何しに来たんだこの人と彼は思った
「……いよう」
そういう声はルーイック・トゥータだった。
いや、そういうべきではないのかもしれないが。
「俺も武装解除してるからな。キャラづくりをする必要がなくなった」
「……」
瞬きを一回する。
これで通じるかわからないが、ルーイック・トゥータならあるいは。
魔法使いである前に作家であるこの男ならあるいは。
「了解、か」
……本当に通じるとは。
事実は小説より奇なりだった。
「るー……レーバイエ、御影大怪我じゃん?」
「俺も頭痛がひどいんだよ。ハーブティーもらいに来たんだ」
「むー……、仕方ないじゃん」
ぽんっとカップとティーポットを作り出し、お茶を入れるカルルットさん。
「武装解除の意味あんのか。それ……」
「この程度武装のうちに入らないじゃん?」
心底不思議そうなカルルットさん。
格差社会極まれりである。
「……あー」
ルーイック、あるいはレーバイエさんは困ったように呻いた。
まあ、世の中なんて困る事ばっかだ。気持ちはわかる。
現に御影も今困っている。
何しに来たんだこの人?
「話しづれえ……。『俺』とか何年ぶりだよ……」
「戻せばいいじゃん?」
「負けたみたいでいやなんだよ」
……何と戦ってるんだこの人は。
「……トゥールリアとデフォルの間で協定が結ばれた。詳しい内容は省くが俺はおそらくあと何十年か著述魔術師をやることになる」
こんな風に話すのはもう何十年もないかもしれない。
寂しそうににレーバイエさんは言う。
「トゥールリアに戻れば俺はルーイックだ。最悪ルーイックのまま死ぬ。だからその前に聞いておきたかった」
なにと戦っているのだと問われれば――世界とだよ。
そういってレーバイエさんは苦笑した。苦笑するしかないのだろう。だって――世界だ。
それがどれだけ強大か、どこにでもいるモブは知っているのだ、
「――お前、なんで生きてる?」
「いや、結構半死半生じゃん? 浅手が多いとはいえ傷だらけじゃん?」
「――か」
痛い。
痛い。
しかし、話す。
話さなければいけない。
「――体が」
血の味がする。
命の味がする。
死の味がする。
それでも。
話さなければ。
「――生きようとしていた」
たったそれだけの真実を。




