもダンゴムシ、あなたかっこいいわね」
…え?言葉の意味を理解出来なかった。
かっこいいだって?そんな…でも確かにかっこいいと言ったぞ…
そういえば有城さんをよく見ると、黒髪でロングヘアー。スラッとしていて、モデル体型と言うのだろうか。
夕立よりも身長が20cmは高い。僕とあまり身長差はない。
というか、これかリア充の始まりというやつか!?
「もしかして、有城さんは」
僕に一目惚れした?と調子のいいことを聞こうとした。だが、有城さんの言葉が僕の声を遮った
「声が。」
「…へ?」
唖然とした。
「まぁ、声優の村中くんには敵わないけれど。」
「有城さん村中好きなのか!人気あるよなぁ〜!」
今まで見ているだけだった剛昌が急に大声を上げる。
なんなんだよ…もういい、どーにでもなれ。と心の中で呟き「すまない、今日はもう帰るよ」
鞄を持ち、後ろを向くと肩を掴まれた。
「待てよ!カラオケ、行こうぜ?4人で」
とても断れない雰囲気。
僕の笑顔は盛大に引きつっていただろう。